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137ーしゅき、らいしゅき

 その後、すぐに王が動いた。王都中にお触れを出したんだ。

 最近突然挙動不審になったり、様子がおかしい者がいたら城に連れて来るようにと。

 呪いを掛けられている可能性があるからだ。呪いとは公表できないが、最近そういう症状の者が発見されたということにしたらしい。

 その解呪は、あの老師が指揮を取った。

 

「こんなふざけたことをされて、黙っておれるかッ! ゆっくりスイートポテトも食えんだろうが!!」


 と怒り心頭だったらしい。呪いの解呪ができる魔術師は限られている。しかも、呪いの程度にもよるらしい。どっちにしろ、老師の出番が多くなりそうだ。

 あれ? そういえばバットはどうしていたのかな? きっとどこかにいたと思うのだけど。


『もちろん、いたのれす!』


 あ、バットだ。どうして城では何も言ってこなかったんだ?


『だって、バットの出番はなかったのれす』


 え? そう? いやいや、バットが探してくれたら助かったよ?


『必要なかったのれす。ラウができたのれす』


 そうだね、でも見守ってくれていたのだろう?


『勿論なのれす! バットは魔王様にそう言付かっているのれす』


 頼りになる護衛が増えたみたいだ。だけど魔王って、そんなに俺が心配なのか?


『そりゃそうなのれす。赤ちゃんなのに、魔王城に転移してきたラウれす。そりゃ、心配なのれす』


 あー、はいはい。それは無謀に思えるだろうな。でも、ちゃんと練習して大丈夫だと思ったから転移して行ったんだ。だからそう無謀でもないんだよ。


『そんな問題ではないのれす』


 そう? それは申し訳ないね。

 俺は自分の家に戻ってお昼を食べて、少しお昼寝した。そして、トコトコと歩いている。どこへ行くかって? そりゃ、アコレーシアのところに決まっているじゃないか。

 今日は朝から登城していたから、いつもより遅くなってしまった。待っていてくれたりするのかな?

 昨日と同じように、邸の裏口から出ておフクとサイラスと一緒に歩く。手にはフリージアの花を一輪持って。


「坊ちゃま、疲れていませんか?」

「ふく、らいじょうぶらよ」

「お城でひと騒動あったと聞いてます」

「うん、ちょっとね」


 偶々、おフクが付いて来ていなくて良かった。というか、途中で放り出してしまったのだけど。

 おフクは、王子と王女が一緒だったところまでは一緒にいた。だが途中で俺は、父に抱っこされて連れて行かれた。おフクを置いてけぼりにしちゃって。


「フクはどうなるのかと、ドキドキしましたよ」

「ふふふ、らいじょぶらよ。とうしゃまが、いっしょらったもの」

「はい、そうですね」


 その父と一緒に転移したりしていたのだけど。父の飛び蹴りなんて初めて見たよ。しかも俺を抱っこしたままだぞ。びっくりしたもの。

 その父と母はまだ城にいる。父は呪い騒ぎの後始末だ。母はずっと王妃と一緒だけど、帰ってきたら疲れているだろうな。


「ねえ、ふく。かあしゃまは、らいじょぶかな?」

「はい、奥様なら大丈夫ですよ」

「けろ、ちゅかれるよね」

「ふふふ、そうですね。王妃様のお相手ですから」


 母が帰ってきたら、労わってあげよう。


「ラウ坊ちゃん、今日の騒ぎで王都に騎士団が多く出ています」

「さいらす、そうなの?」

「はい、ですから逆に安全ですよ」

「しょれはよかった」


 俺の家からアコレーシアの家まで、3歳児の俺の足で15分程度かな。大人の足なら10分かからないだろう。ご近所様なんだ。だけど、俺の家の事情で今まで交流はなかった。

 母同士は仲が良いらしいから、手紙のやり取りはしていたそうだけど。

 その家に急に俺が毎日通っているとなると、余計な勘繰りをする家も出てくるかも知れない。俺がアコレーシアに会うために通っているのは事実なのだけど。

 できるだけ早く、婚約まで持ち込みたい。両親もそう言ってくれていたし。でも婚約できたからと言って、急に行かなくはならないよ。だって、会いたいもの。

 前の時に初めて会ったのは、7歳だった。今の3歳のアコレーシアも可愛い。とっても可愛い。

 それに想像以上にしっかりしている。ちゃんと受け答えができるし、筋道立てて話せる。

 これって3歳児にしてはとってもお利口だと思う。普通の3歳児がどんな感じなのかは知らないけど。


「ふふふ」

「まあ、ラウ坊ちゃまなんです?」

「らって、ふく。あこちゃん、かわいいれしょう?」

「ラウ坊ちゃまは、本当にお好きなんですね」

「うん、しゅき。らいしゅき」

「おやおや、ふふふ」


 ちびっ子だから堂々と言える。これが17歳とかになると、なかなか言えなくなるんだ。いや、7歳の時でも照れ臭くて言えなかった。

 そうして昨日と同じようにアコレーシアにお花を渡して、少し一緒にご本を読んだ。

 今日は行くのが遅くなっちゃったから。少ししかいられなかったな。なんてことを考えながらの帰り道だ。


「坊ちゃん、そのままこちらを見ないで歩いてください」

「え、さいらす?」


 あと少しで家だというところで、サイラスがそう言った。

 俺は言われた通り、何も反応せず家に向かって歩く。ほんの少しずつ早足になりながら。


「危険では、ないようですね」

「ふく、しょうなの?」

「はい。殺意は感じられませんから」


 え、おフクってそれも分かるのか? 俺は全然分からないぞ。なんなら何も気付かなかったぞ。


お読みいただき有難うございます!

投稿が遅くなってしまいました、すみません。

ラウが素直です。めっちゃ素直にはっきりと『しゅき、らいしゅき』と言ってます。

みんなちびっ子の頃は平気で言ってませんでしたか?て、あんまり覚えてないですけど^^;

成長するにつれ、恥ずかしくなったり、嫌われたらどうしようと思ったり、色んな事を考えて言えなくなりますよね。

ラウも今のうちに、沢山言っておきましょう。しゅき、らいしゅき♡

いつも感想を有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


リリには好きな子を出してあげられませんでした。書籍の書き下ろしにでも書いてみようかな?読みたいですか?リリの恋バナ♡

フォルセ以外の兄は、それぞれ婚姻する時のお話を書いてます。だから、リリもあってもいいかな?でも、ディアはアースなんですよね〜

挿絵(By みてみん)

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