表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

127/216

127ー何の?

「ラウ、どうした?」

「えっちょぉ、ぼくのとうしゃまは、ろこにいましゅか?」

「ラウのお父上かな? きっと父上と話されているのだと思うよ」

「おうじれんか、とうしゃまのところに、いきたいれしゅ」

「ラウ……もしかして、大切なことなのか?」

「あい」

「よし、行こう」


 王子と一緒に陛下の執務室へと向かおうとしたら、お付きの人が焦って止めた。俺の父と話しているからと。


「その叔父上に急用だ。僕が責任を取る」


 え、そんなに大変なことなのか?

 騒ぎというほどではないのだけど、周りの大人達が皆止めるんだ。

 約束がないからとか、父と会っているからとか。親子が会うのに約束が必要なのかよ。なんて不自由なんだ。

 それでも王子は強行した。俺とリーヌは後を付いて行く。


「おにいちゃま、こっちにきたら、めッ! なのよ」

「リーヌ、大丈夫だ。僕と一緒だから」

「れも、またおかあしゃまがおこるわ」

「怒られないよ。僕がそう話すから」


 やはりリーヌは王妃を怖がっている。怒られることに過敏になっている。まだ体罰をされたりしているのか?

 それともこっちに行っては駄目だとキツク言われているのかな? まだ2歳なんだぞ。両親の愛情が必要な歳だ。不憫に思えてくるよ。

 俺は両親の愛情を、しっかりたっぷりと注いでもらっている。それって、幸せなことなんだ。

 きっとこの二人はそうではないのだろう。王は忙しい。その上王妃があれだ。いかんよ、いかん。

 しかし、王子は6歳でこの判断力と行動力だ。これも英雄のジョブが関係しているのかな?

 大人達が止めるのを、王子は物ともせず俺達は王の執務室へとやって来た。部屋のドアをノックし、王子が声を掛ける。


「父上、申し訳ありません。緊急にお知らせしたいことがあります」

「入りなさい」


 部屋の内側から、穏やかな王の声がした。そして中に入ると、俺の父も一緒だった。アンジーさんも控えている。


「ラウが叔父上に、話があるそうなのです」

「ラウ、どうした?」

「とうしゃま、きになることがありましゅ」

「ラウがおかしいと言い出したのです。それですぐに報告する方が良いと判断しました」

「ぼくがおねがいしたのれしゅ。おうじれんかは、わるくありましぇん」


 王子が叱られないようにと、気を付けていたんだ。そしたら王が優しい眼をして言った。


「ラウ、大丈夫だ。大事なことなのだろう? そんなことで叱ったりはしないよ」

「あい」


 俺はどう話せば良いのかと探りながら父と王に話した。バットの存在を知られないように。ただ、俺が気付いたということで。


「それは……どういうことだ?」

「ラウ、思っていることをいいなさい」

「えっちょぉ、とうしゃま。あの……」


 どうしよう? なんて言えば良いんだ。あの生気のない人達、呪いだとバットが言った人達。


「ふらふら~として、ボーッとして……あるいているひとがいました」

「それが普通じゃないのだな?」

「あい、しょうれしゅ」

「何人もいたのか?」

「えっちょぉ、ときろきれしゅ」

「よし、ラウ。父様と一緒に見てみよう」

「あい」


 父は判断が早い。俺がどう話して良いのか、分からなくなっているのが伝わったのだろう。何より俺を信じてくれている。ただ事ではないから、突然やって来たのだと察してくれているんだ。

 実際に父に見てもらった方が早い。王子と王女を部屋に残して、父に抱っこされて部屋の外に出る。

 そう都合よく、呪いに掛かっている人が歩いている訳でもない。暫く城の中を父に抱っこされて歩き回った。

 王族が生活しているような奥の方ではなく、城で働いている人達がいるような外側に出て来た時だ。


「あ、とうしゃま。あしょこのひと」

「どれだ?」


 あそこだと、俺は手で示す。その方向に、いかにもな人が歩いていた。俯き加減でヨタヨタと歩いている。例えるなら背中に闇を背負っていそうな、暗い雰囲気だ。実際、俺には黒いものが見えるのだけど。


「ラウ、原因が分かっているのか?」

「えっちょぉ……」

「構わないから言ってみなさい」

「あい。のろいれしゅ」

「なんだと……!?」

「殿下、俺が連れて行きます」


 と、アンジーさんが動いた。アンジーさんに声を掛けられると、その人は上の空といった表情でぼんやりとして立っている。

 アンジーさんは、それからすぐにその人物を確保した。そのまま引き摺るように城の中を抜け、父は俺が行ったことのない部屋へと入って行った。


「師団長はいるか!?」

「何事です!? これは王弟殿下! どうされました!?」

「師団長に見てもらいたい者がいるんだ。至急だ!」

「は、はい! お待ちください!」


 師団長? て、何の師団長だ? と、俺はキョトンとしながら父に抱っこされていた。

 その部屋の奥から出て来たのは、いかにも魔術師ですといった格好の人だった。壮年の男性で手には魔法杖を持っている。


「王弟殿下、どうされました!?」

「師団長、この者を見てくれ」

「この者がどうしました?」

「普通じゃないんだ。もしやまた呪いでもと思い連れてきた」

「なんですと!?」


 父が呪いと口に出した途端に、師団長と呼ばれた人の顔色が変わった。

 この国の魔術師団師団長、シモン・エイレオス。40過ぎくらいの年齢だろうか。真っ黒でストレートの長い髪を後ろで結んでいて、アンバー色の鋭い瞳のおじさんだ。


お読みいただき有難うございます!

またまたデオレグーノ神王国の登場です。

リーヌとリーネとリーゼが、こんがらがってしまって時々間違えているかも知れません。申し訳ないです。

王女はリーヌです。

いつも感想を有難うございます!

少しバタバタしていてお返事できていませんが、毎日楽しみに読ませて頂いてます。

有難うございます!

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


リリって一番大人でお利口さんですよね。リュカの村の章を読み返していて思いました。

やっぱ皇子だから?

リリの⑥も楽しみにして頂けると嬉しいでっす!

⑤好評発売中!!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
流石父様、仕事が早い❣️ ラウ君の言いたい事素早く理解して対応する何て〜(^O^☆♪ それだけラウくんの事を信頼と愛しているのね。 ✳︎間違えるのは、仕方ないですよ。私も時々確認します。それで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ