それは幸せなのだろうか
書いてて、こいつの精神病んでる、と思った。
笑顔に囲まれ、誰もがミルフィリアと話す事を望んでいる。
独りぼっちで、何をしても誰も振り向いてくれない自分の立場が悔しくて、爪がボロボロになってしまっても噛む事をやめられない。
ゲームや今までの世界では、自分があそこに居たのに。
チヤホヤして、と目で訴えれば皆褒めてくれたし、好きだと言ってよと願えばアルレス達やモブ令息達が好きだと言ってくれた。
ゲームの終盤でもあるこの時間帯では、ヒロインである自分を中心にした世界が広がっていたはずなのに。
「あんたねー」
ミルフィリアが1人で裏庭を歩いていたら、突然エリスが怒鳴りつけた。
ミルフィリアは優雅に会釈をし、足を止めてエリスを見るが、声を掛けない。
「あんたがバグだって知ってんのよ」
エリスが何を言いたいのかまるで理解は出来ないが、ミルフィリアはそれでも静かにエリスを見ている。
「なに、お高く止まってんのよ。シナリオが崩れるから、さっさと消えなさいよ」
唾を飛ばし叫ぶ姿は、淑女とは思えないほど無様だが、それを忠告する義務は無い。
だが、いい加減無作法なエリスの前に立っているのも気分が滅入りそうなので、どうしようか?と思っている所に
「トーラス侯爵令嬢様、大丈夫ですか?」
と、叫ぶ声とトマトが飛んで来た。
「トーラス侯爵令嬢を此方に」
突然の事にミルフィリアが目を丸くして振り返ると、バーニスと婚約者のリリアンがトマトを抱えて走ってきた。
「バーニス・ロウ子爵令息にリリアン・マルケ男爵令嬢」
学年は違うが、仲のいい2人のことはミルフィリアの耳にも入っている。
「良かったです。お怪我は?」
「大丈夫です」
リリアンが心配そうにミルフィリアを見てから、無事を確認してホッと息を吐いた。
2人はあっという間にミルフィリアをエリスから遠ざけ、2人の背後に立つバーニスはトマトを持って威嚇していた。
ミルフィリアはすぐにリリアンに庇われ見ていなかったが、バーニスは走りながらトマトを見事にエリスへ命中させており、顔や制服がトマトまみれになっていた。
何故トマトかと言うと、投げやすそうだからです。




