数年後となった現実。
本編はこれで最終話です。
数年後
王太子となったゼウリスのエスコートを受けながらミルフィリアが大きくなったお腹に大事そうに手を当て、ゆっくりとソファに腰を下ろした。
「お久しぶりです。ユーリア様」
正式に聖女となったユーリアとの対面は半年振りくらいだ。
「お久しぶりでございます。王太子妃殿下。体調いかがですか?」
堅苦しい口調につい2人とも笑ってしまった。
「公の場では公私を弁えなければなりませんが……」
「難しいわ。それよりユーリア、結婚すると聞きましたわ。おめでとう」
聖女であるユーリアの結婚は教会内でも物議を醸し出したが、聖属性の魔力を持った女子が結婚しないで教会に尽くすのはおかしい、とゼウリスだけでなくクロイヤス王も働き掛け、改善された。
「まさかアルレスと結婚するとは思わなかったよ」
騎士団の重鎮になりつつあるアルレスとの結婚にゼウリスも驚いた。
ユーリアは小さく微笑み、小箱をゼウリスに渡した。
「もう、これはゼウリス様に渡すべきだ、とアルレス様が仰っていました」
中身は見なくてもわかる。
それぞれが、それぞれの道を歩み始めたのだから、過去は思い出にすれば良い。
「それは何ですの?」
ミルフィリアが不思議そうにゼウリスを見る。
「これは、アルレスの御守りだったものだ。きっと、生まれてくる私達の子供のために渡してくれたんだよ」
ゼウリスの優しい言葉にミルフィリアは頷いた。
悲しい出来事はあのパーティーの日に終わった。
「お幸せに」
「はい。幸せになる努力をしますわ」
忙しい日々の中、あの日から皆自分の道を歩み始めている。
3人は頷き合い、明るい表情で近況を話し合った。
もう、理不尽な幸せを押し付ける者は居ない。
書ききれなかった後日談をもう少し書きたいので、お付き合いいただければ幸いです。




