23話 修学旅行の定番
「ははははは」
笑いながら本田さんは再び俺を引き起こした。
「いやぁ、ああ言った方が本気になるでしょ?」
「いや、そりゃそうですけどっ・・・」
「良い運動になったでしょ?」
「いや、まぁ、そうですけど・・・」
「納得いかないですか?」
「え?そりゃ、だって・・・」
「体力が足りていないのは分かりますね?」
「あー・・・はい・・・」
ド正論だ。
モンスターとの戦闘が長引く事は早々無いが・・・いざという時に全力で走って逃げる体力は必須だ。
「まぁ、低階層であれば問題無いでしょう」
「はい」
「最初はゴブリンでしっかり慣らしていって下さいね」
「分かりました」
「さっき講習で札を受け取りましたね?」
「はい」
「それを5番窓口で提出して下さい」
「はい」
「新しいカードが交付されますんで」
「はい」
「ではこれから頑張って下さい」
「はい。ありがとうございましたっ」
5番窓口で新しいカードを受け取り。その足でダンジョンに向かう気でいた・・・そう、本田さんにしごかれるまでは・・・。
既に全身を疲労感が覆い尽くしている。
免許センターを出た後はネットカフェに向かい死んだ様に眠った。
翌朝、全身の筋肉痛の痛みで目を覚ました。
「いてて・・・」
普段、個室で椅子のあるタイプのネカフェを愛用していたが、今回は椅子ではなく床にマットの敷いてある店を選んだ。
理由はしっかり横になって寝たかったから。
「う~ん・・・やっぱ正解だったな・・・」
と、伸びをしながら身体の重さに反して意識の明瞭さに睡眠の重要性を思い知った。
ここ最近・・・というか、ここ5年は睡眠時間を削ってゲームに没入していたかったからこそ椅子の上で寝ていた。
ネカフェで無料のモーニングを摂りダンジョンに向かった。
「そういや・・・」
ここに来て、とんでもない事に気が付いた。
「俺・・・防具はおろか武器すら無くね・・・?」
慌ててダンジョンの近辺にある武器屋へと歩を進めた。
ゲームアカウントのRMTで得た4万があって本当に助かった。
無ければこの時点で詰んでいたかもしれない。
「やすっ・・・」
と、思ったが店の軒先にある傘置きの様な物に乱雑に挿された木刀にはシールが貼ってあり、まさかの1500円だった。しかも、手書きで・・・。
「すいませーん」
「あいよー」
「これって1500円なんですか?」
「おう」
「だったらこれ下さい」
「あいよ」
よし、出費を最低限に抑える事が出来た。
それに触った感じ意外と重量もあって丈夫そうだ。
「はい、これで」
「丁度・・・だな」
そして、店を出ようとした所呼び止められた。
「ちょい待ち」
「え?」
「そのまんま裸で持ってく気か?」
「え?あ、はい」
「木刀と言えど武器だからな」
「え、はい」
「そのまんま裸で持ち歩くと捕まるぞ?」
「えっ?」
「ほれ」
と、店主はバットケースの様なソフトケースをカウンターの上に取り出した。
「これに入れときゃ大丈夫だ」
「おー、ありがとうございます」
「5000円だ」
「えっ」
「5000円」
「はい・・・」
まさか・・・武器よりも入れ物の方が高くつくとは思わなかった・・・。
とは言え、これで武器も得た。防具はまだ何も無いがゴブリン相手であればそこまで心配する必要も無いだろう。
気を抜いてはいけないが杞憂しすぎるものまた良く無いだろう。
無い・・・よな・・・?
そうして、何度目かの気を取り直して5年振りのダンジョンへと足を踏み入れた。
1階層は5年前と比べると格段に空いていた。
湧き待ちの場所取りも無く適当に歩き回りエンカウントしたゴブリンを倒していく。
たまにすれ違う新人PT達から奇異の目を向けられている気がしないでも無いが気にしなければ問題無い。
ソロだからか、木刀だからか、防具すら着けずにジャージ姿だからか・・・何なのかは分からないが・・・と、気にしなければ問題無い訳だが・・・どうしようもなく気にはなるっ・・・。
ゴブリンの主なドロップは汚れた腰蓑。これは大体10%前後のドロップ率らしい。
臭いが最悪な薄汚れた藁なのだが1つ200円前後で買い取って貰える。買取額は変動性なので今日の買い取りは比較的安い180円だった。
そして、レアドロップはゴブリンの短剣でドロップ率1%程らしい。こちらは固定で5000円の買い取りだ。
なので短剣が落ちれば1日分の生活費にはなる。
腰蓑は綺麗に洗浄してコンクリートとかに混ぜて使うと耐久性が尋常じゃなく上がるらしく、建材としてどれだけあっても困らないらしい。
短剣は鋳潰して武器にするのがメインだそうだ。こちらも溶かして普通の鉄に混ぜると耐久性が上がるらしくそちらでも需要はあるそうだ。
因みに俺は未だにゴブリンの短剣様にはお目にかかれていない。
累計で言えば100匹どころかもっと倒しているはずだがこればっかりは運だから仕方ない・・・。




