102ー連れてくる?
「なら、今度はご両親も連れてくると良いぞッ」
「魔王様、それは無理でしょう?」
「そうか?」
「ええ、普通の人間が魔王城にやってくるなんて」
「ラウも人間だ」
「ラウはだって自分でシールドを張れますから」
「ああ、そこか」
ふむ、連れてくるか。それも良いな。なら、こっそり来なくても良くなるじゃないか。
ちょっと魔王に会いに行ってくるね~、なんて出掛けられたりして。それなら、楽だな。
「らうみぃ、しょれはみみが、ありしあしゃまとちちしゃまを、のしぇるのみゃ?」
「うん、しょうらね」
大きいミミになら余裕で乗れるだろう? それで俺が二人にシールドを張れば良い。
魔王に会ったら、シールドを張ってくれるからそれまでの一瞬だろう? それなら俺にだってできる。マジで、考えてみようかな。
「みゃみゃみゃ! みみは、はんたいみゃ!」
「ええー、ろうして?」
「ありしあしゃまと、ちちしゃまをのしぇるなんて、じぇったいにむりみゃ!」
ミミがパタパタと飛び回りながら、嫌だと言う。
どうしてだよ、俺一人を乗せるのと大して変わらないじゃないか。ミミは大きいんだし、余裕で乗れるぞ?
「しょういうもんらいじゃないみゃ!」
「しょう?」
「しょうみゃ! らうみぃは、でりかしーがないみゃ!」
何がデリカシーだよ。よくそんな言葉を知っていたな。
「こまるの?」
「こまるみゃ! しゅっごく! とってもこまるみゃ!」
「しょうかな」
「しょうみゃ! またしぇいれいじょうおうに、しかられるみゃ!」
ああ、そこか。精霊女王に叱られるのが嫌なんだな? なら、俺が精霊女王に相談するよ。それなら良いだろう? この際だから、巻き込んでしまおうぜ。
「みゃみゃみゃ! らうみぃ、しょれはちがうみゃ」
「え、しょう?」
「しょうみゃ。らって、まおうにあうもくてきをわしゅれてるみゃ」
「えっちょぉ、おともらち」
「ちがーうみゃ! いくしゃをおこさないようにって、おねがいしゅるみゃ」
それはもう魔王に相談したぞ。
「そうだな、あの国が攻めてきたら自衛はする。それは当然だ。だが、その腹いせにラウ達の国に攻めたりはしないぞ」
「ほんちょみゃ?」
「ああ、約束しよう」
「みゃ~、しょれはあんしんみゃ」
なんだ、ミミ。まだそれを気にしていたのか? そんなのとっくに話してるっての。聞いてなかったのか?
「みゃ? しょうみゃ?」
「うん、しょうらよ」
「みみはしらなかったみゃ」
「みみって、あんまりきいてないから」
「みゃ! しょんなことないみゃ!」
またパタパタと周りを飛ぶミミ。
そのミミをパシッと、手で叩き落としたアースランさん。蟀谷に怒りマークが見える。
「いつも煩いですよ」
「みゃ! ひろいみゃ! いま、みみをはたいたみゃ!」
はいはい、ミミが煩いからだよ。
「みゃーみゃー煩いんです。ちゃんと話を聞いていなかったでしょう? その件は随分前に魔王様がちゃんと約束なさってますよ」
「みゃ、しょうみゃ?」
思い切り叩き落とされたというのに、ミミは平気な顔をしている。鳥さんだから表情はないのだけど。
「みみは、てんしゃいらからみゃ」
どう関係あるんだよ。頑丈なのと天才とは別だろう?
「らから、みみはてんしゃいみゃ。ちゃんとぶつりぼうぎょのしーるどをはってるみゃ」
え、俺そんなこと全然知らなかったぞ。ミミ一人だけ、何でそんなシールドを張ってるんだよ。
「らってなにがあるか、わからないみゃ?」
「えー、じゃあぼくは、ろうなるの?」
「らうみぃは、きにいられてるみゃ」
んん? じゃあミミは気に入られてないと言うのか?
「らってみみは、しぇいれいみゃ」
「アハハハ! ちゃっかりしているな」
意味が分からないぞ。精霊だと、どうして気に入られないんだ?
「らから、らうみぃ。しぇいれいと、まじょくとは、しぇいはんたいのしょんじゃいみゃ」
「うん、しょれはしってる」
「らからみゃ。みみはしゅかれるわけないみゃ」
なるほど、そう思っていたのか。案外冷静に、客観的に考えていたんだな。
でもそれなら、俺にもシールドを張ってくれても良さそうなもんだ。
「らから、らうみぃはしゅかれてるみゃ」
「えー」
「アハハハ!」
「なんでしょうね、ミミは。ちゃっかりしているというか、無性に癪に障るというか」
そう言いながら、アースランさんはミミをギロリと睨んだ。
「みゃみゃみゃ! ほら、みみのぴんちみゃ!」
「しょんなことないって」
「らうみぃ、しょうみゃ?」
「うん、しょうらよ」
ミミが俺の肩に乗ってくる。ミミが考えているようなことはないぞ。
ミミがそうやって信用しないから、アースランさんはムカついているんだ。ミミもちゃんと受け入れてくれているのにだ。
「みゃ? みみはわからないみゃ」
「みみは、しょういうとこ、あるよね」
「みゃ!?」
「アハハハ!」
「ラウ、これからはラウ一人でくる方が良いですよ」
「しょれはむりら」
「そうでした」
「ほら、みみはしゅかれてないみゃ!」
「みみ、じょうだんらよ」
冗談も分からないのか? 精霊ってそんな感じなのか?
ミミはもっと、人の気持ちを察することを覚えないといけないな。