130ー一緒に遊ぼう
「とりしゃんが、またないたわ!」
ほら、王女がロックオンしているぞ。面倒だから止めてくれよ。
王子と王女がいなければ、ミミのことを言っても良かったんだけどな。と思って父を見ると頷いていた。
「とうしゃま、ももじゅーしゅれしゅ」
「ああ、ミミか」
「あい」
父が桃ジュースを貰ってくれて、ミミはピヨピヨ鳴きながらそれを飲んでいた。
「かわいいわね!」
「ほうほう、よく擬態したものじゃのぅ」
「老師、それ以上は」
「そうか? そうなのか? 仕方ないのぉ。ワシはめっちゃ興味があるんじゃが。スイートポテトは食うか?」
「いえ、鳥ですから」
「そうか? そうかのぅ」
スイートポテトがそんなに食べたかったのか。好物だと言ってたもんな。可愛らしい爺さんだ。
解呪している時は眼光鋭く、他の何も寄せ付けないような雰囲気だったのに。
普段は好々爺といった感じだ。それに、何より面白そうだ。
「ろうし、いっしょにあしょぼう?」
「おう! ラウ坊、一緒に遊ぼうな」
「これ、ラウ」
「らって、とうしゃま」
「ラウ坊ちゃん、やめとく方がいいッスよ」
「え、ろうして?」
「だって老師ッスから」
「アンジー、それじゃあ意味が分からんじゃろ。お前はまだそんなことを言っとるのか? もっと筋道立てて喋らんといかんな」
そしてまた、ズズズーとお茶を飲む。きっと一筋縄ではいかない人なのだろう。
でも俺はとっても気になるぞ。面白そうな雰囲気がビシバシするじゃないか。
「ラウ、老師はお忙しいんだ」
「とうしゃま、けろいまいいって」
「ワシは忙しくないぞ。皆でスイートポテトを食おうな」
「あい」
「アハハハ、老師って本当に甘いものが好きですね」
「殿下、甘いものはワシのエネルギー源なのじゃ」
お髭がカピカピになるくらい食べていたのだもの、そりゃ大好きなのだろう。
「とうしゃま、いいれしゅか?」
「ああ、仕方ないな」
その時父が俺の耳元でこっそり囁いた。
「殿下方には内緒だぞ」
「みみのこと?」
「そうだ」
「あい」
うん、それは分かっている。老師だけなら話しても良いんだけどね。だって面白そうだから。
「何をコソコソを言っとるんだ?」
「なんでもないですよ。では、老師。お願いします」
「よしッ! 殿下方もラウ坊も、一緒に遊ぶぞ!」
何故か張り切っている。もうお年なのに。
その老師と一緒に、城の中庭にある四阿に移動した。その間老師は、抱っこしたいんじゃけどのぉ〜と、俺と王女を交互に見ていた。
「おにいちゃま、りーぬをだっこちても、いいのよ」
「アハハハ、抱っこかぁ。それは素敵だけど、リーヌは自分で歩こうね。手を繋ごうか」
「あい! おててちゅなぐのよ」
「じゃあ、ラウ坊。ワシが抱っこしてやろう」
期待に満ちた顔をして、俺に両手を出している。
「ぼく、あるく」
「えぇー! ラウ坊、それはつれないぞぉ!」
ちびっ子相手に何を言ってるんだ。老師は見たところ、シニアと呼ばれる世代じゃないかな? そんな爺さんが俺を抱っこして腰は平気か? そう筋肉があるようにも見えないし。不安じゃないか。
「仕方ないのぉ」
お髭があった頃の癖なのか? 手を顎の下に持っていき、掴もうとしてスカッと空振りしている。
この爺さん、絶対に面白いぞ。
「ねえ、ろうし」
「なんじゃ? やっぱ抱っこするか? ん?」
いや、違うから。そんなに抱っこしたいのかよ。
「ちがうの。ろうしは、じゅっとまじゅちゅし?」
「ん? ずっと魔術師かと聞いたかの?」
「しょう」
「そうじゃな、ワシはジョブを鑑定してもらってから、ずっと白魔術師じゃ」
「しろまじゅちゅしって、みんなかいじゅれきるの?」
「そうじゃなぁ。解呪するものにもよるなぁ。呪いの種類にもよるんじゃ。ワシは何でも解呪できるぞ」
「しゅごいんらね!」
「ふぉッふぉッふぉッ! そうじゃな! だからこんな老体でも働かされとる」
そんな話をしながら付いてきた侍女達に、四阿にスイートポテトを持って来てくれと、しっかり希望を言っている。
「ラウ坊、聞きたい事があるから抱っこしよう」
意味が分からない。そんなに抱っこしたいのか? 本当に大丈夫なんだろうな?
俺を抱っこしたまま、倒れたりしないだろうな。
「平気じゃ! ほれ!」
よっこいしょ、と不安な掛け声をかけながら俺を抱き上げた。意外にも、その手は力強くて軽々と抱き上げられた。
「ふぉーッ! 良いのー、良いのぉー! ちびっ子のこのふんわりとした、柔らかな感触じゃぁ! まだ甘い匂いがするのぉ!」
俺のほっぺにスリスリしながら、ご満悦だ。頼むから前を見て歩いて欲しい。
「老師、大丈夫ですか? ご無理されたら……」
「殿下、何を仰る! ラウ坊くらい軽いもんじゃ!」
そしてまた、ふぉッふぉッふぉッと笑っている。こんな人がいたのに、何故前の時は知り合わなかったのだろう?
いや、待てよ。老師は今でも70歳過ぎだろう? 俺が戦に駆り出された時はきっと80歳を過ぎていただろう。それは無理だな、うん。お元気だったなら良いけど。
「で、ラウ坊」
抱っこしている俺にだけ聞こえるような声で、老師が聞いてきた。
「それはアリシア様のジョブに、関係するのかの?」
それとは、もちろんミミのことだ。俺の肩に止まっているミミを、横目で見ている。
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爺ちゃん、要チェックです。(-。-;
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