139ー副団長
母のその言葉を聞いて、前の時でも俺は守られていたんだと改めて思った。
それまで俺が自由にアコレーシアに会いに行ったりできたのも、影で両親が守ってくれていたんだと。
前の時でもきっとサイラス辺りが、こっそり付いて来ていたのだろう。
前の時に俺は、母の言葉で決心したんだ。さっさと戦を終わらせて無事に帰ってこようと。
今度は俺が両親やアコレーシアを守る番だと、そう思って召集に応じた。
結果は最悪だった。俺が剣で刺された後、どうなったのか知らない。
精霊女王なら知っているだろうけど……なんとなく、聞いてはいけない気がして、未だに聞けていない。
いや、違う。聞くのが怖いんだ。俺がいなくなった後、両親やアコレーシア達がどうなったのか知るのが怖かったんだ。
だけどしらないままだと、前に進めない。そんな気がした。
その日、また例の会議室に俺たちは集まった。俺は強制的におフクに連れて行かれた。ま、いつものことだけど。
「さて、全員集まったか」
いつもの如く、父の心に響くようなバリトンボイスで始まる。
父のような声を前世では、イケボと言われるだろう。女性ならグッと心を鷲掴みにされるような良い声だ。
「ふぁ~」
でも俺は息子だし、ちびっ子だからそんなの関係ない。夕食も食べたし眠くなって欠伸が出てしまう。
「ラウ、眠いか?」
「あい、らいじょぶれしゅ」
「あなた、ですから何度も言ってますけどもう少し早い時間にする方が良いですわ」
「そうなのだが、今日は昼間の件だ」
昼間の件とは、俺の後をつけていた奴がいたことだ。
あのあと、サイラスが尋問したのだろう。その報告かな?
「アンジー」
「はい、報告します」
と、いつものようにアンジーさんが報告を始めた。それによると、あの俺達をつけていた者は近所に邸宅を持つ貴族の使用人だった。
お前はすばしっこいからと、侍従に頼まれたらしい。特別手当を貰えたから、喜んで引き受けたのだそうだ。
その貴族の名前を、サイラスが聞き出した。
侍従に口止めされていたらしく最初は躊躇していたらしいが、ただの使用人がサイラスに敵うわけがない。アッサリと全部白状したらしい。
「フロア伯爵家の次男でゲルハルト・フロア、騎士団副団長の家でした」
え? 騎士団と言えば、俺が0歳の時に攫われて助け出してくれたのが騎士団長。その副団長なのか。
同じ騎士団でも、騎士団長はそんなことをする人には見えなかった。正義感が強くて、曲がったことが嫌いな印象を受けた。真っ先に俺を抱き上げてくれて、部下達にも手際よく指示していた。
「副団長か……」
「そうなんスよ」
「なるほどだわ」
父とアンジーさんと母の反応だ。これって、どういうことかな? あ~あ……て感じに思えるのだけど。
「かあしゃま?」
「ラウは知らないわね。会ったことはなかったかしら?」
「いえ、坊ちゃんが0歳の時に騎士団長に助け出されたでしょう。あの時に副団長も一緒でした」
「でも、覚えてないわよね」
「おぼえてないれしゅ」
「副団長はあれぐらいでないと、務まらないのだろう」
「殿下、そうッスか?」
「ああ、団長がまっすぐな人だからな」
「あー、なるほど」
え? 俺は全然意味が分からないぞ。参加させているのだから、俺にも分かるように話して欲しいな。
「あんじーしゃん」
「はいッス。説明しましょう」
アンジーさんが言うには、騎士団長は俺が受けた印象の通り正義感が強いまっすぐな人らしい。それ故に、大臣達を上手くあしらったりできない時もあるのだそうだ。
その騎士団長を支えている副団長。頭がキレる人らしい。それに出世欲も強い。剣の腕も立つけど、口も立つ。言葉が少ない騎士団長と、弁の立つ副団長で上手く回っているのだそうだ。
なら、それで良いじゃないかと思うのだけど。問題は副団長の強い出世欲だ。
騎士団なのに、出世したい。今は副団長なのだから、いつかは団長にということか?
騎士団の団長なら爵位を持たない者は、騎士爵といって一代限りの爵位を与えられる。そして功績を積むことで爵位が上がっていくらしい。
因みに今の騎士団長は侯爵位を継承している。元々侯爵位を持った家系だった。所謂、武官家系というやつだ。
「じゃあ、だんちょうしゃんに、なりたいの?」
「違うんッスよ。副団長は大臣に名を連ねたいらしいんです。次男なんで、自分の爵位が欲しいんですね」
「それが無ければな、騎士団長と良いコンビなのだが」
「ッスね」
アンジーさん、言葉を略し過ぎだ。
騎士団って体育会系だよな? だって剣で身を立てているのだから。と、思ったのだけど、そうじゃない者も多いそうだ。
騎士団は貴族の次男、三男が多い。騎士団の中でも、役職に就いている家の子息は別だ。実際に騎士団長の長男は騎士団に入団している。
だが普通の貴族の長男は、当然家を継いで領地を引き継ぐ。じゃあ、次男三男はどうするのか?
余裕のある家や、領地が広い家だと次男も長男をサポートする意味で分家され任されることもある。だが、全部の貴族がそうではない。貧乏な家だってあるし領地を持たない貴族だっているんだ。
貴族の子息だといっても、次男三男は厳しい世界なのだ。実際にアンジーさんも三男だ。家を出て父に仕えてくれている。
お読みいただき有難うございます!
投稿直前に読み返していたら、同じ文章が繰り返されている事に気付き、びっくりどっきりで焦って修正しました( ̄O ̄;)
執筆アプリを使っているのですが、どうしてだか1300文字程同じ文章だったのです。
コピぺの時に誤ってそうなっちゃったのか?分かりませんが、なんとかなりました。
貴族の爵位とかってややこしくて、何度も調べたりしてます。
ところで、来週はクリスマスです!
クリスマスSSとかどう思われますか?読んで頂けるのかなぁ?と^^;
読みたいよ~!と、思って下さる方にお願いです!アイデアをください!
お題があれば書きます!
宜しくお願いします!
またこれから、お知らせが続きそうな感じなのですが、Xのアカウントをお持ちの方は是非そちらをチェックして頂けると最速で確実です。
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懐かしい3歳のリリを。