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144ー懐いた

 今、俺を待っていたと言ったじゃないか。


「だって私と会わないと、ラウも寂しいだろう!?」


 はいはい、それで良いよ。相変わらず、素直じゃない魔王だ。

 今精霊女王と大切な話をしていたんだけど。思い切りその場の空気をぶった切ってくれた。

 今更なんだけど、どうして魔王がこれほど俺に懐いて……いや、魔王と仲良くなったのかを話そう。

 初めて魔王のところに転移したのは0歳の時だ。あれ以来、魔王のところへ転移すると何故か必ず魔王の顔面に着地した。

 そして俺はいつも、魔王の頭にガシッと抱きついている。行く度にだよ。

 すぐそばに側近のアースランがいるのに、何故か魔王の顔面に着地するんだ。ミミは知らん顔をして飛んでいるけど。


「あばばば!」

「ぶぶッ!」

「ラウ! またあなたですか!」

「らうみぃ! でんじゃーみゃ!」


 あ、ごめんね。おっと、しまった。ブルブルッと俺は震えた。転移するとどうしても出ちゃうんだ。


「ラウ、また温かいぞ」

「魔王様! お漏らしですよ!」

「な、な、なんだとぉーッ!」


 いつもこんな感じだった。魔王とアースランが慌てているのを、お漏らしした当の本人の俺は面白がって見ていた。


「ラウ、今度からオムツを持ってきなさい」


 なんて側近のアースランに言われたことだってあった。

 そりゃ、魔王だって呆れる。何回目かの時に言われたんだ。


「ラウ、来るのは良い。勝手にすれば良い。だがどうしてお前は、いつもいつも私の顔面にしがみ付くんだ?」

「あばー」


 な、それだよな。わざとじゃないんだ。魔王に会わなきゃって思って転移すると、いつもこうなるんだ。て、普通に俺はそう言った……いや、あの頃は俺の思考を読んでもらっていたんだ。


「私に会わなきゃと思うのか?」

「あぶぶ」


 おう、当然だ。会いたくて危険を冒して来ているのだから。


「あ、会いたいのか?」

「魔王様、ラウは人です。それにまだ赤ちゃんでしょう? 魔素の濃い魔国に来るには、大変な危険が伴うのでしょう」


 魔王の側近アースランが解説してくれた。その通りなんだ。だからシールドをマスターするために、練習したんだぞ。


「そ、そ、そんなになのか?」

「あぶう」

「みみが、しぇんしぇいみゃ。おしえたみゃ」


 まだミミがフォローしてくれているけど、ほんの少ししか居られない。


「ああ、それはだから私がシールドを張ってやっているだろう?」

「あう」


 ありがとう、それは助かっているよ。と、俺はヒョイと片手を上げた。

 それでも小一時間が限度だ。そんな危険を冒してでも会いに来なきゃと思ったんだ。と、俺が心の中で思った。


「ラ、ラ、ラウッ!」


 いきなり魔王にガシッと抱きしめられた。俺のフワモチの赤ちゃんボディーをガシッとだ。それは苦しいぞ。


「あばばば」

「魔王様、ラウが苦しがっていますよ」

「あ、ああ。すまない」


 力を緩めてくれたけど、俺は魔王の腕の中だ。しっかりと抱っこされている。


「ラウ、お前は可愛いなッ! いつでも来ると良いぞ! いや、待っていると言っているんじゃないからな!」


 この頃から魔王はツンデレさんだった。最初は、なんて威厳のある雰囲気をもった人なんだと思った。さすが魔王様だぜ。なんて感心したものだ。そんな気持ちを返してくれと言いたい。


「ラウは可愛いな! わざわざ危険を冒してまで私に会いに来てくれるのだなッ!」


 なんて、次に行った時に言い出した。あれ、ちょっと勘違いしている部分もあるのだけど、まあいいか。なんて思っていた。

 だって俺は魔王にお願いがあったのだから。


「なに? 私に頼みか?」

「あぶ」


 将来、デオレグーノ神王国が何をしてきたとしても、人の国に侵攻するのは止めて欲しいんだ。


「ああ、あのウザイ国ですか」


 アースランが『ウザイ』と言った。もしかして、もうちょっかいを出していたりするのか?


「ラウ、あの国と我が国の鉱脈が繋がっているのは知っていますか? いえ、赤ちゃんなのですから知らないでしょう」


 おう、知らないな。全く知らない。


「ちょっと眼を離すとこっち側の鉱脈にまで手を出そうとしてくるのですよ。まあ山脈に阻まれますし魔素が濃いので、結局何もできずに帰って行くのですけどね。何を考えているのか、そんなことを懲りずに何度もしてくるのです」


 そうなのか、あの国に鉱脈があるのは前の時に知っていたけど。


「ラウ、なんですって? 前の時とは何です?」

「あば」


 あ、いけね。アースランも俺の思考を読めるんだった。えっと、言ってもいいかな? と、ミミを見る。

 俺の肩に止まっているミミが、ホケーッとした顔をしている。これは全く聞いてなかったな。


「あぶ」

「みゃ? みみみゃ?」

「あば」


 だからさ、魔王に話しても良いか?


「みゃ? しらないみゃ」

「ぶぶぶ」


 なんだよ、なんにも考えてないな。


「まおうとひと()とは、せってん(接点)がないから、いいんじゃないみゃ?」

「あぶ?」


 そうか? なら、まあいいか。秘密だよといいながら、俺はこの生が2回目だと打ち明けたんだ。やり直しているのだと。俺の最後の時のことも話した。


「ラウ! な、な、なんて酷いことをぉ!」

「それは……悔しかったでしょうに」


 魔王とアースランが、良い感じに受け取ってくれた。


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― 新着の感想 ―
やはり諸悪の根源であるジョブそのものをなくすのが手っ取り早い
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