12話 珍しく時事ネタ
契約でレベルを上げる事が出来ない。
由良さんに秘められたDDとの怪しげな契約とは・・・?
「僕って1次職が魔法使いで2次が紫電なんですよ」
「はい」
「それで、2次になって発現したスキルもサンダーで」
「はいはい」
「まぁ、分かりやすいでしょ?」
「ですね」
「だからレベルとステとの関係とか色んな検証に付き合う契約になってて」
「あー」
「勝手に上げたら検証にならないからって前にも怒られた事があったんですよねー」
怒られてたっ・・・!
この人、この軽い感じで結構なやらかししてたっ。
「こっちだって悪い事したのは分かってるのにあんなに怒らなくても良いと思うんですけどねぇ」
「いや、でも・・・契約違反は・・・」
「だって、折角2次転職したんだからレベル上げしたいじゃないですかー」
「お前が悪い」
「えー」
「つーか、何でお前・・・あれ、怒られるだけで済んでんだ?」
「えー?でも、めっちゃ怒られましたよ?」
「いやいや、契約違反なんだから賠償金とか発生しなかったのか?」
「そんなのする訳無いじゃないですかー」
「あー、そういう契約じゃなかったのか」
「でしたよ?」
「ん?」
「どうしました?」
「どっちだ?」
「なにがですか?」
「賠償しないとな契約だったのか?」
「ですよ?」
「え?でも、してないよな?」
「する訳無いじゃないですかー。って、さっきも言いましたよ?」
「え?何でしてねーんだ?」
「言いくるめました」
その場に居た全員が「oh...」という表情になった。
飄々としていて、何を言っても暖簾に腕押し。
ずっとこの調子で居られると・・・言いくるめられると言うよりも、面倒になってどうでも良くなった可能性が高い気がする。
いや・・・それも計算か・・・?
パン───。
本田さんが手を叩いた。
「今日中に佐々木さんには2次転職して貰う予定だ」
と、仕切り直した。
「ペース的に考えて5階か6階でオークをメインに狩ろうと思う」
「加藤と由良の負担が増えるけど大丈夫でしょう」
はい。加藤さん由良さん何卒よろしくお願いします。
「佐々木さんの安全は保障しますので、如何ですか?」
「あ、はい、大丈夫です」
そんな感じでオークでのパワーレベリングは進んだ。
「上がりました」
「Lv.18ですね?」
「はい」
「では一旦休憩にしましょうか」
気付けばお昼前になっていた。
「交代で見張りをするんで佐々木さんは今の内にしっかり休んでおいて下さいね」
「はい」
と、俺は流石に見張りをしなくて良いらしい。
まぁ、見張った所でどこをどう見れば良いかも分からないし、モンスターが出ても対処出来ないから見張りには全く不向きだった。
「どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
高橋さんが皆に配っているのは10秒でチャージ出来るゼリーだ。
やっぱりこれが便利で良いよね。水分補給も出来て意外と腹持ちも良い。
アイツらとダンジョンに潜ってた時にも重宝していた・・・アイツらと・・・くそっ・・・。
どうしても気を抜くと思い出してしまって良くない。
「佐々木君、昨日の配信って観た?」
「おい、由良っ」
「あー・・・皆さん知ってるんですね」
「やっぱ観たんだ」
「観ましたね」
皆、知ってたのか。
ある事ない事晒されまくったあの配信を・・・。
「僕の時も揉めたんですよねー」
「えっ?そうなんですか?」
「うん。僕の時は配信じゃなくて文字の方だったんだけどね」
「あー、って言うと、ツイスター的な?あ、今はもうエッキスか」
「うん、そうそう」
希少職ってだけじゃなく、そんな所も仲間なのか。
「佐々木君は配信で良かったよね」
「え?いやいや、配信の方がキツいでしょ・・・」
「でも、山本さんが即座に対応したみたいだよ?」
「あー、直ぐにBANされてたのって山本さんがやってくれたんですね」
「みたいだよ」
「まぁ・・・でも・・・」
「僕の時は拡散されまくって消しようが無いくらいに広まっちゃったからねぇ」
「あぁ・・・」
「配信はチャンネルごと消えてるし」
「はい」
「まぁ、録画した人が絶対に居ないとは言い切れないけど」
「あー・・・」
「視聴者数的にもその可能性は低いっぽいし」
「あ、そうなんですね」
「配信した子達は・・・」
「はい」
「契約違反だから損害賠償請求が近い内に行くんじゃないかな」
「えっ・・・」
「その、え・・・は、どっち?」
「え・・・っと・・・」
フリーズしただけでどっちとかは無い。
でも、ざまーみろなのかこれで決定的に仲直りが出来なくなる・・・あ・・・そんな事になったら絶対に仲直り出来なくなるんじゃ・・・。
「まぁ、僕の時は・・・」
由良さんはニッコリと満面の笑みを浮かべ、手がお金を表す厭らしい形をしていた。