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132/216

132ーだから早く

「精霊界って本当にあるのですか?」

「ありますぞ。誰も行ったことはありませんけどな」


 ふふふ、それがあるのだよ。母と、俺もちょくちょく行っている。とっても綺麗な世界だぞ。そうだ、今度老師も連れて行きたいな。


「眼に見えることだけが真実ではないのですぞ。それを忘れてはいけません」

「はい、老師」


 とても真面なことを言っているが、お口の周りにスイートポテトの欠片が付いている。

 こんな食べ方をするのだから、そりゃお髭には沢山付いただろう。大人なのに、食べるのが下手なのが原因だ。


「スイートポテトは美味いじゃろう? これを一口食べようとしたところで呼ばれたのじゃ」


 なるほど、だから一片を刺したフォークを持っていたのか。それって普通は置いてこないか? しかも食べていたよな?

 騎士団も捜索をしているから、呪いの方は大丈夫だろう。だけど、こうしてちびっ子だけで城の中をうろつくのは危険かも知れない。

 ああ、だから老師は一緒に来てくれたのかな?


「ワシの貴重なおやつタイムを邪魔しよって」


 どうやら違うらしい。ゆっくりスイートポテトを食べたかったみたいだ。

 この老師、魔術師団で一番古参だというだけではなかった。若い頃は魔術師団師団長も拝命していたらしい。

 白魔術師は攻撃魔法は最低限しか使えない。回復魔法に特化している。

 それでも師団長だった。師団長に選ばれるのは、攻撃力を重視しがちなのにだ。優秀なのだと、それだけで充分に分かる。

 その老師が早くも二個目のスイートポテトに手をつけた時だ。


「老師!」


 父とアンジーさんが、走ってやって来た。

 きっとあれだ。また呪いの解呪だ。だって多分、解呪できる人が少ないのじゃないかな?


「なんじゃもう、折角ワシがスイートポテトを味わっておるのに」

「老師、解呪をお願いします」


 ほら、思った通りだ。と、いうことは呪いに掛かっている人が見つかったのだな。


「とうしゃま、たくしゃんいましたか?」

「ああ、何十人も見つかった」

「え……」


 それってヤバくないか? ここはこの国の中枢、城だぞ。そこにいる人達の何十人にも呪いを掛けるなんて。犯人は複数いるのだろうか?


「なんじゃそれは!? 呪いを掛けた奴は捕まえたのか?」

「いえ、まだ騎士団が捜索しています」

「ほうほう、騎士団には分からないのではないかのぅ」


 そう言いながらも口にスイートポテトを運んでいる。ほら、呼ばれているよ。


「ろうし、いかないのれしゅか?」

「ん? ワシは今スイートポテトを食べとるんじゃよ」

「老師、ですから解呪をしていただかないと」

「聞いとらんかったのか? ワシは今スイートポテトを食べとるんじゃ」


 スイートポテトは逃げないよ。早く行く方が良いと俺は思うけど。

 そういえば、リンリンやフェンは解呪できなかったっけ? 確か前の呪い騒ぎの時にリンリンやミミも解呪できると言っていなかったか?


「ぴよ」


 ほら、まただ。少し時間が空くと、すぐに忘れる。だから念話だろう?


『みゃみゃ! わしゅれてないみゃ! みみが、わしゅれるわけないみゃ!』


 はいはい。て、ミミも解呪できるんだろう?


『とうじぇんみゃ。けろ、ありしあしゃまが、ひみちゅらっていってたみゃ』


 そうだっけ? どっちにしろ、ミミの存在は秘密だからな。


『しょうみゃ。みみは、ひみちゅへいきみゃ』


 兵器なのか。ほ~う。


『なんみゃ? らうみぃ、かんじわるいみゃ』


 そうかよ、悪かったね。

 なんなら俺が行こうか? 解呪できるかどうか分からないけど。ちょっと見てみたいし、挑戦してみたい。


「とうしゃま」

「駄目だ」


 まだ何も言ってないのに、駄目だと言われちゃった。


「ラウ坊、もしかして解呪できるのか?」

「しらないれしゅ。やったこともないれしゅ」

「なんじゃ、そうなのか。ワシが教えてやろうかのぉ~」

「あい!」

「老師、余計なことはしなくて良いですよ」

「余計なことじゃないぞ。覚えておいて損はないだろうに」

「ラウはまだ3歳なのですよ」

「おう、そうじゃった。わすれとったわい」


 ふぉッふぉッふぉッと、また笑っている。口の横にスイートポテトの欠片がついてるぞ。


「ワシは歯がのぉ」

「は?」

「そうじゃ、もう年だから歯が抜けて無くなっているところがあるんじゃ。そこからポロッと出てしまうんじゃな」

「へえ~」


 そうか? そういう問題なのだろうか? それより早く行く方が良いよ。そろそろ父とアンジーさんが焦れている。


「老師」

「老師、早く頼むッス」


 ほら、イライラし出したぞ。呑気にスイートポテトを食べている場合じゃない。それなのに、老師は悠長にズズズーッとお茶を飲んでいる。


「仕方ないのぉ。行くか。よっこいせ」


 やっと腰をあげた老師。アンジーさんが手を出した。


「足元大丈夫ですか? 俺が担ぐッスか?」

「アンジー、何を言っとる! ワシを年寄り扱いするでない!」


 もう年だからとか言っていたのに、今度は年寄り扱いするなと言う。どっちなんだよ。やっぱり面白い。


「ろうし、またあしょぼうね」

「ラウ坊、そうだな。今度はゆっくり遊ぼうな」


 と老師が言い終わるかどうかのところで、アンジーさんが焦れてヒョイと抱き上げた。所謂、お姫様抱っこだ。


お読みいただき有難うございます!

老師の名前を覚えておられますか?

ウォード・クロウリーといいます。お名前を考えるのは超苦手で、覚えられません。ですが全く名前が出てこなくて、老師で通ってしまってます^^;

この老師が活躍する日もあると信じて!

いつも感想を有難うございます!頑張らないとと思います。

励みになっております。有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


来年リリ⑥が発売予定です。このままラストまで!

あのラストを書きたかった作品なので。

初書籍化作品です。私のちびっ子の原点です。そう思うと感慨深いです。

リリ⑤発売中です。宜しくお願いします!

挿絵(By みてみん)

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