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123ー転移は秘密

「らうはまほうが、ちゅかえるの?」

「えっちょぉ……」


 これは話しても良いのかな? と、思っておフクを見る。すると、おフクは小さく首を縦に振った。良いのか? マジか。


「しゅこしらけ、ちゅかえるよ」

「まあ、しゅごいわね」


 パッチリとしたアコレーシアの眼が、興味深そうにキラキラしている。


「しょう?」

「ええ、あたちはまらちゅかえないわ」

「まら、ちいしゃいから」

「らうだって、ちいしゃいわ」

「ふふふ、しょうらった」

「まあ、うふふ」


 その日もそんな可愛い平和な時間を過ごした。

 その日の帰り道だ。今日魔法の話が出た時に俺は思いついたんだ。

 俺の半歩前を歩くサイラスと、手を繋いで歩いているおフクに聞いてみた。


「ねえ、おフク。ぼくがてんいして、いったらいいとおもわない? いっしゅんらよ」

「ラウ坊ちゃま、それは駄目です」

「しょうなの? やっぱないしょなの?」

「はい、転移は秘密ですよ」

「あれは滅多なことで、外で使っては駄目です」

「さいらす、しょうなの?」

「はい、3歳で転移を使える者なんていません。いえ、3歳どころか大人でもいません」

「え……」

「坊ちゃま、そうなんですよ」

「しらなかったよ」

「ふふふ、そうですね」

「ですから、緊急の時だけです」

「わかったよ、さいらす」


 そうなのか、知らなかった。前の時はどうだったかなぁ? 俺って前の時は中距離だけど、転移できたぞ。それももしかして、特殊だったのか?

 そんなことを考えながら、トコトコと歩く。何しろ3歳児の歩みだ。とっても遅いのだけど、二人は合わせてくれている。


「ねえ、さいらす。みじかいきょりれも、てんいれきるひとは、いないの?」

「転移は特別なんです。賢者のジョブを持つ陛下でさえ、転移となると短距離ではないかと言われています。特殊なので、皆大っぴらにはしていませんね」

「しょうなんら」


 なるほどね、なら俺なんて化け物じみているじゃないか。

 今はまだ長距離はできないけど、この調子だと大人になるまでに相当の距離ができるようになるかも知れないぞ。


「らうみぃは、とくべつなのみゃ」

「みみ、らからしゃべったら、らめらよ」

「みゃ? だれもいないみゃ」

「しょうらけろね」


 それ以上言って欲しくないしさ。


「みゃみゃみゃ? しょうなのみゃ?」

「うん、しょうらよ」


 だから、黙っていて欲しいんだ。


「わかったみゃ」

「ミミちゃん、もう少しの辛抱ですよ」

「みゃ」


 だから『みゃ』じゃなくて『ぴよ』だろう?


「ぴよ」


 ふふふ、なんだか可愛くなってきた。


『らうみぃはとくべつなのみゃ』


 今度は念話で話しかけてきた。余程、言いたかったのだろう。何が特別なのか、知らないけど。


『らって、しぇいれいじょうおうの、いとしごみゃ』


 え、それってそんなに特別なのか?


『とくべつみゃ。ほかにはいないみゃ』


 今のこの世界には、いないってことだよな?


『ちがうみゃ、もうなんひゃくねんもいないみゃ』


 え、マジかよ。精霊女王、何してんだよ。そんなに希少なの俺で良いのか? マジでさ。


『らから、らうみぃは、しぇいれいじょうおうの、おきにいりみゃ』


 おう、お気に入りどころか『愛し子』だってよ。そんなの聞いたことがないぞ。ああ、だからか。何百年もいなかったから、聞かないんだ。

 その日、家に戻るとやっぱり父と母が裏口のところで待っていた。心配かけているんだ。

 二人でソワソワしながら、俺が歩いてくるだろう方向を見ている。やけに綺麗な父と母が、邸の裏口なんかにいるからとっても目立っている。

 そして俺達を見つけると、父はシュンッと飛んできた。


「ラウ! 何もなかったかッ!?」

「あい、とうしゃま」


 そのまま抱っこされてしまう。そしてほっぺをスリスリ擦り付けてくる。いや、グイグイと言った方が合っている。


「とうしゃま、なかにはいりましょう」

「おう、そうだな!」


 父に抱っこされて母の元まで行くと、母が俺の手をとった。そっと俺の存在を確認するかのように。

 母は父みたいに大袈裟にはしない。感情を抑えてくれている。でもその心配そうな、ホッとしたような瞳を見ると、心配を掛けているのだと俺の小さな胸が痛む。


「ラウ、楽しかったかしら?」

「あい、とっても」

「そう、良かったわ」

「あこちゃん、かわいいれしゅ」

「ふふふ、そうなのね」


 とにかく中に入ろう。目立ってしまう。

 父に抱っこされて邸の中に入り、俺はそのまま例の会議室へ。


「皆揃っているな」


 相変わらず心を鷲掴みにされるような、バリトンボイスで父が言った。

 え? このまま会議に雪崩れ込みなのか? 俺と一緒に出掛けていたおフクとサイラスだけでなく、父の側近のアンジーさん、母の侍女のコニス、執事のノーマンも揃っている。


「昨日捕縛した者だが、アンジー」

「はい、サイラスさんとノーマンさんが尋問しました」


 アンジーさんが報告をする。サイラスとノーマンが尋問したと。この二人に尋問されるなんて、災難だとしか言いようがない。

 何しろサイラスの特技が問題だ。尋問中ずっと得体の知れない不安に襲われる。それが続くと恐怖に変わる。

 サイラスと同じ、暗黒騎士のジョブを持つノーマンまでいるんだ。その恐怖はきっと倍増だ。この二人に落とせない者はいないとさえ言われている。て、俺が勝手に言ってるだけだけど。


お読みいただき有難うございます!

ラウは良い事を思いついた!と、思ったのです。転移で、パパッと行けば良いじゃん!と^^;

駄目だと言われてしまいましたね〜

いつも感想を有難うございます!

寒くなりました。皆様も体調にはお気をつけ下さい。

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


リリ⑥の初稿に取り掛かります。と、言っても風邪をひいてしまったので、治るまで投稿中のロロとラウだけにします。^^;

リリは初回投稿が2021年10月でした。もう3年前になるのですね。もっとこうすれば良かったとか、担当さんに、ここはもっとこうしましょう。と言われる事が多いのです。毎回全面改稿してるじゃん!て、くらいにです。⑥も頑張りますよ〜!ドンとこいです!^^;

リリ⑤発売中でっす!

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
秘密〜此処でも秘密にしなければいけない事が増えましたね。ラウちゃん、お疲れ様。ラウちゃんの周りには心配してくださる人が沢山いますね。 バットちゃん、頼もしいですね。流石これからの活躍が楽しみ〜 今日の…
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