122ーお守りします
アコレーシアは詳しくは知らないだろう。だけど、夫人は大まかなことは分かっているはずだ。
いや、母の友達を続けているのだから、それも承知しているのだろう。それでも親しくしてくれる。それは俺達にとっては有難いことだ。
「あこちゃん、あい。きょうもおはなを、もってきたよ」
「らう、ありがと。ふふふ」
昨日は淡い黄色のフリージアを持ってきた。今日は淡いピンクだ。偶々、今日アコレーシアが着ているワンピースも淡いピンクだった。
「きょうのおようふくに、とってもあうね」
「しょうかしら?」
「うん、かわいい」
「うふふ、ありがと」
お花を手渡す時に無意識で、アコレーシアの手を両手で包み込むように握ってしまった。とってもフワフワして柔らかいから、そっと握ったんだ。
「えっと……らう?」
「あ、ごめん。あこちゃんが、かわいかったから、つい……」
「あらあら、ふふふ」
夫人が手をお口の前にやって微笑んでいる。まさか母親の前でこんなことをするなんて、ちょっぴり恥ずかしい。その割にしっかりと、可愛いって言ってしまったけど。
「さあ、お部屋に行きましょうか」
夫人に案内されて、昨日とは違う応接室に通される。
この辺りの貴族の邸宅には、大抵応接室が二部屋ある。大人数が入れるような部屋と、小ぢんまりとした部屋の二種類だ。昨日は広い部屋だったけど、今日は小さい方だ。
メイドさんがジュースとクッキーを出してくれた。
「きょうは、このごほんにしたの」
「うん、いっしょによもう」
一冊の本をまた二人で一緒に読む。くっついて座り本の片方をアコレーシアが持って、反対側を俺が持って。アコレーシアの体温が伝わってきそうだ。
こんな幸せがあって良いのかと思ってしまう。
「この、ゆうしゃしゃまがね」
「うん、ちゅよいね」
「しょうなの。かっこいいの」
「あこちゃんは、ちゅよいひとが、しゅきなの?」
「えっとぉ、ちゅよいより、やしゃしいほうがいいわ」
「しょう」
「らうは、やしゃしいわね」
「しょうかな?」
「ええ、しょうよ。まいにちおはなを、もってきてくれるもの」
「らって、あこちゃんにあいたいから」
「ふふふ、ありがと」
可愛い3歳児だ。それにしても、3歳のアコレーシアは、とってもしっかりしている。
俺は、中身が3歳じゃないから。だから多少は3歳児らしくないところもあるだろう。年の割には落ち着いた3歳児といったところか? でもアコレーシアは違う。なのに、ちゃんと会話ができる。
それも心配だったんだ。俺は3歳児と普通に会話ができるのか? なんて思っていた。でもそんな心配は必要なかった。
アコレーシアはアコレーシアだった。俺の知っているアコレーシアだ。確かに幼いのだけど、根本的には変わっていない。このまま、まっすぐ大きくなったんだなと思う。
それでもまだ3歳だ。もしも俺を好きと思ってくれていたとしても、恋愛感情なんかではないのだろう。当然なのだけど、それが少しもどかしい。
「ねえ、ラウ君」
ずっとそばで見ていた夫人が、話し掛けてきた。
「らうれいいれしゅ」
「そう? じゃあ、ラウ。ここに来ることをご両親はどう仰っているのかしら?」
「えっちょ……」
どう言えば良いのだろう。俺は少し考えた。アコレーシアは何も知らないし。
「らいじょうぶらって、いってました」
「そうなのね」
「あい、いっしょにきたのが、さいらすれしゅ。ちゅよいれしゅ」
「執事さんではないのね?」
部屋の隅に控えていたサイラスが、軽く頭を下げた。隣にはおフクも控えている。
「あい、ふくもちゅよいれしゅ」
「まあ、そうなの?」
おフクも軽く頭を下げる。
「ふくはぼくが、あかちゃんのときから、いっしょにいましゅ」
「ラウの乳母かしら?」
「あい、しょうれしゅ。じょぶが、えっちょ……ふく」
「はい、姫騎士です」
「まあ、それは強いわね」
「あい、さいらすが……」
「私は、暗黒騎士です」
「そう、二人とも上位のジョブなのね」
「はい、ですからご安心ください」
「我々がお守り致します」
サイラスとおフクは強い。その上、秘密だけどバットもいるしね。
『みみもいるのみゃ!』
「ぴよよ」
「ふふふ、しょうらね。みみもいるね」
「あら、みみちゃんもちゅよいの?」
「みみはちゅよくないよ」
「ぴよ!」
ミミが嘴で突いてきた。だって強くないじゃないか。ミミが戦うところなんて見たことがないし。
「みみ、いたいって」
「あらあら、ふふふ」
夫人は俺を心配してくれていたんだ。自分達だって、もしかしたら危険かも知れないのに。そうなんだ、この家の人達はそうだった。
俺が戦に出る時だって、この人達は心配してくれた。みんな、無事に帰ってくるんだよと言ってくれた。
今回はそんなことにはしないからな。
昨日、俺の後をつけていたデオレグーノ神王国の間者。そのことがあって、俺は少しだけ吹っ切れた。これ以上、しつこく干渉してくるのなら俺は容赦しない。
「ラウ、でも気を付けるのよ」
「あい、ありがとうごじゃいましゅ」
俺の周りの人達は温かい。どうして、前の時に気付かなかったのだろう。両親だってそうだ。俺は変に反抗して距離を置いていた。馬鹿だったんだ。
お読みいただき有難うございます!
第1章に出てきたサイラス。覚えて下さってましたでしょうか?
あの時はあまり見せ場もなかったので、ちょっとかっちょいところもお見せしたいなと^^;
サイラスもおフクも、鬼強いです。
ミミの攻撃力はどうなのでしょうね?強い方が良いですか?弱々な方が良いですか?ご意見をお聞かせ頂けると参考にします。
いつも感想を有難うございます!励みに頑張りまっす!マジで、ラウも頑張らないと!( ̄◇ ̄;)
宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!
宜しくお願いします。
ボクは光の国の転生皇子さま!⑥の初稿に取り掛かります。やっぱね…予想通り、鬼改稿みたいですよ。
今日は④の書影を!帯に入るキャッチもいつも楽しみ。