プロローグ
――その塔が出現したのは遥か昔。人々が、数多の種族が、それぞれの生を謳歌していた時だった。
それは突然だった。数秒の地鳴りと共に地を突き破って現れた超建造物。その塔が現れた衝撃で犠牲になった人々。もともとその地に建っていた建物は崩壊し吹き飛んだ。
塔の周辺はひどい有様になった。人々の阿鼻叫喚。瓦礫の山と死体の数々。怒りと悲しみの感情も束の間。
塔の中から魔の物があふれ出てきたのだ。大小の夥しい数の魔の物たち。
混乱の最中の人々を蹂躙した。食われ、殺され、犯される。そこはまさにこの世の地獄と化した。
――だがいつまでもいいようにやられる人間たちではなかった。
怒りと悲しみの矛先を魔の物に向け、反撃を開始した。
人族はその圧倒的な数と連携力で魔物たちを押し返した。人族を率いた者は後に【勇者】と呼ばれた。
獣人族は魔の物にも劣らないその身体能力で数の差を埋めた。獣族を率いた者は後に【獣王】と呼ばれた。
妖人族はその身に宿す膨大な魔力を存分に扱い、様々な魔法で魔の物たちを破壊した。妖人族を率いた者は後に【妖王】と呼ばれた。
小人族は一族に伝わる秘伝の療術を惜しみなく人間たちに施し支援した。その当時の小人族を率いていた者は後に【聖女】と呼ばれた。
地人族はその戦に必要な武具を作った。魔を切り裂く武器。多少の攻撃をものともしない防具。地人族の職人たちを率いた者は後に【地帝】と呼ばれた。
【魔塔大戦第一巻】序章より抜粋