26話 キャプ
俺を助けてくれた子はやっぱり若くて高1で冒険者になったばかりらしい。
ただ、俺とは違って最初からゴブリンに篭ったりせずどんどん下の階層に向かいレベル上げをしてもうすぐLv.30になると言う。
「あ、そういえば」
「ん?」
「自己紹介がまだでしたね」
「あー、佐々木健二です。この度は助けて頂き・・・」
「何で急に固くなるんですかっ」
「いや、なんとなく・・・?」
「大空昴です」
行動だけじゃなく名前まで主人公みたい・・・だと・・・?
「いやぁ、でも佐々木さんは苦労されたんですねぇ」
「苦労・・・なのかな?逃げただけな気もするけどね」
「でも、こうしてダンジョンに帰って来たじゃないですかっ」
「あー、うん」
帰って来たというか、ここくらいしか思い付かなかったというか・・・。
やっぱりこの子は思考パターンが主人公のソレな気がする。
ようやく立ち上がる事が出来、左側の肩を組んで貰い歩こうとしたが・・・その場合、負荷が掛かるのが右側で痛みで全く歩けなかった。
結果、右側から支えて貰った。どうしても身体が当たり、痛いのは痛いが負荷が掛からないのでなんとか歩く事は出来た。
「大丈夫ですか?」
「うん、だいじょ痛っ・・・」
「じゃあ、ちょっとここで休憩しましょうか」
「あー・・・友達待たせてるのにごめん・・・」
「今日はもう無理かもですねぇ」
それは本当に申し訳ない・・・。
放課後に急いでダンジョンに来て・・・こんなソロでダンジョンに来て怪我してる意味の分からんヤツを助けて狩りが潰れるとか・・・高校生の時の俺だったらキレてるかもしれない。
「だよね・・・」
「まぁ、平日なんで。狩りのメインは土日なんで気にしないで下さい」
「大空君ってさ」
「はい?」
「主人公っぽいよね」
「へ?」
「いや、ほら、名前も格好良いしさ。こんな人助けとかもしてて」
「あー、親父が主人公なんですよねぇ」
「え?お父さん?って、主人公?本当にっ?」
「ハハハハハ。ウチの親父、名前が翼なんですよ」
「それは・・・ボールと友達になってそうだね」
「ハハハハハ。そのイジりをされるから球技は全くやってなかったみたいですねぇ」
「あー、そりゃ、まぁ、そうか。流石にイジられるか」
足を止めては雑談をして痛みや疲労を紛らわし、紛れたらまた進む。
初対面のそれも年下の子に何故か昔話をしてしまった。
人生の恥部というか黒歴史というか・・・誰にも触れられたくない、自分でも出来る限り思い出したくない記憶。
それを、こんな初対面の相手に話したのは・・・俺の黒歴史は友達を失った事や家庭が崩壊した事ではなく、その後の5年間なんじゃないかと思い始めたからかもしれない。
何をするでもなく、逃避して思考を停止して停滞を受け入れてしまえば辛くない。
5年もの長い間、金が無くなるまで動けずに居た事。その事の方が恥ずかしい。
そして、初対面で今後もきっと関わる事が無いであろう相手だからこそ話せたのかもしれない。
「なんとか無事に出れましたね」
「ありがとう」
「いえいえ、救護の人呼んで来ますね」
「あ、ちょっと待って」
「はい?どうしました?」
「お礼ってさ、相場とか分からないんだけど・・・」
「あー・・・またどこかで会ったらご飯でも奢って下さいっ」
「いや、そんなんじゃ」
呼び止めようとしたが、その時には既に大空君は走り出していた。
どこまでも主人公みたいな子だ・・・。
しばらくすると救護班が数名やって来て、意識の有無から始まり色々な確認を取られた。
そして、人生初の担架を経験したが・・・思いの外揺れるし脇腹に響く。
そのままダンジョンの直ぐ側にある病院へと搬送され、レントゲンを撮られたり採血をされたりと・・・滅多に病院に来ない俺としては実験動物にでもなった気分だった。
そして、本当の不幸はこの後にやって来た。
「診察料、1万6500円です」
そんなにするのか・・・。
病院なんて親に連れられてしか来た事が無いから自分で診察料を払うのは初めてだ。
「保険証か冒険者カードはお持ちですか?」
「あ、カードならあります」
「お支払いはカードでよろしいですか?」
「あ、はい」
あ・・・カードには4680円しか入ってないはず。
「カードお返しします」
「あ、えっと・・・足り・・・」
「あぁ、不足分はマイナスになってます」
oh...1万ちょい借金か・・・。
コバルトの買い取りして貰って少しでも返済せねば。
所持金自体はまだ多少あるが買い取りをして貰わなければならない。
まぁ、まずコバルトなんて持ってても邪魔だし。ダンジョンで得た物を許可無く持ち出した場合は即座にお縄になってしまう。
なので痛み止めが効いている内に買い取りを済ませ今日も今日とてネットカフェへと向かった。
因みに、コバルトは思ってたよりも数があって買取額も予想より多かったが病院代で余裕でマイナスだった。




