10話 違いが分かる男
「上がりました」
「やっぱりそのレベル帯だとサクサク上がりますね」
順調にレベルは上がり気づけばLv.14になっていた。
「ステは振らない方が良いですよね?」
「まぁ、そうだね。佐々木さんの職の特性が不明だから」
一般人から冒険者に覚醒すると冒険者という職業の他にもステータスやスキル等の能力にも目覚める。
ステータスは体力・力・知力・敏捷の4種類。レベルが上がる毎にステータスポイントが4付与され、自分でポイントを上げる事が出来る。
体力はHPや防御力。力はそこまま攻撃力。知力はMPと魔法職の攻撃力。敏捷は回避や速度。
ただ、速度はちょっと特殊でアーチャーやシーフ等の速度職の攻撃力にも影響する。ただし、攻撃速度がカンストしてから攻撃力が上がり始めるというめんどくさい仕様だったりする。
1度振ってしまうとやり直しは出来ない。
なので中々実験も出来ず判明していない事はまだまだ沢山ある。
「ま、護衛対象だから体力に振って死ぬ確率を下げてくれた方が僕たちとしては助かるんですけどね」
「由良」
「あ、すみません」
「佐々木さんは今のところ体力極ですよね?」
「はい、そうです」
1次職に転職するまでは体力全振りが推奨されている。
どの職業でもHPが高くて困る事は無い。
体も丈夫になるし、病気にもなりにくくなったり寿命が伸びたり若返るって噂まである。
「体力37です」
「余りのステは16ですね?」
「はい」
1次転職してからのステータスポイントは保留状態のまま放置してある。
「僕は体力に振らされたんですよね」
「由良ぁ」
「だってー、僕の時よりも全然待遇良いから羨ましくてー」
「しゃーないだろ」
「時代だ時代」
「いやいや、僕が1次転したの去年ですからね?」
「ま、年々、良くなってってんじゃね?」
と、最初の頃よりも皆の素が見え隠れしだしてきた。
ちなみに、俺の華麗な狩りがどんな感じかと言うと。
PTリーダーでタンクの本田さんがコボルトの首根っこを抑える。そして、身動き出来ないコボルトを俺がボウガンで撃つ。
オークが出た場合は前衛アタッカーで剣士の松田さんが一方的にボコる。そして、いい感じに弱らせた所を本田さんが抑えつけて俺が撃つ。
そんな感じのおんぶに抱っこにお姫様抱っこの足手まといが俺だっ。
「由良さんの時もこんな感じでレベル上げしたんですか?」
「え?僕の時?」
「はい」
「んー・・・」
「佐々木さんと由良は全然違うんですよ」
「あー・・・まぁ、そりゃ、紫電とひきこも・・・」
「いやいやいや、そうじゃなくて・・・」
「佐々木さんと由良君の共通点は希少職って事くらいで実は全然違うんですよ」
口数少なめな高橋さんに依ると。
俺の場合、1次職から謎の職業だった。
由良さんの1次は魔法使いで普通だったけど2次で希少職へと転職をした。
由良さんの場合というよりも大抵の場合2次から希少職になる。
それだけ俺のひきこもりが特殊だという事らしい。
「でも、今の所・・・希少ってだけで良い所は見つかってないですよね」
「ま、まぁ・・・そうですね・・・いや、きっと大器晩成型だから気を落とさないでっ」
「僕の予想はハズれちゃったんですよね」
「予想?」
「いやぁ、変わった職だからステータスポイントが普通より多いとかそんなんじゃないかなー?って」
「あ、それは俺も思った」
それを皮切りに皆の予想大会が始まったが・・・。
「まぁ、今の所・・・スキルも無ければステも普通。Lv.14冒険者って感じなんですよね・・・」
「いやいやいや、これからだって・・・」
と、どんどんネガティブになっていっていた。
「きょ、今日のところはこれくらいにしておきましょうか」
ダンジョンを後にし、DD本部へと戻ってきた。
「お疲れ様でした。お怪我はございませんか?」
「大丈夫です」
「早速ですが聴取を始めさせて頂きますね」
「はい」
別室では本田さん達が報告書の作成をおこなっているらしい。
俺にはそんな事は出来ないので山本さんに聞き取りをして貰って報告書の作成もして貰う。
「はい。お疲れ様でした」
「はい」
「お見送りは出来ませんが下に車を待たせてありますので」
「あ、はい。お疲れ様でした」
「お気をつけて」
今日も豊田さんの送迎で帰途に着く。
「おかえり~」
「あ、うん。ただいま」
「石橋君のお母さんから聞いたんだけどね」
「えー、うん、なに?」
「皆でまた何かやるみたいよ?謝ったの?謝るなら早く謝らないとタイミング逃すわよ?」
「あー、うん、大丈夫だから」
「アンタはまたそうやってぇ」
「あー、もぅ、大丈夫だからー。ご飯出来たら呼んで」
「はぁい」
アイツらが何かやるみたいだけど。正直、俺は今それどころじゃない。
というか、何かってPT組んでダンジョン行くしか無いだろ。普通に考えて。
「はぁ・・・疲れた・・・」
ベッドに横になりソシャゲのデイリー消化をしていたが、疲労から来る眠気に抗えず瞼をそっと閉じた。