111ー天才だった
「あら、私は最初から見ていないわよ」
それでもずっと見ていたら嫌なもんだぞ。まあ、心配してくれているのだろうけど。
もうそんなに無茶はしないから、本当に止めてくれ。
「分かったわよぅ」
「私はずっと見てる訳じゃないぞ。私も仕事があるからな、時々だ」
「おふろと、といれは、らめらよ」
「ああ、今度から見ないと約束しよう。仕方ない、寝顔で我慢するか」
「ええ、それしかないわね」
本当に、この二人は。結構気が合うのじゃないか? 精霊女王と魔王なのにさ。やっていることが同じだぞ。
「ラウ、一緒にしないでちょうだい」
「そうだぞ。私は仕事の合間に、癒しを求めているだけだ」
何が癒しだ。え、ちょっと待った。バットを通して見ているのか?
バットは今日どこにいた? ずっと庭の木の下に、ぶら下がっていたのではないのか?
「屋根の下にもいたのれす」
「しょうなの?」
「眩しいのは嫌なのれす」
「へえーしょうなの」
蝙蝠と同じ見た目をしているけど、生態も同じなのか?
「全然違うのれす! ぼくは魔族なのれす!」
「しょうらったね」
喋れること自体が、もう普通じゃないよな。魔族か。こんなに小さいのに。
「ラウ、これでも本気で飛ぶと魔族一速いのだぞ」
「へえー」
「それに強い」
「え、ちゅよいの?」
「ああ、魔族だからな」
蝙蝠さんではなく、魔族。小さな頭にちゃんと2本の小さな角がある。そこから衝撃波を飛ばして敵を殲滅するらしい。こわッ! なにそれ、怖いんだけど。
「ラウの大魔法の方が強いわよ」
大魔法って、嫌な思い出があるんだ。前の時の死ぬ前に大魔法を使って魔族の大軍を殲滅した。その所為で全魔力を使ってしまって、刺された時に回復できなかったんだ。
その記憶があるから、今回は大魔法を使うのは止めようと思っている。
「全魔力を使わなくても発動できるわよ」
「え、しょんなことないよ」
だって前の時は、全魔力を使わないと発動できなかったぞ。だから俺の必殺技だったんだ。
「今回は0歳から魔法を使っているでしょう? だから魔力量も前の時より格段に増えているのよ」
「しょうなの?」
「そうね、使えば使うほど魔力量は増えるし威力も強大になるわ」
へえー、知らなかった。じゃあそれって父や母もそうなのか?
「ラウに限っている訳じゃないわ。みんなそうよ。ただそれに気付かないだけなのよ」
それは良い事を聞いた。父と母に教えてあげよう。いや、邸のみんなにだ。
「ふふふ、そうね。みんな強くなれるわよ」
「しょれはいいね」
俺がずっと精霊女王と話しているから、魔王がちょっと拗ね出した。
「ラウ、私のところへもまた遊びに来ると良いぞ。美味しいスイーツを用意しておくと、アースランが張り切っていた」
「うん、またいくよ」
て、気付いているかな? ミミが静かだろう? まだ寝ているんだ。この世界に呼ばれても、全然気付かず爆睡している。ミミは大物だよ。
「こいつは鈍感すぎる」
「あら、ふふふ」
「みみは、いちゅもなの」
「そうなのか?」
「しょうしょう。しぇいれいじょうおうに、おこされてもおきないの」
「ふふふ、ミミですもの」
なんだそれは。ミミってそんな感じなのか? それって使い魔としてどうなんだ?
「あら、今日アリシアに聞いたでしょう? ラウは私の愛し子なのよ。下手な使い魔を出すわけないでしょう? これでもミミはとっても優秀なのよ」
それってあれだろう? 実体を保っていられることと、言葉が分かることだろう?
「それだけじゃないわ。ラウを乗せてシールドを張りながら、魔国まで飛ぶなんてミミくらいにしかできないわよ」
「え……」
そうなのか!? それは初耳だ。じゃあミミじゃなきゃ、魔王に会いに行けなかったのか?
「そうなるわね」
「何? あのミミがいるから私の元へ来れたのか?」
「そうなのよ」
精霊女王が言うには、いくら精霊だと言っても人を乗せながらシールドを維持するなんてできないらしい。しかも飛ぶんだ。
なんなんら、ミミは転移だってできる。それってとっても凄い事らしい。
ミミは、みゃみゃみゃと言いながら普通にやってのける。俺を背中に乗せている時だって、普通に喋っている。だから、そんなに凄い事なんだと思わなかった。
どうやらミミは、本当に天才らしい。
「あの子は魔法に長けているのよ。精霊の中でもずば抜けているわ」
「あの鳥がか」
「そうよ、私の秘密兵器よ」
「ええー」
秘密兵器は言い過ぎだろう。だってミミだもの。
「みゃ……なんかわるぐちを、いわれたきがしゅるみゃ」
お、起きた。こんな時は気が付くんだ。
「みみ、おきたの?」
「みゃみゃみゃ!? ここはしぇいれいじょうおうの、しぇかいみゃ!? みゃみゃ!? なんれまおうがいるみゃ!?」
この世界ではミミは大きい。元の大きさに戻っている。だから、バッサバッサと翼を羽搏かせてやって来た。俺のすぐそばに着地して、首をヒョコッと傾けている。
「ミミは本当に大きいのだな。ラウから聞いてはいたが、こうして見ると可愛くもなんともない。小さいほうが良いぞ」
いつも魔王と会う時はミミは小さくなっている。本当は大きいのだとは話していたけど、この大きさのミミを魔王が見るのは初めてだ。
お読みいただき有難うございます!
ミミは本当に天才でした。ミミでなければ魔王城まで行けなかったのです。
これはラウを愛し子の称号を与えた精霊女王の計らいです。精霊の中でも特に優秀な子をと、ミミを選んだのですね。
それだけ今回は、ラウを守りたかったという事でもあります。どうしてそこまで思うのでしょうね。
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