120ーウィークポイント
バットが言うには、ちょ~っとだけだそうだ。それで大人の男性が倒れるのか? 完全に気絶しているぞ。
バットの力って恐るべしだ。体が小さいから先入観で、魔法が使えるといっても大したことがないだろうなんて思っていた。
小さな体だけど、能力は高い。本当に強いんだ。
『バットは魔族なのれしゅ!』
そうだった。魔族だった。忘れていたよ。そんな見た目だからさ。だって小さな蝙蝠さんだから。
サイラスが担いできた男、しっかり尋問して素性を割らせた。
どこの誰だったか? なんと例のデオレグーノ神王国の者だった。この国に秘密裡に入っていた間者だったんだ。そいつが俺を付けていた。どうして俺なんだ?
「ラウの顔はまだ知られていなかったんだ」
「え? ぼくのかおれしゅか?」
「そうだ。私やアリシアはもうバレているのだが、ラウはまだ3歳だろう? だからまだ知られてなかった。外に出ないようにしていたしな」
と、父が言った。俺の顔を知ったって、それがどうなるんだ? 俺はまだ3歳だ。何もできないぞ。
「私のウィークポイントだ」
なんだって……俺が父のウィークポイントだって?
「とうしゃま」
「アリシアとラウは大事な家族だ。それが私の弱味になる」
母と俺が父の弱味。だから俺の顔が知られることを阻止していたのだと。父を良く思わない奴は、デオレグーノ神王国だけでなく国内にもいる。そんな奴等にとっては、母や俺が父の弱味になるんだ。
母はもうバレているらしい。それこそ父が婚姻する時に、もう身元を確定されていたそうだ。
その上、母は一度父を助けるために強硬手段に出ている。精霊女王の力を借りて、デオレグーノ神王国へ乗り込んでいるんだ。もう顔なんてバレバレだ。
だが、俺はまだ3歳だ。邸の外に出るといったら、両親と一緒に数回城へ行ったくらいだ。
そうして俺の顔がバレるのを防いでいた。そんなことまでしているとは思わなかった。
なのに俺は呑気に、アコレーシアに花を持っていくのだと言って、自分から邸を出た。それも馬車を使わないで、トコトコと歩いて行った。顔なんて見放題だ。ああ、なんて能天気なんだ。
「とうしゃま、ごめんなしゃい」
「ラウは謝らないでいい。ラウがやりたいことは、できるだけやらせてやりたいんだ」
だから俺が歩いて行くと言っても、強く反対しなかったのか。
「サイラスを付けている。サイラスは有能だ。だからそう心配することはない」
「けろ……」
「ラウ、明日もアコちゃんに会いに行くのでしょう?」
「かあしゃま、けろ……」
母が俺を膝の上に乗せて話してくれた。
俺だけではない。アコレーシアの家にも危険が及ぶかもしれない。その可能性だってあるんだ。
それもアコレーシアの母親に話してあるそうだ。それでも良いなら、パーティーに出席すると。そんな相談をしての、あのパーティーだった。
俺が毎日アコレーシアに会いに行くと、それだけリスクが高まってしまう。
「ぼくはあこちゃんを、きけんなめに、あわしぇたくありましぇん」
俺なら大丈夫だ。いざとなったら転移で逃げれば良い。だけどアコレーシアは、そんなことできない。普通の人なんだ。しかも今はまだ3歳だ。
アコレーシアのジョブはアルケミスト。錬金術師だ。魔法は使えるが、その方向性が違う。攻撃魔法なんて、初級程度しか使えない。アルケミストというジョブの特性から、付与魔法や合成魔法に特化しているんだ。
俺のジョブである大賢者は、攻撃魔法だけでなく回復魔法にも秀でている。そもそも他のジョブと、比べようもないくらいに魔力量が多い。
どのジョブよりも魔力量が多く、攻撃魔法なら最上級魔法に位置付けられている殲滅魔法のように大魔法が使える。
そして回復魔法なら、生き返らせることは無理だが欠損程度なら治せる。それが大賢者というジョブだ。
その能力故に、他国も手に入れたがっている。だから前の時でも両親は俺のジョブを極秘事項にしていた。俺もそれを理解していたから、魔術師の振りをしていたりした。
今回俺は前の時より魔力量が多いらしい。精霊女王がそう話していた。何故なら0歳の頃から魔法を使っているからだ。
あ、そうだ。思い出したぞ。
「とうしゃま、かあしゃま。しぇいれいじょうおうがいっていたことを、おもいらしました」
「ラウ、何だ?」
いきなり全然関係ない話になるのだけど、思い出した時に話しておかないとまた忘れるから。
「まほうをちゅかえば、ちゅかうほろ、まりょくりょうが、ふえるしょうれしゅ」
「ラウ、すっごく話が飛んだわよ」
「あい、けろわしゅれちゃうから」
「ふふふ、そうなのね」
そうそう、まだ3歳だからかな? すぐに忘れちゃうんだよ。
「いやいや、ちょっと待ってください! 今ラウ坊ちゃんはスゲーことを言いましたよ!」
「なんだ、アンジー。煩いぞ」
「だって殿下! 魔法を使えば使うほどって!」
「そうね、今まで誰も知らなかったわね」
「奥様もどうしてそんなに冷静なんスか!?」
「ふふふ、だってラウですもの。精霊女王と会っているのよ。それ位は教えられているのでしょうね」
その通りだ、母はよく分かっている。
お読みいただき有難うございます!
おし、できた!と、できたてホヤホヤです^^;
何度も読み返して細かくチェック入れてからでないと、投稿できないタイプなのです。
ラウも頑張りますよ〜。ロロに続ければと!
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宜しくお願いします。
リリ⑥の書籍化作業はまだ始まってなくて、どこまで入るのかも分かりません^^;
次でラストまでいけると思うのです。ここまで書籍化できたのも、購入して下さった皆様のおかげです!
本当に心からの感謝を!
私が未だにスマホの待ち受けにしているリリ②の書影を。このリリが可愛くて大好きなのです。