3話 様々
細やかな気配りの欠片も感じられない母親の優しさに打ちのめされた夜を越えて翌朝。
スマホを見るといくつか連絡が着ていた。
パーティーを組んでいるクラスメイト達からと・・・DDから。
DDとはダンジョンダイバーの略で、最初は正式名称の超自然区域保護観察庁みたいな堅苦しい名前が付けられていたが長いし堅いし言い難いしで不評だったからダンジョンダイバー組合。略してDDになったらしい。
要するに、お国からの連絡だ。
「えっ?」
いつもの一斉送信の定期報告だと思いながら開いたら、まさかの俺宛の内容に驚いて変な声を上げてしまった。
内容を簡単に言うと「過去に確認されていない新しい職業だからサポートさせて欲しい」との事だ。
その内容をコピペして皆にも送信すると・・・「やっとかよ」「遅すぎ」「引き籠もってても連絡ぐらい見ろよ」等の罵詈雑言の嵐だった。特に最後のやつ・・・お前だけは絶対に許さない。
まぁ、パーティメンバーだからDDから皆にも昨日の内に連絡が行ってて、俺だけ気付いたのが朝だったと・・・。
「お疲れー」
「おーっす」
「ういー」
「はよー」
と、ダンジョンの直ぐ側にあるDD本部の一室にて緊張感の無い挨拶が飛び交った。
「ケンジ様々だなー」
「だよなー」
「え?なにが?」
「とりあえず拝んどくかっ」
「えっ?」
戸惑っている間に俺を取り囲み全員が膝をついて拝みだした。
ガチャ───。
急にドアが開き、DDの制服であるスーツに身を包んだ女性が部屋へと入って来た。
「な、何を・・・?」
「いやっ、違うんですっ。コイツらがふざけてっ・・・」
と言い訳をした時には既に4人共素知らぬ顔で着席していた。
いや、お前ら3秒前まで俺を囲んで謎の儀式っぽいのしてただろうが・・・。
「まぁ、アレです。コイツのおかげでDDからのサポート受けれるんで感謝の舞をしてました」
「か、感謝の舞・・・」
「よ、よくされるのですか・・・?」
「え?初めてやりましたね」
「そ、そうですか・・・」
やばい・・・めちゃくちゃひかれてるっ・・・。
「あー、えっと、それで、俺達はどんなサポート受けられるんですかっ?」
と、流れを変えるために・・・4バカの謎の行動なんて無かった前提で本筋の話を振ってみた。
「ふぅ・・・はい。佐々木健二さん」
「あ、はい」
「この度、新たに確認されたひ・・・職業の調査をさせて頂く代わりと致しまして」
「はい(ひって言った。絶対にひって言った。ひきこもりって言いかけて止めた)」
「主に最新の武器・防具の貸出をさせて頂きます」
「「「「「おぉー」」」」」
「あ、すいません」
「はい。なんでしょう?」
「その借りた武器とか防具って」
「はい」
「もし壊した場合・・・弁償とか・・・?」
「故意に壊したとかで無ければ問題ありません」
「「「「「ふぅ~~~~~」」」」」
「そして、いざという時の為に護衛を複数名配備致します」
「護衛ですか?」
「はい」
「高レベの人とかと一緒にパーティーを組むって事ですか?」
「いえ、流石にそこまでの余裕は無いのでお手伝いは出来ませんが怪我をされた時の為のバックアップと考えて頂ければ」
「なるほど」
積極的に手伝ったりはしないけど、危なくなれば助けてくれる。って事か。
それだけでも十二分にありがたい。
「他にはどんなサポート受けられるんですか?」
「主だった所で言いますと。武器・防具の無償貸出にメンテナンス。有事の際、護衛による救急や救助が受けられます」
「はい」
それは今聞いたんだけど・・・。
「ダンジョンダイバー組合が保有する訓練場を無料でご利用頂けます。その際にご希望されるのであれば指導員もご紹介させて頂きます」
「おぉー・・・って、その指導員の人も無料で?」
「はい」
「おぉー」
と、思い付いた事を一つ一つ質問していたが。
「あれ?アイツらは・・・?」
いつの間にか全員居なくなっていた。
「レンタルする武器と防具を見に行かれた様ですよ」
「いつの間に・・・」
アイツらは高校生にもなって落ち着きがない。小中学生じゃないんだからもうちょっと思慮深く行動しろよ・・・。
その後もいくつか質問を続けたが。
「先にレンタルされる武器と防具をご覧になられますか?」
「えっ?」
「いえ、意識がそちらの方に向いていて応答が上の空に感じられましたので」
はい。メンタルが小中学生なのは俺の方でした・・・。
という訳で、DDのお姉さんに促されレンタルする武器と防具を見に行く事となった。
そして、自覚はある。浮かれている事に。
気を抜くとスキップしてしまいそうな程に浮かれている。
だって、格好良い武器とか防具って男の子の憧れだから・・・。