107ー天才とは?
そのふわふわなところを、触らせてくれないかなぁ? とっても触りたいぞぅ。
「らうみぃ、いまはしょんなことをいってないみゃ」
はいはい、そうだったね。
「みみは、てんしゃいなんらって?」
「らからいちゅも、いってるみゃ。みみは、てんしゃいみゃ。みゃ?」
「じぶんでいってるらけかと、おもってた」
「みゃみゃみゃ! しょうみゃ!?」
「うん、らっていちゅもいうから」
「ほんとうらから、いちゅもいってるみゃ」
「へえー」
「らうみぃ、しんじてないみゃ?」
「ちょびっとね」
いやいや、いつまでもミミと喋っていると先に進まないじゃないか。ほら、みんなが見ているぞ。
「みみは、てんしゃいらからみゃ」
「ミミったら、自分で言うから真実味がないのよ~」
そうそう、その通りだ。さすがリンリンだ。
「しかし、ミミの魔力操作は真似できないぞッ!」
フェンが言うくらいなのだから、そうなのか?
「まあ、そうなのだけどね。面倒なことをずっとしているもの~」
「みゃみゃみゃ!? めんろうなのみゃ!?」
「ええ、私達は面倒でそんなことはしないわ。姿を消せば良いだけですもの~」
「その通りだなッ!」
この精霊達の会話を、全て理解できるのは俺だけなのか?
「ラウ、アリシアもよ~」
「かあしゃま」
「ふふふ、私も分かるわよ。エレメンタラーですもの。でも、皆はそうじゃないわ。例えばコニスはリンリンが話すことだけね。アンジーはフェンだけよ」
「じゃあ、とうしゃまは?」
「父様もフェンが話すことだけね」
「へえ~」
えっと、父が少し拗ねているように見えるのだけど。上目使いで俺達を見ている。
いつもクールな振りをしているのだから、家でも少しはクールでいてほしい。
「アリシア、私もリンリンの加護が欲しい」
「あら、あなた。それは無理ですわ」
「そうか、無理か。なら精霊女王に頼むか?」
「まあ、ふふふ」
そんなになのか? 大したことは喋ってないぞ。
それなら余計にさ。どうだろう? ほら、いっしょにと言っていただろう?
「とうしゃま、いっしょにしぇいれいかいに、いきましゅか?」
「なにぃッ!?」
俺がかる~くそう言うと、父が食いついてきた。
ヒュンッと音がするのではないかと思うくらい速く俺の前に移動して、ガシッと両肩を掴まれた。
「ラウ! 父様も一緒に行けるのかぁッ!?」
「え、わからないれしゅ。しぇいれいじょうおうに、きいてかられないと」
「よし! 是非聞いてみてくれッ!」
「え……」
あまりの食いつきに俺は母をチラッと見る。これで精霊女王に駄目だとか言われたら、超落ち込んだりしないか?
「だから、ラウ。確実ではないことを言っては駄目ね」
「あい、かあしゃま」
母の仰る通りです。期待させちゃったかな?
「ラウ坊ちゃん! 俺も! 俺も行きたいッス!」
「行けるものなら、私も」
アンジーさんと、コニスだ。少し離れたところで、おフクまで小さく遠慮気味に手を上げている。ああ、おフクもなのか。
ええー、それはちょっと定員オーバーじゃないかなぁ。遠足じゃないんだから。
「あらあら、だから分からないとラウが言っているでしょう?」
「ラウ坊ちゃん、聞いて下さいよ」
「あんじーしゃん、ぼくはかあしゃまと、とうしゃまだけとおもってたの」
「ええー! だって俺は殿下の側近ッス!」
「私はアリシア様の侍女ですわ」
「私はラウ坊ちゃまの乳母です!」
アンジーさんとコニスだけでなく、とうとうおフクまで俺に寄ってきた。いやいや、だから分からないって言ってるじゃないか。
「そう簡単に行けるところではありませんッ」
母がピシっと言った。言い切った。これで、諦めてくれないかな?
アンジーさんがガックリと肩を落として、コニスは静かに離れて行った。おフクも自分の立ち位置に戻った。すごすごと。
父はまだ俺の肩を持ったままだ。しかもキラキラと眼を輝かせている。まあ、父はね。
元々、父と母は一緒にと思っていたんだ。今度、精霊女王に聞いてみよう。
「ラウ、あなた精霊女王と連絡が取れるの?」
「あ……とれない。いちゅもしぇいれいじょうおうが、きてくれるから」
でもきっとこれも精霊界から見ていると思うぞ。いつもなんだかんだ言って見ているんだ。
「ラウは愛し子だからかしら?」
「いちゅもみてましゅ」
「え?」
「しぇいれいじょうおう、みてるの」
「え? どうやって見ているのかしら?」
「しららいれしゅ」
だって本当に見ているんだよ。俺のことはよく分かってくれているし。
「ふふふ、精霊女王が使える物があるのよ~」
「ああ、あれだなッ」
ほら、リンリンとフェンは分かっているぞ。
「いやだわ。今も見られているのかしら?」
「きっと」
「あら、ラウは平気なの?」
「ろうしてれしゅか?」
「だっていつも見られているのよ?」
「あい」
見られて困ることがないもんでね。というか、見るどころか俺の思っていることを読んでいる時だってある。今までそれで結構助かっているんだ。だから、良いかな~なんてさ。