31話 石突
「いやっ・・・ちょっと待って下さい」
「はい。どうかされましたか?」
「それも含めて一旦考える時間を下さい」
そう言うのが精一杯だった。
「分かりました。では、連絡先の交換宜しいでしょうか?」
「はい・・・」
「お気持ちが固まりましたら直ぐに連絡を下さい」
「はい」
「直ぐにですよ?」
「は、はい」
「今度こそは」
「は・・・はい・・・すいませんでした・・・」
テーブルを挟み前のめりになり威圧感たっぷりだった山本さんの顔にいきなり笑顔が戻った。
「では、買取の方は済ませてありますのでカードを忘れず受け取ってからお帰り下さい」
「はい」
「佐々木さん」
「はい?」
今度は何だ・・・?と身構えたが、山本さんはゆっくりと立ち上がり深く頭を下げた。
「5年前は申し訳ございませんでした」
「え?」
山本さんは頭を下げたまま続けた。
「あの頃は私も駆け出しで結果を出す事のみに目がいき、佐々木さんやご家族の皆さんのサポートをする事まで気が回りませんでした」
「はい・・・」
「こんなのは私個人の事情でただの言い訳なのは分かっております」
「はい」
「謝罪する事も自己満足に過ぎないと重々承知しておりますが・・・」
「いや・・・」
「申し訳ございませんでした」
突然の事に頭が回らない。
やっぱりあの時の事は誰にとっても良い事なんて無くて、山本さんにも心に刺さった棘の様に残り続けていたのかもしれない。
言われた通り忘れずにカードを受け取ってからダンジョンセンターを後にした。
必死に謝罪する山本さんの姿が脳裏から離れずカードを受け取り忘れたがギリギリの所で思い出せたのでセーフだ。
そして、それはネットカフェに戻ってからも不意に思い出し考えが纏まらなかった。
5年前のお詫びも兼ねて支援してくれるのか。それとも、あの謝罪も交渉術の1つだったりするのか・・・。
こんな時に相談出来る相手が居ないのが悔やまれる。
ネトゲで悩む事があっても攻略サイトを見れば全て答えが載っているが・・・こんな時どうすれば良いのか・・・父親の顔が浮かんだが既に連絡先が分からない。
うん。また3人で暮らせる様になりたいな・・・。
そんな寂しさを紛らわせる様にネットでダンジョンの情報を漁った。
ダンジョンの情報を調べる為にインターネットを開いたはずだが・・・ネットサーフィンの末、面白ショート動画を観ている事に気付き・・・急いで寝たが時すでに遅し。ガッツリ寝不足である。
調べた結果は、この後もしばらくスケルトンが続く。
素手ルトンから始まり盾スケルトンや片手剣スケルトン。そして、盾+片手剣ノスケルトンと続き片手剣よりも小ぶりな双剣を持ったスケルトンや両手剣のスケルトンに斧スケルトンに槍スケルトンと続いていく。
このダンジョンを作った神様的なヤツが居るとするならばちょっと横着したと言うか・・・ヘタしたら飽きて適当にやったんじゃ?と邪推してしまう。
が、実際に来て戦ってみて分かったのは、武器に依る間合いや攻撃方法等の違いがめちゃくちゃ良い練習になる。
段階的に強くして、更には色んなパターンを作り、経験を積ませ冒険者を強くしようという意図さえ感じる程に・・・って、流石に考え過ぎか。
因みに厄介だったのは槍スケルトン。
間合いの遠さ、射程の長さもさることながら・・・突いて来るだけかと思ったら横薙ぎに払って来たり、柄って言うのかな?持ち手側の短い方で攻撃をしてきたりと選択肢が多く苦戦した。
その分、良い練習にはなった。
そして、今回のアタックは1匹に掛かる時間や移動に時間を費やし魔石のドロップ数はそこまででは無かった。
まぁ、レベルはいくつか上がったから大満足ではあるが。
「カードに振込で宜しいですか?」
「あれ?」
「???」
「何か、ちょっと多くないですか?そんなに数ありましたっけ?」
買取額が思ってた金額の1.5倍くらいあって疑問に思い、黙っていれば良いのに口に出てしまった。
「はい」
と、買取のお姉さんがこちらに顔を近付けて小声で言った。
「???」
「上から佐々木様の買取は1.2倍にする様にと」
「え・・・?」
あ・・・山本さんか。
「現金でお支払い致しますか?」
「あ、あー・・・カードで」
「畏まりました」
確か、大手ギルドは買取額が高いとかネットに書いてあった気がする。
取引量が多いからとか、深い階層のレアなドロップを取って来れるからとか色々書いてあった。
多分、その仕様が俺にも適応されたんだろう。
買取額が上がる=収入が増える。だから、嬉しい。嬉しいは嬉しいんだけど・・・。
どうにも外堀から埋められていっている様で大人の恐ろしさを感じる。
まぁ・・・俺も年齢的には大人か。年齢だけは。




