2話 電撃
「そっち行ったぞ」
「おう」
バコーン───。
「ホームラン。って感じだな」
「お、上がったんじゃね?」
「やっとかー」
ついに念願の1次転職。
「何に転職した?なぁ、俺はさっ」
「いやいや、まだダンジョンだぞ。一旦、外に出てから発表会しようぜ」
「あー、それもそっか」
俺達は変に浮かれてポカをする事無く、ダンジョンの外まで出てからステータスウィンドウを開き各々の職業を確認し報告しあった。
「俺は戦士だな。面白味も何も無いな・・・」
「俺、魔法使いだっ!」
「「「「おぉー」」」」
「やべぇ、マジで楽しみだっ」
「やっぱDTだから魔法使いなんか?」
「うっせぇ、まだ30じゃねーし。それを言うならお前らもDTじゃねーかっ」
「たしかにっ」
ガチャを回す時、タップしてから演出が確定するまで目を閉じて待つ。
そして、信じてもいない神様に祈りを捧げてから目を開ける。
それと同じ感覚でダンジョンを出てからもまだステータスウィンドウを開いていない。
「俺はアーチャーだ」
「弓かー。にしてもアタッカーばっかだな」
「支援職自体かなりレアみたいだからなー」
「割合ってどんな感じなんだっけ?」
「3割前衛アタッカーで2割後衛アタッカー。1割タンクとかじゃなかったっけ?」
「って事は支援4割?」
「な訳っ」
「その他も色々あるみたいだからな」
「そなの?」
「ハズレだとポーターとかあるみたいだぜ?」
「ポーター?」
「荷物持ち」
「うは、きっつ。冒険者からランクダウンしてんじゃん」
「ま、そーゆーのもあるって事だ」
「ヒーラーかバッファー来いっ」
「俺はシーフだから。その期待はお前に任せた」
「俺かよ・・・」
「ってか、ソーフがまさにそれだな。その他」
「あー、なる」
「え?シーフってハズレなん?」
「いや、シーフは当たりじゃね?索敵とか出来るはずだし」
「良かった~」
「で、ケンジは何だったんだよ」
「いや、まだ見てない」
「早くしろよー」
「お、おう」
ここまでの流れを見る限り。どこの誰が言ったのかは知らないが、本人の資質というか性格が職業に影響してるという説はかなり信憑性が高い気がする。
4人の職業を聞いて、どれも納得出来る職業だったが自分の性格ってのは自分が1番分かってないと言うか客観的な部分だったり細かい部分が反映されると考えると自分で自分の職業を予想するのはかなり難しいかもしれない。
「おい、いつまで引っ張んだよ」
「誰も期待してねーって」
「うっせーな。分かってるよっ」
ステータスウィンドウを開き職業の欄に目をやる。
「え?」
「お?どした?」
「当たりか?」
「ポーター?」
「職業ってコレだよな・・・?」
「コレって言われても人のステータスは見えんのよな」
「職業って書いてあるのの横にあんだろ」
「・・・こもり」
「ん?」「え?」
「ひきこもり・・・って書いてある」
「ぷっ・・・」
1人が噴き出したのをきっかけに全員が爆笑に包まれた。当然、俺以外の全員だ。
「まー、でもケンジがひきこもりってのは何か分かるわー」
「なんでだよっ」
「分かる分かる」
「はぁ?」
客観的に見ると俺ってひきこもりになりそうなのか・・・。
「でもさ?レアな職な分、ガチで当たりな可能性もあるよな」
「だよなー、羨ましい」
「替われるモンなら替わって欲しいわ」
「言ったな・・・?」
「当たりだったら替わってくれ」
「うっせー」
好き勝手言いやがって・・・。
「まぁ、レベル上げてどう変わってくか見ないと分かんねーんじゃね?」
「だなー」
「んで、これからどーする?」
「もっかいアタックするってなると遅くなりすぎじゃない?」
「んじゃまー、続きは明日にするか」
「だなー」
と、この日の狩りは終了。
家に帰ってからも何度かステータスウィンドウを開いて確認したが、やっぱり俺の職業はひきこもりで間違いないようだ。
そして、ネットでの検索にもHITせずひきこもりがどういった職業なのかはレベルを上げてみない事には分からず・・・。
「そろそろ1次職に上がるとか何とかって言ってなかったか?」
と、父親から夕飯の時に話を振られたが。
「え、あー・・・うん・・・。まぁ、なんて言うかー・・・もうちょい?」
「ほーん。まぁ、目に見えた目標があるってのは良いな」
「あー、まぁね・・・」
「でも、楽しみだからって無理するなよ?欲をかいて怪我したら元も子もないからな」
「あー、うん、だね・・・」
「お父さんっ」
「んあ?」
割って入った母親が父親にゴミョゴミョと耳打ちをしている。
そして、微かに聞こえて来るのは。
「今日、上がったらしいけど~」
「いや、それだったら」
「~~君のお母さんから~」
「ほんほん」
「あんまり良くない職業が~」
と、まぁ、ぶっちゃけ全部丸聞こえだった。
隠すんであればもうちょっとちゃんと隠してくれ・・・。
そんなこんなで母親には全て知られていた。
そして、お母ちゃんネットワークの厄介さを久しぶりに思い知らされた・・・。