11ー使い魔のミミ
「しかたないみゃ。ありしあしゃま、こわいみゃ」
あ、また余計な事を言った。
「なんですって?」
「な、なんでもないみゃ」
さて、なかなか話が進まないので手短に説明しよう。
この鳥さん、何の為に使い魔としてやって来たのか。
それは俺の魔力だ。攫われた時にとんでもない魔力を放出した。その後、気絶でもしているかの様に眠った。
それを見ていた両親は、魔力のコントロールができないのだろうと察してくれた。
ぶっちゃけ、コントロールしようと思ったらできるんじゃないかと思う。
だが、あの時は緊急時だった。その上、この身体で使うのは初めてだ。だから、そんな事をする暇もなく魔法をぶっ放したわけだ。
この鳥さんは、魔力のコントロールの仕方を教えてくれたり、能力の確認もしてくれるのだそうだ。
尚且つ、もし今後緊急事態になった時は、この使い魔が役に立ってくれるらしい。どう役に立つのかは知らないが。
見ていると、そんな事ができそうに見えないのだけど。
「まかしぇるみゃ! とくいぶんやみゃ」
「本当かしら?」
「ほんとうみゃ! だから、えらばれたみゃ」
「そう、じゃあお願いね。ラウを危険な事から守ってちょうだい」
「わかったみゃ! しょ、しょれでみゃ……」
「何かしら?」
鳥さんがとっても言い難そうにしている。モジモジと爪楊枝の様な足を動かしている。
「たいしぇちゅなことみゃ。たいかは、もらえるみゃ?」
「なんですって?」
「みゃ、みゃ、らって、たいかはほしいのみゃ」
「そうね、そうだったわね」
たいか……て、対価か?
お金って事はないよな? この鳥さん、一応精霊さんなのだし。
精霊って何が欲しいのだろう?
「ラウは魔力量がとっても多いみたいなのよ。それが対価でどうかしら?」
「ほんとみゃ!?」
「ええ、あなた魔力量を見る事はできるのかしら?」
「できるみゃ。あたりまえみゃ。きほんみゃ」
「じゃあ、見てみてちょうだい」
「おっけーみゃ」
鳥さんがジッと俺を見る。そして、目がピロロロローと光った。目の周りにミニマムな鳥さんが飛び回っている。それは一体何なのだ?
いちいち、ツッコミどころが満載じゃないか。
「しゅ、しゅごいみゃ! こんなにおおいのは、みたことがないみゃ!」
「やはりそうなのね……」
え? 母が真剣な顔をしている。
「まるでなんかいも、いきかえっているみたいみゃ!」
なんだと? 今、鋭い事を言ったぞ、この鳥さん。
「それくらいの、まりょくりょうなのみゃ。ましゃか、しぇいりぇいじゃないみゃ?」
「違うわよ、私の子よ」
「ありしあしゃまも、おおいみゃ」
「そうかしら?」
「おおいみゃ。しゃしゅが、しぇいれいじょうおうの、おともらちみゃ」
「ふふふふ、お友達と言えばそうかしら?」
母が意味深な顔をして微笑んだ。なんだか怖い。
この日から、一緒にいる事になった精霊の鳥さん。
「みみみゃ」
なんだって?
ヒョイと片方の手を上げている。手羽か?
「みみっていうみゃ。よろしくみゃ」
「あら、あなたお名前があるのね?」
「とうじぇんみゃ。でないとえらばれないみゃ」
「あら、本当に優秀なのね」
「みゃみゃみゃみゃ」
精霊さんは、その能力によって名前のある精霊とない精霊がいるのだそうだ。
この鳥さんは名前がある。精霊はみんな精霊女王に名前を付けてもらうらしい。
その能力を認められないと、名前はもらえない。だから名前のあるこの鳥さんは、優秀なのだろう。きっと……多分。
鳥さんが自慢そうに胸を張っている。その胸のところにある羽がふわっふわだったぞ。
そこを触りたい。ナデナデしたい。
俺が短くてぷよぷよの人差し指を出すと、その鳥さんが指に留まってきた。
「あぶぅ」
「みみみゃ」
「ぶぶぅ」
「しょうみゃ」
ん? 俺の言いたい事が分かるのか?
「とうじぇんみゃ。しぇいれいらからみゃ」
ほう、それは凄いぞ。なら、喋れない俺でも意思疎通ができるわけだ。
「むじゅかしいこと、いうなみゃ」
なんだと? この鳥さんの知能は、何歳位のものなのだろう?
「らうみぃ、よろしくみゃ」
「あうあー」
もう片方の手で、チョンと触る。小さいなぁ。本当に大丈夫なのかよ?
てか『らうみぃ』て何だよ。まあ、いいけど。
それからずっと一緒にいる。
ハイハイをしている俺の頭に留まっているのを母が見た時は、母の蟀谷に怒りマークが浮き出るのが見えた。
流石に俺の頭の上だから、叩きはしなかったけど。
「みゃみゃみゃ!」
と、言いながらミミが飛んで逃げたくらいだった。
「ミミちゃん、ラウの頭に留まるってどうなのかしら?」
「ごめんみゃ、もうしないみゃ」
「あうあーばぅ」
「らうみぃ、なんとかいってみゃ」
言ってるんだよ。でも、母には通じない。
「みゃみゃみゃ!? わからないみゃ? しょんなことあるみゃ!?」
あるんだよ。俺はまだ赤ん坊だからな。それでも、母はまだずっと分かる方だぞ。
「みゃぁ~、ふべんなのみゃ」
みゃあみゃあ言ってる鳥のミミちゃん。ぷぷぷ。
「わらいごとじゃないみゃ。またはたかれるみゃ」
ミミが頭に乗らなきゃいいんだ。
「しょうしゅるみゃ。きをちゅけるみゃ」
そうそう、そうだよ。
で、母は何の用だったのだろう?
「あら、そうだったわ」
数日家を空けていた父が帰って来るらしい。その事を母は知らせに来た。
俺を抱っこして玄関に向かう。