4話 適正
DDのお姉さんに案内された先は武器屋でも防具屋でもなくDD本部の地下にある・・・。
「フットサルコート?」
「訓練室ですね」
「あ、そうなんですね」
確かにゴールは見当たらない。
でも、床は人工芝が敷き詰められいくつも白いラインが描かれている。
どちらかと言うとフットサルよりもアメフトの方がイメージに近いかもしれない。
「佐々木さんの職業はどの様な効果があるのか不明ですので」
「あー、はい」
ひきこもりが職業って時点で不明って言うか意味が分からないんだけどね・・・。
「各種武器を揃えてみましたので一通り試して頂ければ。と」
「ありがとうございます」
「いえ、こちらも調査をしたいのでご協力お願い致します」
「はい」
職業というのは謎なもので。
例えば、職業が戦士で言えば適正武器は斧だったり鈍器だったり剣だったりと近接武器に適正がある。
普通な生活を送っていれば中々に縁遠いはずなのに手にした瞬間にしっくり来ると言う。
それまで1度も手にした事が無くても手にした瞬間に使い方が分かるらしい。
アーチャーなら弓。シーフなら短剣やスリングショットも適正があったはずだ。
転職するだけで何もしなくてもその職業に適した武器や防具の使い方を理解し難なく使いこなす事が出来る。それが1次職の強みだ。
なので冒険者と1次職の強さには雲泥の差がある。
だからこそ・・・1次職がひきこもりの俺に何が適しているのか・・・。
「いかがですか?」
「あー・・・これもダメですね・・・」
「そうですか・・・」
まぁ、そういう反応になるよね。
寧ろ、お姉さんよりも俺の方が落ち込んでるんだけどねっ。
うん、結果を言うと・・・この訓練場に用意してくれた武器も防具も何1つとして適正が無かった。
オーソドックスな武器からちょっとマイナーな物まで結構な量が用意されていたが1つたりとも俺の職業ひきこもりには適さなかった。
「あの・・・」
「はい」
「定番の職業は攻略サイトに適正武器とか載ってるじゃないですか?」
「はい」
ここで言う攻略サイトとはDDのホームページの事だが通称として攻略サイトと呼ばれている。良くも悪くもゲーム感覚と言うかゲームやネット用語から影響を受けた言葉が多い。
「マイナーな職って適正武器とかどころか存在すら載ってなかったりしますよね?でも、存在自体はネットで有名だったり」
「その職業を得られた方のご意向ですね」
「??」
「職業のデータを載せるか載せないかは佐々木さんの意思で決定致しますので」
「あ、そうなんですか?」
「はい。個人情報ですので秘匿されたい方がほとんどですね」
「あー、なるほど」
やっぱひきこもりとか恥ずかしいしな・・・。
「希少職業の場合、極端な能力の職業が多く。詳細を知られる事がデメリットになる場合が多いので公表されない方がほとんどです」
はい、違いましたっ。
職業名自体が恥ずかしいのは俺だけでしたっ。
い、いや・・・俺だけじゃないよね・・・?他にもきっと恥ずかしい職の人もきっと・・・。
「佐々木さんは公表されますか?」
「しないです、しないですっ」
する訳が無い。
あ、でも・・・アイツらには知られてるから口止めしないとか・・・。
「それではその様に手配しておきます」
「は、はい。お願いします」
「それから」
「はい」
「希少職業の場合、本当に意外な物への適正があったりするので」
「はい」
「訓練やダンジョン探索以外にも色んな場所に行ったり、色んな物に触れてみたり、色々な経験をされる事をお勧め致します」
「なるほど・・・具体的には・・・?」
「さぁ?そればっかりは私の口からは何とも・・・」
「で、ですよね・・・」
「ひきこもりですから・・・部屋の中にある物の可能性が高い気もしなくはないですが」
「あー、でも、そんなのが武器になるんですかね・・・?」
「さぁ?現時点でアタッカーなのか支援職なのかも判明してませんから」
「ですね・・・」
寧ろ、それが職業なのかすら怪しい勢いではある。
「そういえば・・・」
「はい」
「アイツらってどこ行ったんですか?」
俺を放ったらかしにして先に武器や防具を漁りに向かったと聞いたけど、この訓練場には誰1人居なかった。
「ダンジョンに向かわれたようですよ」
「へ?」
あれ?俺は?
「え・・・?なんで・・・?」
「新調した武器を使ってみたかったのでしょうか?」
「あ、あぁ・・・」
「1次転職を済ませてから、まだ狩りを行っていなかったようですし」
「あぁ・・・なるほど・・・」
と、言われて。
理解は出来ても納得出来る程大人ではない。
「佐々木さんのPTに対しての支援ですので、解散するのであれば全て取り上げる事が出来ますが如何されますか?」
「え・・・」
そうやって1回脅すくらいの事はしといた方が良い・・・のか?