118ードッキドキ
あっという間にアコレーシアのパーティーは終わった。正直俺はあんまり覚えていない。とにかくずっと、アコレーシアの隣に座っていたことだけは覚えている。
テンパったよなぁ、と自覚はある。
「ラウ、緊張しちゃったのかしら?」
「えっちょ、ぼくへんれしたか?」
「変ではないわよ。でもラウがあんなにアコちゃんのそばを離れないなんて、思いもしなかったの」
「しょんなに、しょばにいましたか?」
「ええ、そうね。アコちゃんも楽しそうだったから止めなかったけど」
帰りの馬車の中で、母にそう言われたほどだ。
いつもクールな俺がだ。え、クールだよ。というか、中身が3歳じゃないからちょっぴり冷めた印象をもたれると思うんだ。
その俺がテンパって、しかもそばを離れなかった。
「かあしゃま、ぼくきらわれちゃいましたか?」
「あら、そんな事はないわ。アコちゃんだって、嬉しそうだったもの」
「よかったれしゅ」
「ねえ、ラウ。ラウはアコちゃんが、好きになっちゃったの?」
とってもストレートに母に聞かれた。だけど俺は隠すつもりはない。堂々と言ってやろう。てか、聞かれる時点でバレバーレってやつだ。
「あい、しゅきれしゅ」
とってもとっても好きなんだよ。
「かわいいし、いいこれしゅ」
「まあ、ふふふ」
「らから、かあしゃま。あしたからあこちゃんに、おはなをもっていっても、いいれしゅか?」
「え? お花を持って行くの? 明日から?」
「あい」
「まあ、ラウったら。アタックするのね!」
「あい」
アタックと言われてしまった。そんな風に口にされると、めっちゃ照れる。超恥ずかしいじゃないか。なんで母親相手に恋バナしているんだよ。
でも今回も婚約するために、俺はアタックするぞ。他の男に渡すつもりはない。取られて堪るかと思っているから。
「じゃあ、頑張りなさい。母様は応援するわ」
「あい、ありがとごじゃましゅ」
次の日、宣言通り俺は庭に咲いていたフリージアの花を1本手に、アコレーシアの家に向かった。
もちろん、俺一人ではない。おフクと父の部下であるサイラスと一緒にだ。
覚えているかな? サイラスは、あの真紅の髪の女性の事件で活躍した、父の部下の中でも精鋭中の精鋭だ。
父はそのサイラスを俺に付けた。それだけ用心しているんだ。
危険だから馬車で行きなさいと、母は言ったのだけど俺は歩いて行くと言い張った。
「でもラウ、それは危険だわ」
「らいじょぶれしゅ。さいらすがいましゅ。もしなにかあったら、てんいしましゅ」
「あら、そう?」
「あい」
母をそう説き伏せて、貴族の邸宅が建ち並ぶ中をトコトコと歩いて行ったんだ。
今生では初めて家の外を歩く。前の時は7歳だった。この道を走って通った。ランニングだとか、理由にならない事を言って。
今回、俺はまだ3歳だ。トコトコと歩く。貴族の大きな邸宅がある中を、おフクとサイラスを連れてトコトコトコトコ。3歳児の俺にとっては結構な距離だ。
母は手紙を持たせてくれた。きっとそこには、事情を書いてくれているのだと思う。でないと、アコレーシアの両親が驚くだろう。
「こんにちは、きのうはごちしょうしゃまれした」
「あら、ラウ君!? どうしたの? 歩いて来たの?」
「あい。しょうれしゅ。あこちゃんに、おはなをもってきました」
手に持っていたフリージアをズズイと見せる。出てきてくれたアコレーシアの母親に、俺の母からの手紙を渡す。
それを読みながら、ふふふと笑われてしまった。
「ラウ君、ちょっと待っていてちょうだい。アコを呼んでくるわね」
「あい、ありがとごじゃいましゅ」
玄関ホールに置いてある、椅子に座って待っていてちょうだいと言われた。でも俺は座ってなんていられない心境なんだ。
昨日は庭しか入らなかったけど、こうして玄関に入っただけでもちゃんと管理された邸宅だと分かる。使用人もしっかり仕事をしているのだろう。
正面奥に大きな階段があり、1階はきっと応接室とかがあるのだろう。両側に部屋に続く廊下がある。
「坊ちゃま、座って待っていましょう」
「ふく、いいの」
「そうですか?」
「うん」
前の時もやったことだけど、今回は初めてだ。そりゃあもう、心臓がドッキドキだよ。どうしよう、来てしまったけど断られたら? 出てきてくれなかったら? そう考えたら、じっと座ってなんていられなかった。
ソワソワしながら暫く待っていると、アコレーシアと夫人が階段を下りてきた。
きっとアコレーシア付きの侍女か乳母だろうか? アコレーシアは抱っこされている。
俺と同じだ。俺も階段を下りる時はおフクに抱っこしてもらっている。
良かった、出てきてくれた。
「らう、こんにちは」
「こんにちは、あこちゃん」
「ろうしたの?」
「おはなをもってきたの」
はい、と手に持った1本のフリージアを出す。
俺達の思い出の花なんだ。俺が初めて会った時にプレゼントした花だから。毎日こうして1本ずつ持って来てくれたから。だから好きになったのだと言ってくれた花だ。今回も好きになって欲しい。
「まあ、ありがと」
「うん、あしたもくるよ」
「ラウ君、そんな毎日来なくても……お母様が心配なさるわよ」
「らいじょぶれしゅ。かあしゃまには、はなしてありましゅ」
夫人は驚いていたけど、俺は本気なんだ。
お読みいただき有難うございます!
ラウがね、アコちゃんに会いたいんですって。(^○^)
私は恋愛ものは苦手なのです。実は私の処女作『転生公爵令嬢の婚約者は転生皇子様』は悪役令嬢を少し絡ませて恋愛ものにするつもりでした。それが何故か書き始めると、ヒロインのルルが戦ってるし、初っ端から魔法ぶっ放してるし(・・;)
『僕、婚約破棄されちゃったよ〜!(仮)』もそうです。主人公のテテが、めっちゃ戦ってるやん!みたいな^^;
ラウで再々挑戦です!今回はラブラブを書くぞ!て、そんなストーリーだったっけ?(-。-;
しばらくお付き合いください。
いつも感想を有難うございます!
励みに頑張りまっす。
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宜しくお願いします。
ボクは光の国の転生皇子さま!⑤発売中です。この作品は私が初めてちびっ子を書いたものです。ちびっ子皇子様を書きたかったのです。それからは何故か、ちびっ子ファンタジーばかり書いてます。(-。-;
1巻の書影です。懐かしいー!リリ可愛い!
え、書き下ろし4本も書いてる!(・・;)