32話 おこめさま
「って感じでしたねぇ」
「あの人怖いよねー。僕、苦手だったんだ」
「ははは」
引きこもりから抜け出し冒険者として復帰してから早2年が経過していた。
「由良さん今日はダンジョン行くんですか?」
「言わないでよー」
「ええ?」
「今日も明日も明後日もずーっと事務仕事ばっかの予定なんだよねぇ・・・」
「あー、それはご愁傷様です」
「ギルドなんて設立するんじゃなかったなー」
俺は由良さんの設立したギルドに加入した。
「佐々木君、僕の代わりにギルマスやらない?」
「やらないですよ。ってか、出来ないしっ」
「ハンコ押すだけだよ?」
ガチャ───。
「あ、加藤さんお疲れ様です」
「お疲れ。佐々木君そろそろギルドには慣れた?」
「はい。皆さん良くしてくれますし」
「そっか。期待してるから頑張って」
「はいっ」
「ハンコ押すの飽きたー。僕もダンジョン行ーきーたーいー」
「はぁ~。だったら今日は特別に」
「えっ、ダンジョン行って良いのっ?」
「政府のお偉方との会食に連れてってやる」
「もっとヤダーーー」
「ハハハハハ。お前に拒否権は無い」
そう言って加藤さんは由良さんをお米様抱っこした。
「下ーろーせー」
「タイミングが合えばまた一緒に潜ろうな」
「はいっ」
「下ーーろーーせーーー」
「それじゃ」
と、去って行った。
あれがウチのギルドマスターとサブマスターなんだから恐ろしい。
あの時、山本さんの誘いに乗ってDDと契約していたらどうなっていたかは分からないが今のこの生活には満足している。
悩みに悩んで結局は決めかねていたタイミングで由良さん達とダンジョンで再会し、そのまま勧誘された。
DDから契約を打ち切られるくらい無能の烙印を押された俺なのに何も聞かずに勧誘してくれた。
理由を聞いたら・・・「だって希少職だから。レアな物って集めたくならない?」と、めちゃくちゃ軽く返された。
その時は、その軽さが妙に良かった。
由良さんの事だからもっと深い理由がある気がするけど。
そして、ソロの時よりも圧倒的に収入が増えた。
まぁ、ギルドに入る時点でかなりの金額を稼げる様になってはいたが、それよりもかなり増えた。
なので郊外に家を買い、そこには父と母が住んでいる。俺も週末にはその家に帰る。
平日の俺は相も変わらずネットカフェで寝泊まりをしてダンジョンに潜っている。
「佐々木君」
「はい」
「今日、ダンジョンの後、皆で打ち上げ行くんだけど。佐々木君もどう?」
「あー、今日はちょっと・・・」
「今日は?」
「あー・・・」
「は?も。じゃなくて?」
「すいません・・・」
「今日もゲーム?」
「はい・・・ちょっとレイドイベが始まっちゃって・・・」
「ふ~ん。まぁ、良く分からないけど、たまには顔出してよ」
「イベが終わったら行きますっ」
「前もそう言って来てくれなかったじゃーん」
「いや、あの時はたまたまイベが続いて・・・周年イベとか・・・」
「そんなに面白いんだったら俺も1回やってみようかな?」
「えっ?ホントですかっ!?」
「え、ちょ・・・」
「実装からそこそこ経ってるんで新規にはあんまり優しくないですけど。俺も手伝えますしやりましょう」
「ちょ・・・近いよ・・・怖いしっ」
「あ、すいません」
「なんてアプリ?」
「あ・・・PCのゲームなんですよ」
「PCかー。持ってないからぁ」
「そうですか・・・」
そう。
ネトゲには未だにハマっている。
まぁ、あの時とは違って逃避じゃなく気分転換でやってるんだけどね。
「んじゃ、そろそろ準備して行こっか」
「はい」
ダンジョンセンターの一室。ウチのギルドが借りている部屋から出ると面倒な人に出くわした。
「佐々木さん。お疲れ様です」
「山本さん・・・お疲れ様です」
「裏切り者っ」
「ええっ」
「何時でもDDに鞍替えして頂いて結構ですからね?」
「堂々と引き抜きは止めて下さいよ・・・」
「裏でコソコソとなら?」
「そっちの方がバレた時に怖いっ」
「これからダンジョンですか?」
「はい」
「お気をつけて」
「はい。ありがとうございます」
山本さんに見送られエレベーターに乗り込む。
「おいおい、お前も隅に置けないなぁ」
「え?」
「あんな綺麗所と仲良くしてさ」
「チクチクやられてただけじゃないですか・・・」
「イチャイチャだろ?」
「えぇ~」
「あ、そうだ」
「はい?」
「今日の打ち上げ来なかったらその話で盛り上がる事にするか」
「勘弁して下さいよ・・・」
「どうする?」
「・・・行きます・・・行けば良いんでしょっ!?」
「よぉし。んじゃ、打ち上げの為に今日も頑張りますかー」
由良さん達のおかげでPTプレイの楽しさを知った。あの頃と違うのは信頼出来る仲間が居る事。
今日も俺はダンジョンに引きこもる。
これにて完結です。
ここまでお読み頂きありがとうございました。




