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100/215

100ーまた顔面へ

 俺とミミが転移したのは、魔王の執務室だ。昼間はここに転移すると大抵魔王はいる。お仕事中なんだ。そこにいつも突然登場する。


「ぶぶふッ!」

「ああ! 魔王様!」

「あ、ごめんね」

「みゃみゃみゃ!」


 どうしてだか俺は、毎回毎回魔王の顔面に転移する。狙っているのではないんだぞ。マジで。

 なのに、100%の確率で魔王の顔面に着地するんだ。そして今日もそうだ。俺はガシッと魔王の頭にしがみ付いている。

 これって、俺の転移の精度が凄いと思わないか? ピンポイントで思った場所に転移している。魔王に会いたいと思っているから、魔王の顔面に着地だ。ワッハッハ!

 0歳の時は転移する度に、どっちかお漏らししちゃっていた。

 どっちかって分かる? お尻の方から出るか、前から出るかだよ。今はもうそれも卒業した。すくすくと成長しているからな。

 ブルブルッと震えると、未だにミミはお漏らしかと騒ぐけど。


「ラウ、相変わらずの登場だな」

「ああ! 魔王様! ラウはどうして毎回毎回、魔王様の顔面に転移してくるのですか!?」


 俺は魔王にベリッと顔面から剝がされて、そのままプラ~ンと脇を抱えられている。

 側で煩く言っているのは魔王の側近で、アースラン・アーティナスという魔人だ。この側近とも、もう顔見知りだ。

 真紅の髪をショートボブにしていて、人を射殺すような鋭い金色の瞳をしているのに、ちょっぴり心配性で口うるさい。

 頭に立派な2本の角があって、口にはドラキュラの様な2本の犬歯がある。

 見た目はとっても怖そうなんだけど、性格はオカン気質だったりする。面倒見の良い魔人だ。


「魔王様、ラウをこちらへ座らせてください。ラウ、ジュースで良いですか? ミミの桃ジュースはありませんよ」


 いつ行っても、俺用のジュースを用意してくれている。場を仕切っちゃう感じも、超オカンだ。


「みゃみゃみゃ! なんれいちゅも、ももじゅーしゅがないみゃ!?」


 小さくなったミミが、パタパタと飛びながら騒いでいる。これもいつものことだ。


「この国には桃ジュースがないと言ったでしょう? 桃自体がないのですから、仕方ありませんよ」


 やっと下ろしてくれた魔王はいつ見ても、超絶イケメンだ。

 闇を吸い込むかのような漆黒の長い髪に、頭の両側には丸く一巻きした立派な角がある。

 そして陶器のような白い肌に、睫毛の長い切れ長の眼は真っ赤な瞳をしている。しかも絶対的強者のオーラが(にじ)み出ている。そのイケメンが、少し寂しそうな眼をして言った。

 

「ラウ、しばらく来なかったな」

「え……」

「しばらく来なかったではないかッ」


 それでわざわざ精霊女王にコンタクトを取ったのか? それだけでなのか?

 俺が0歳の時に初めて会って、それからちょくちょく魔王城にお邪魔していた。確かに最近は、ちょっとご無沙汰だった。だって俺は今、まじめな3歳児だから。


「ろうして? ましゃか、しょれらけれよんだの?」

「ああ、ラウが来ないのがいけないんだぞ!」

「えー……」

 

 てか、魔王が俺に何の用だよ。


「いや……別に……用がある訳ではないのだ」


 眼が泳いでいるぞ。何をモジモジしているんだ。大の大人がさ。


「もしかして、ぼくがくるのをまってた?」

「ば、ば、ばかッ! 待ってなんていないぞ! 私はラウと遊びたいなんて、思っていないんだからなッ!」


 腕を組んでプイッと外方(そっぽ)を向いているが、チラチラと横目で俺を見ている。しかも、しかめっ面をしていると見せかけて、ちょっぴり尖った耳が赤くなっているぞ。口元だってヒクヒクしている。

 ツンデレかよ! 魔王だろう? なんでそんな性格なんだよ。て、思うだろう?

 そうなんだよ、この魔王。話してみると、意外にも良い奴だったんだ。

 それに、素直じゃないんだよ。0歳の俺が行くといつも、今日はゆっくりできるのか? ジュースでも飲むか? 甘いものは好きか? とか言ってくるんだ。

 0歳の赤ちゃんが、普通のジュースを飲んだり、甘いものを食べたりできないって話すと、とっても残念そうに肩を落として眼を伏せる。

 そのくせ口では、また来たのか。なんて言ってくる。


「ぼくちょっと、まじめにしてたの」

「ラウがか?」

「しょうしょう」

「アハハハ、今更だな」

「しょんなことないの」

「ラウは突拍子もないことをするから楽しいんだ」

「え、ぼくはふちゅう(普通)ら」

「0歳で転移して魔王城へやってきた者が普通か?」


 それを言われると、言い返せない。

 いつも俺が魔王城へ行く時は時間制限があった。何しろ、こっちより魔素は濃いし瘴気も漂っている。それを遮断するシールドを常時張っていないと、俺の命が危ない。

 赤ちゃんの俺は、そう長くシールドを展開できなかった。だからいつも一言二言話をしたら、じゃ、またなー! て、感じだったんだ。

 それに業を煮やした魔王は、いつからかシールドを補助してくれるようになった。

 

「私が補助すれば1時間は居られるだろう」


 そう言って、俺が展開しているシールドに重ねて、シールドを張ってくれたんだ。

 おう、それはありがとう。と、それから少しはまともに話せるようになった。

 今だって何も言わなくても、俺にシールドを張ってくれている。とっても人が良い魔王だ。


お読みいただき有難うございます!

今日の投稿で100話で〜す!

最初は嬉しがって投稿し出して、直ぐに書籍化作業の嵐でどうなるかと思いましたが、なんとか100話。

ロロみたいに、とんでもないPV数ではありませんが少しずつお気に入りも増えてます。まだまだ頑張ります!

宜しくお願いします。

いつも感想を有難うございます!とっても楽しみにさせて頂いてまっす。

宜しければ、是非ブクマや評価をして頂けると嬉しいです!

宜しくお願いします。


ボクは光の国の転生皇子さま!⑤も好評発売中!

ラストは泣けるはず!?

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
やはり〜顔面でしたね。(^_^)v でも魔王さんも側近の人もいい人(❓)ですね(*´ω`*) ラウちゃんの可愛らしさいメロメロ〜何でしょうか❓ これで少しは、長くお話しできますね(^O^☆♪
人の良い魔王、最高で〜す! かわいいツンデレさんですね!
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