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6話 トヨタ

何だかんだあり、結局は俺がPTから脱退するという形で落ち着いた。


俺の言い訳には一切聞く耳を持たず、退室する時には罵詈雑言を浴びせられた・・・。

実際、DDからPTを斡旋させると聞いた時にそのPTの方が絶対に強いだろうから安全にレベル上げも出来るだろうし収入も段違いに多いだろうと考えてしまったので完全に俺が悪いんだろう。


「大丈夫ですか?」

「あ、はい・・・」

「同級生や友達同士でPTを結成される方も多いですが、1次転職後は職業の組み合わせもありますし、1度解散して新たに組み直した方が良いですよ」

「あー、そう言いますよね」

「佐々木さんの職業、ひきこもりですが」

「はい」

「希少職は能力が極端に偏った職が多いと説明しましたよね?」

「はい」

「武器も防具も通常の装備では適正が見つかりませんでした」

「あー、はい・・・」

「という事は!」

「は、はい」

「その分、極端に偏りきった完全特化型の職業なんだと思われます」

「あー・・・はい」

「ですので、その特化している部分が判明するまでは我々の管理下に居られた方が安全かと」


なるほど・・・。

どの能力に振り切ってるかはまだ不明だけど。その分、途轍もないポテンシャルを秘めている。

但し、それ以外があまりにもザコ過ぎて普通のPTじゃ守りきれない。


即ち!

アイツらが普通のPTと比べて別段劣っているとは思えないけど、優れているとも思えない。

そんな普通のPTに超絶足手まといの俺が入る事で怪我をしたり、それこそ命を落とす確率が高くなってしまう。って事か。


「もしかして・・・」

「はい」

「寄生させて貰えるって事ですか?」

「まぁ、有り体に言ってしまってそうなりますね」

「お、おぉ・・・」

「我々、組合は本来・・・」

「はい」

「サポートは最低限致しますが、パワーレベリングの様な事は一切行っていない事になっております」

「あ、そうなんですか?」

「佐々木さんの場合は特例事項という事になります」

「はい」

「守秘義務も発生しますので、後ほど誓約書にサインをして頂きますね」

「は、はい」


黙っていれば養殖して貰えるとかお得過ぎるっ。




「はい。次はこちらに」

「はい・・・」

「それから、こことこことこことここにもお願いします」

「はい・・・」

「はい。お疲れ様でした」

「は、はい・・・」


簡単な説明を受け、誓約書にサインをしたが・・・人生で1番自分の名前を書いた日だと思う。


「それから、この書類を読んでおいて下さい」

「はい」

「最初から最後まで3度お読み下さい」

「は、え?3回?」

「分からない部分は連絡下さい」

「は、はい」

「規約に反した場合はそれ相応の請求額になりますので3回と言わず4回でも5回でも熟読するのをお勧めします」

「は、はい・・・」

「それではお疲れ様でした。実働まで多少時間が掛かりますが勝手にダンジョンに潜ったりしないようお願いしますね」

「はい」


言われなくてもソロでダンジョンなんて行く気はしない。


「恐らく私が佐々木さんの担当になると思われますので」

「はい」

「連絡先の交換宜しいですか?」

「あ、はい」


ここまで一緒に居て実はお姉さんの名前も知らなかったが山本茉莉さんと言うらしい。


「佐々木さん」

「はい」

「ご自分の能力で気になった事。新たに判明した事。等、小さい事でも構いません」

「はい」

「何かありましたらこまめに連絡して下さい」

「分かりました」


それでは。と案内された先には黒塗りの外車が待ち構えていた。


「え?」

「ご自宅までお願いします」

「畏まりました」

「え?」


後部座席に押し込まれ、気付いた時には出発していた。


「あ、えっと・・・◯◯区の・・・」

「ご住所でしたら存じ上げております」

「あ、そうなんですね」

「佐々木様の送迎を担当する事になりました豊田です」

「あ、佐々木です」


タクシーなんて乗り慣れないので気不味い沈黙が流れる。

何か喋った方が良いのだろうか?いや、でも・・・あれ・・・?


「担当?」

「はい」


つい口に出てしまった・・・。


「期間は未定ですが、DD本部に行かれる際だけでなく冒険者活動関連の際は申し付け下さい」

「えっ?あれ?もしかして豊田さんって・・・」

「はい」

「DDの方ですか?」

「はい。ダンジョンダイバー組合所属になります」


タクシーの運ちゃんじゃなかったのか・・・。

そりゃそうか・・・運ちゃんが自己紹介なんてしないよな。


信号で止まったタイミングで豊田さんは後ろを振り返り名刺を渡してくれた。


「こんな体勢で申し訳ありません」

「あ、はい」

「そちらに連絡頂ければ伺います」

「はい」


生まれて初めて貰った名刺を感慨深く眺めている間に家に着いていた。


「それでは明日は10時にお迎えに上がりますので」

「え?」



何故か明日も豊田さんが来るらしい・・・。


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