11話 ライブ
タイトルを
何故かLv.1から上がらないので引きこもる事にしました。
から
何故かレベルが上がらないので引きこもる事にしました。
にマイナーチェンジしました。
スマホの通知で目を覚ました。
「んんっ・・・」
半端に寝た所為か寝る前よりも疲労感が強い。
「んあー・・・」
起き上がる気力が湧かず、布団に入ったままスマホを操作し動画サイトでも見漁って目が覚めるのを待つ事にした。
が、これといって気になる動画も無く。お気に入りのストリーマーのチャンネルを見にいってもピンと来ず何度もホームに戻ったりと繰り返していた。
「え?」
一瞬、視界の端に見知った顔が映り込んだ気がした。
「いや、え?今、あれ?あ、あった」
アイツらが居た。
「え?アイツら何してんだ?」
サムネイルの端には赤くライブと表示されている。
「今やってんのか」
恐る恐るそのサムネイルをタップした。
そこに映し出されたのは、かつてのPTメンバーであり同級生であり友達だと思っていた4人による俺を嘲笑するだけの身内ネタで満ちた、関係の無い人間には全く面白くないであろう配信だった。
が、しばらくするとその配信は強制終了された。
因みにチャンネルもBANされた模様・・・。
するとスマホに着信があった。
「はい、もしもし」
「お疲れ様です。山本です」
「はい、お疲れ様です」
「早速本題ですが」
「はい」
「明日中に2次転職して頂きたいと考えておりまして」
「あー、はい」
タイミング的に配信の事かと思ったが違った様だ。
「明日は朝からダンジョンに篭って頂こうかと」
「あー、はい。何時くらいからですか?」
「8時頃にはそちらへお迎えに行かせて頂こうかと思いますが如何でしょうか?」
「はい、大丈夫です」
「では、よろしくお願い致します」
「はい」
「失礼致します」
「はーい」
冒険者時代のペースで狩りをしていればLv.10→Lv.20になるのに、きっと1ヶ月以上は要したはずだ。
それがたったの2日で上がるとは・・・。しかも、こんなにも安全に。
そして、2次転職すれば・・・このクソみたいなハズレ職・・・か、どうかは分からないけどクソダサい名前の職からは逃れられる。
紫電程じゃないにしても多少は格好良い名前の職になりたいっ・・・。
それはそうとして・・・アイツら・・・俺の事あんな風に思ってたのかよ・・・。
見捨てた形にはなったけど態とでは無いし・・・それに、1しか無い事を100にも200にも誇張して・・・。
怒りと悲しみが交互に頭の中を支配し感情がグチャグチャになりそうになっていた。
が、そんなタイミングで。
「ごはーーん」
と、階下から母親の声が響いた。
「はーい。今、行くー」
正直、砂を噛むとはこういう事を言うのかと思い知った。
何を食べているのかは理解しつつも味がしない。
味がしないと言うよりも・・・今、自分が何をしているのか理解していない。夢の中をふわふわと漂っているかの様な感覚。
まぁ・・・夢っても完全に悪夢なんだけど。
夕食後も呆けていたのでちゃんと風呂に入ったのかも記憶があやふやだ。
呆けてはいても定期的に怒りが感情を支配するので布団に入っても眠りにはつけなかった。
いや、多少は寝れたような気もする。その辺りの記憶もあやふやだ。
翌朝。
「おはようございます」
「あ、おはようございます」
家を出ると既に豊田さんが停車させた車の前で待機していた。
「昨夜はあまり眠れませんでしたか?」
「あー、分かります?」
「なんとなくですが」
眠れたのか眠れなかったのかは分からないが・・・寝なければいけない時間帯は一切眠くならず、そろそろ起きる時間辺りから眠くなり始め。準備を進めなければいけない時間くらいに眠気のピークを迎えるヤツになっていたので・・・眠気のピークは過ぎたが酷い顔をしていると思う。
後部座席に乗り込み、心地よい揺れに身を任せていると知らない間に眠りに落ちていた。
「佐々木様。到着致しました」
「んあっ・・・あ、あれ?寝てました?」
「はい。グッスリと」
スマホの時計を見ると家を出てから2時間くらい経過している。
車なら1時間も掛からない距離のはずだが・・・。
「混んでおりましたので。多少、時間が掛かってしまいました」
あー、なるほど。
遠回りしてくれたのか・・・。
「ありがとうございます」
「いえいえ、それではお気をつけて」
「はい。いってきます」
本田さん達と合流し、2次転職に向けてダンジョンへと向かう。
「あ、そういえば」
「どうしました?」
「由良さんって去年には2次転職してたんですよね?」
「してましたよー」
「でも、まだ3次転はしてないんですよね?」
「あー、僕は契約的にレベル上げれないんですよね」
「え?そうなんですか?」
何かしらDDの深い闇な部分でも見えて来るのだろうか・・・。