124ー蟲?
「まだ何人も間者が入り込んでいるらしいです」
「確実なことは分からないのか?」
「はい、間者同士も知らないそうです」
「そうか、とにかく陛下に報告だ」
ふぅ、俺は関係ないね。なんて顔をしていると父に言われた。
「明日朝から登城する。ラウも一緒に行くんだぞ」
「え、ぼくもれしゅか?」
「ああ、王子殿下が待っておられるらしい」
「えー」
王子殿下って俺より年上じゃん。3歳児と一緒にいたって、面白くもなんともないと思うんだけど。
「ラウ、王子殿下だけじゃなく王女殿下もお待ちだそうよ」
「ええー」
余計に面倒だ。だけど、あの王女は放ってはおけない。あのままだと、将来歪んでしまうのが目に見えている。王妃の王女に対する態度だ。あれは躾けなんかじゃない。
「コニスが残してきた蟲からの情報だ」
「王女殿下がお可哀そうですわね」
前回登城した時に、母が王妃と話していた。その時にコニスが蟲を残してきていた。コニスのジョブは蟲使いだ。
どんな蟲を使うのか、俺は知らないのだけど。とにかくその蟲が、王妃の様子を教えてくれるらしい。
「やはり王女殿下への体罰はあるのだな?」
「ええ、度々ありましたわ。それに何より、ラウに負けるなと」
「ラウにか?」
「ええ、どんなジョブを授かるのかまだ分からないというのにですわ。どんなジョブを授かっても、王女殿下の方が王族で偉いのだと、言い聞かせておられましたわ」
王族は偉いのだと、そんな意識を植え付けているのか? でも王女は前に会った時に、仲良くしていたぞ。
「王子殿下がとてもしっかりなさっていたわね。それも、あの王妃殿下だとそうなってしまうのでしょうけど。まだ6歳だというのに……それを考えると不憫に思ってしまいますわね」
確かに俺が会った時も、王子は6歳とは思えないくらいしっかりしていた。あの様子だと、王妃に対してもそうなのだろう。
王子が3歳の時にも一度会っている。その時とは全然違っていた。あの時はまだ母親に甘えたいという気持ちもあったのだろう。だが6歳になった王子から、それは感じられなかった。
まだ子供なのに……色々我慢して、自分なりに考えたのだろう。辛い思いだってしたのだろう。でないとたった6歳で、あんなに割り切れる訳がない。
「ですが、王子殿下はまだ陛下が付いておられるから良いのですわ」
「陛下がか?」
「ええ。次代の王ですもの。陛下が随分と気に掛けておられましたわ。それで王子殿下も相談されているようですわよ」
相談、色々あるのだろうね。うん、俺はこの両親で良かったよ。
「だからラウ」
「え? あい」
俺か? ここで俺なのか?
「ラウとお話しがしたいそうなのよ」
「ぼくれしゅか? ぼくまら3しゃいれしゅ」
「ふふふ、そうなのだけどね。王子殿下はラウとお話ししたいそうよ。仲良くなりたいって仰っておられたわ」
「え……ぼくあこちゃんと……」
「あらあら、ふふふ」
俺だってアコレーシアに、お花を持って会いに行くって何よりも大事なご用事があるのだ。毎日行きたい。できるだけ早く婚約まで持っていきたいし。
「ラウ、そのアコちゃんだが」
「あい」
「まだ3歳だから早すぎるとは思うのだが……」
「あら、あなた。良いご令嬢は早くに約束をしておかないと、誰かに横槍を入れられたらどうするんです?」
「まあ、話だけでも持っていくか」
「ええ、こちらはそういうつもりだと意思表示をしておきませんと。うちは複雑な家ですし」
「ラウ、そういうことだ」
いやいや、何がそういうことだだよ。全然分からない。もっとちゃんと説明して欲しい。
キュトンとして固まってしまったじゃないか。
「しょろしょろ、ももじゅーしゅみゃ?」
「ミミ、それはまだよ」
この空気でよく、桃ジュースと言ったものだ。その性格が俺は凄いと思うぞ。
「らうみぃ、なんみゃ?」
「ももじゅーしゅは、まららって」
「なんれみゃ?」
「おはなしちゅうらからね」
「みみはかんけいないみゃ」
「もうしゅこし、まってね」
「しかたないみゃ。ありしあしゃまは、こわいからみゃ」
コラ、それははっきりと言ってはいけない。
「ミミ、今何て言ったかしら?」
ほら、母が怖いお顔になってしまったじゃないか。ミミはこういうところが抜けている。天然とでも言うのか。
「みゃみゃみゃ! なんれもないみゃ! まってるみゃ!」
「そうね、おとなしく待ってなさい」
「みゃ!」
ピシッと敬礼でもしそうなくらいのミミだ。
それよりも、さっきの話だ。アコレーシアが何だって?
「婚約のお話を持っていこうと思うのよ」
「えッ!?」
ま、ま、マジか!? もうなのか!? だってまだ3歳だぞ!?
「お話だけね。こっちはそう考えていますよってね。お返事は急がないけど、考えて下さいねってことなのよ」
「あ、あい」
「ラウ、良いのか?」
「とうしゃま、ぼくはあこちゃんが、しゅきれしゅ」
「そうか」
「まいにちおはなを、もっていきましゅ」
「あら、それは毎日なのね?」
「あい、かあしゃま」
だって会いたいじゃないか。とっても可愛いのだぞ。それに俺を好きになってもらいたい。まだ恋愛感情は無理だろうけど、好意は持ってもらいたいんだ。
お読みいただき有難うございます!
ラウくん、押しまくりです!アコちゃんが大好きなのですね。ぶっちゃけ、ちょっと重いタイプかもです^^;
母の侍女コニスが蟲を使います。自由に使えてその場の情報を持って帰ってきます。映像が見られるのも良いかなと考えてます。で、肝心のその蟲です。まさかキッチンに出るGを思い浮かべてはいけませんよ!
小さな小さな蜘蛛を想定しています。
これも良いよ〜て、蟲があればご意見ください。^^;
いつも感想を有難うございます!
励みにラウも頑張って書いてます。
宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
一昨年の今頃は、書籍化なんて夢にも思わず、ストレス発散で投稿していました。その運命が変わったのが2022年12月19日に届いた運営様からのメールでした。懐かしいなぁ。
最初は新手の詐欺か!?なんて思ったものです。^^;
その初書籍化作品『ボクは光の国の転生皇子さま!』が5巻まで発売中です。そろそろ6巻の初稿に取り掛かります。まさかこんなに続くとは思わず。
これも皆様のおかげです。有難うございます!
こんな後書きまで、皆様読んで下さっているみたいで^^;
有難うございます!
いつも感想を有難うございます!