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アルレスとノアル

書けなかった事第一弾

アルレス編


何度も何度も同じ時間を繰り返して、大切だったミルフィリアを断罪していた時間がようやく終わり、俺は騎士として働き始めた。


騎士団長は、実力がない奴は騎士団に上がってくるな、と言ってたから騎士団に入れた俺の実力は確かなんだろう。


よく怪我をする俺を呆れたような顔で治療してくれるユーリアとの婚約も整い、やっと過去を忘れ、前を向けるようになったある日。


「アルレス、ノアルが不機嫌なのよ」


ミルフィリアが困った顔で俺を見る。


「第二子がいるから乗って空を飛ぶ事は無理だって兄上も言ってたろ」

「でも……」


一見穏やかに見えるノアルだが、流石グリフォン。気性の荒い魔獣だ。

兄上やミルフィリア以外がその背に乗ろうとすれば、容赦なく落とす。


「兄上の外遊が終わってからじゃ……駄目なんだな」


キェ〜と、物凄く不機嫌そうなノアルの声に頭を抱えた。


「俺、乗った事ないぞ」

「アルレスなら大丈夫よ。きっとノアルも気に入るわ」


何を根拠に言うのか疑問だが、俺達はノアルの小屋に向かった。

既に成獣となったノアルの姿はかなり大きいうえ、鍛えているのか筋肉がすごい。


「ミルフィリア王太子妃から頼まれてきた。ノアル、空に行くか?」


不機嫌そうな目でアルレスを見たが、ノアルはあっさりと背中に乗りやすいよう翼を下げた。


『あんた、騎獣が上手いな。ミー姉様が言ってた通りだ』


ノアルの心話に驚きながら、聞きなれない単語に首を傾げた。


「ミー姉様?王太子妃殿下の事か?」

『あんた、家族に対しても敬語?堅すぎるよ。だから、ミー姉様が不安になるんだ』


過去を繰り返さないため、戒めで彼女をけっして名前で呼ばない様にしていたが、不安にさせるつもりはない。


「ミルフィリア、と呼ぶと兄上がなぁ」


かなり独占欲が強く、嫉妬深い兄上。

今更呼び名を変えるのも、勇気がいる。


『俺のマネしたって言えば、ゼウリスは怒らないぜ』


ノアルがケラケラ笑う。

あの過去はもうどこにも無い。ならば、俺も気にする事ない筈だ。


「そうだな。戻ったらミー姉様って呼んでみるよ」


絶対、兄上に殴られるだろうが、過去の蟠りはもう埋めてやる。

俺達が空で笑い転げてから帰還し、ミルフィリアに新しい呼び名で声を掛けると彼女は本当に綺麗な笑顔で頷いた。


その後、兄上に殴られなかったが


「遅いんだよ」


と、笑われたのもいい思い出だ。

次は誰にしよう

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