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142/217

142ークリスマスSS それは違う

まだラウが0歳の頃のお話です。ラウにクリスマスの事を聞いて張り切って準備している魔王とアースランのお話です。

今日はこのSSのみの投稿になります。

本編には全く関係ありません。

「アースラン、違うそっちじゃない!」

「魔王様、これで良いじゃないですか」

「駄目だ駄目だ! 歪んでいるぞ! ラウが来るまでにちゃんと飾り付けしないと!」

「歪んでませんよ。歪んでいるのは魔王様の根性です」

「何か言ったか?」

「いいえ、何も……」


 何が「何も……」だ。しっかり聞こえているぞ。こいつは時々毒を吐く。いつもは頼りになる側近なのに。

 今日はラウがやって来る。しかもクリスマスというイベントらしい。

 キラキラピカピカした物で飾って、チキンを焼いてケーキを食べるのだと。良い子には、サンタクロースなる者がプレゼントをくれる日らしい。

 人族は私達魔族の理解できないことをする。これもその一つだ。

 とにかく、折角特別な日にラウが来るのだ。驚かせてやらないと。


「魔王様、ケーキが出来上がったそうですよ」

「おお、そうかッ! 苺のケーキか?」

「この国に苺なんてありません」

「そんな事は分かっている! だから他国から購入すれば良いではないか」

「はいはい、それには時間が足りませんね。しかも果物ですから傷みます」

「そうか?」

「はい、そうですね」

「そうか、なら仕方ない」


 て、ならどんなケーキができたのだ? ちょっと不安になってきた。

 ラウにクリスマスのことを聞いてからというもの、毎日城の中を掃除して磨き上げ、飾り付けもしてきた。まず、必要なのがクリスマスツリーだという。

 なんだそれは!? 聞いたこともないぞ。ツリーというのだから木だろうと予測をし、魔国に生えている適当な木を持ってこいと言った。そう言ったさ。言ったけどだ。

 

「アースラン、どうしてこの木を選んだ?」

「え? 木と言えばこれでしょう?」

「いやいや、これは違うだろう? ラウは人なのだぞ。しかも超可愛い赤ちゃんだ」

「はいはい」


 いや、だから聞けよ。これはない。クリスマスツリーを知らない私でも分かる。

 なにしろ、ウネウネ動く。何がって、木の枝が。いや、木自体がウネウネと動き回る。

 根っこをウネウネ動かしながら、幹もクネクネ動かして動き回るのだ。なんなら枝を、ピューッと伸ばしたりもする。だって木の魔物なのだから。

 唯一良いところといえば、枝に果物をぶら下げているところか。そこに苺があれば良いのに。


「あー! もう動かないでくださいよ! 飾り付けられないじゃないですか!」


 ほら、ほ~らみろ。どうしてわざわざ木の魔物なんて選んだんだ。しかも枝の動きが、なんとも言い難いくらいに気持ち悪い。

 木なのだろう? 動かない木の方が圧倒的に多いだろう。それが普通だろう。普通の木を持ってこようよ。

 魔国といえども、動く木の方が珍しい。なのに、どこから持ってきたのか知らないが、これを選ぶとは。誰だ、持ってきた奴は。


「魔王様、そっち持ってください!」

「いや、アースラン。その木は駄目だ」

「ええー! せっかく捕まえてきたのに、どうしてですか!?」


 どうして? どうしてと聞くか? どうしても何も、気持ち悪いじゃないか。おまけになんだ、それは?


「アースラン、その手に持っているのは何だ?」

「何って魔王様、飾り付けるのでしょう? その飾りですよ」


 こいつのセンスを疑うぞ。確かに俺は、飾り付けろと言った。言ったが、だからといって動く花を持ってくる事はないじゃないか。

 不気味にニターと笑っているような顔のある花。葉っぱと茎がクネクネ動いている。だって花の魔物なのだから。

 何か? 動くシリーズで統一でもしようとしているのか?


「アースラン、それはない」

「え? 何言ってるんですか? 魔王様も手伝ってくださいよ」

「いや、だからその木も飾りも違うぞ」

「どこが違うのですか? 完璧じゃないですか」

「ええー……」

「魔国といえばこれでしょう」


 魔国に拘るんじゃない。ラウが喜ぶようにと、拘ってくれよ。

 しかもアースランの手から逃れた動く花が、フロアを走り回っているじゃないか。どうするんだ?


「あー! もう! どこに行くんですか!?」


 ほらみろ。動くシリーズなんかで揃えるからだ。

 普通でいいんだ、普通で。いや、違うな。可愛くだ。キラキラピカピカとしていて、しかもあの可愛いラウに似合うように可愛くだ!


「魔王様! 何一人でブツブツ言ってるんですか! 手伝ってください!」

「アースラン、それらは却下だ」

「ええー! どうしてですか!?」


 どうしてだと? どうしてと聞くその思考が、どうしてだと聞きたい。


「アースラン、魔国に拘るんじゃない。ラウは人なのだ」

「何を分かり切ったことを言ってるんですか」


 その分かり切ったことを、本当に理解していないのはお前だ。

 とにかくその動きを止めろ。魔王の私が見ても悍ましい。石化でもさせるか?


「魔王様、何しようとしているんですか?」

「いや、動きを止めようとだな。石化でもさせれば良いかと」

「何馬鹿なことを言ってるんですか! そんなことをする暇があるなら手伝ってください!」


 難易度を上げているのはお前だぞ。私は木と言った。動く木を持って来いなんて、一言も言っていないのだから。しかも動く花まで持ってきやがった。

 ああ、もうラウが来てしまう。


「あぶぶぶー!」

「ぶへッ!」


 ラウだ。どうしてラウはいつも私の顔面に転移して来るんだ? ほんのり温かいお股が顔面に当たるじゃないか。

 私は顔面に張り付いているラウを、ベリッと剥がす。


「あぶぶ」

「ラウ、来たか」

「あば! ちゃ!」

「なんみゃ! きもちわるいみゃ!」

「ミミ、お前は煩いぞ」

「らってこれはなんみゃ!? うごいてるみゃ!」


 ミミも気持ち悪いと思うだろう? 私もそう思う。だけど、アースランがそれが良いと言うのだ。


「きゃっきゃ!」

「お? ラウ、面白いのか?」

「あい!」


 おっと、意外にもラウは喜んでいる。小さくてプクプクとした手をパチパチと叩いて、笑っている。


「ほら、魔王様。ラウも喜んでいるでしょう?」

「ああ、意外だ。想定外だ」

「何言ってるんですか。ラウ、ケーキも用意しているのですよ」

「あばー!」


 両手を挙げて喜んでいる。だけどな、ラウ。そのケーキを確認していないのだ。どんなものが出てくるのか、私は不安しかない。

 アースランが張り切って持ってきた、クリスマスケーキ……いや、だから……そんな気はしていた。だって木や花の魔物をチョイスしたアースランだから。


「みゃみゃみゃ! なんみゃ!」

「あばばばー!」


 ほら、いくらなんでもこれはラウでも引くぞ。

 だってアースランが目をキラキラさせながら自信満々に持ってきたケーキ。生クリームでデコレーションしているのは、よくやったと褒めてやろう。だが、それは何だ?


「魔国には苺がないのです。ですから苺の代わりですね」


 ふふん、と胸を張っていたりする。どこが苺の代わりなんだ。天と地の差があるじゃないか。

 白い生クリームの上に、どす黒い赤色の眼がいくつも並べてある。ああ、私でも引くぞ。


「ぴゃー! きゃっきゃ!」

「え……」

「ほら、ラウも喜んでますよ」


 お、おう。確かに、良い笑顔で喜んでいる。ラウ、お前のセンスは大丈夫なのか? そのまま大きくなって大丈夫か?


「あーしゅ、あーと!」

「はい、どういたしまして」

「な、な、なにぃッ!? 今ラウはアースランと言ったか!?」

「はい、先日から呼んでくれるようになったのですよ。おや、魔王様はまだですか?」


 くっそぅ、何を自慢しているんだ。


「ラウ、魔王だ」

「まー」

「そうだ、魔王だ」

「まー」

「プクク」

「アースラン、笑うでない」

「だって、魔王様。『ま』だけですよ」

「それでもラウは『魔王』と言っているつもりなのだ」

「ちゃ! あーと!」


 よしよし、まあ何にしろラウが喜んでくれたのならそれで良い。

 

「きもちわるいみゃ、しんじられないみゃ。みみはむりみゃ」

「ミミ、煩い」


 私だって気持ち悪いと思うさ。来年はちゃんと普通にするからな。とにかく、ラウ。メリークリスマスだ。


お読みいただき有難うございます!

ちょっとふざけてますが、如何でしたでしょう?

アースランをというご意見を頂いたので、しっかりめに登場させました。

ラウって、0歳の方が書き易かったような気がします(-。-;

はっちゃけ加減が、良いと思うのです。

いつも感想を有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


リリのクリスマスて、どんなの書いたかなぁ?と、思い出せないのですが^^;

リリは沢山番外編を書いてますからね〜

皆様も良いクリスマスを!

では今日は私が一番好きなリリの書影を!

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
またまたリクエストにお応えいただきありがとうございます‼︎ 今回はいつもはポンコツ魔王様が一番の常識人でしたね〜 一番のはっちゃけは意外にもアースラン(一見クールな補佐はこれが素?)と それを喜ぶラウ…
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