やっと見つけたやりたい事。
アドンとノドスの苦労も、考えると落ち込みそう。
「何故無視をしろ、と言ったのに」
「すみませんアルレス殿下。何というか、言いたい事が言える、とわかった途端歯止めが利かなくなりまして」
インテリのアドンがそう言えば、ノドスも頷いた。
「接点なんか持ちたく無いですが、アイツに対して罵声を浴びせても体が硬直しないって分かったら……」
過去では、この2人やバーニスはエリスの言いなりだった。
口汚くミルフィリアを罵倒し、侮蔑の目を向けていたが、どうやら彼らも自分と同じく操られていた可能性がある。
「それにアイツ、事あるごとに僕に『本当は宰相の息子』なんだから、とか言って。父の愚かな行為を恥じている僕は、腹が立って仕方ない」
アドンは部下の手柄を横取りしていた父親を軽蔑し、自分は文官では無く歴史学者になる事を目標にして学園で頑張っている。
「俺にも『本当は騎士様なんだから』とか言って。殿下の護衛官であるオスカーに模擬試合で負けた後、もっかい自分の事考えて、やっとやりたい事が見つかったのに」
ノドスは、オスカーに模擬試合で負けた後、兵団を辞め、学園の下働きをしながら馬の飼育員の資格を取る勉強をしている。
元々馬が好きだったし、騎士よりもやり甲斐がある仕事に就くため努力をしている事は、アルレスも知っていた。
「やっと、自分らしく生きて行ける様になった気がするんです」
此処に居ないバーニスなど、婿候補者であったのが完全に婿養子となる事が決まり、結婚して入る男爵家の領地で、領民達と農地改良を始め、学園で農業の勉強をしていた。
婚約者とも仲は良好で、既におしどり夫婦だと噂されるほどだ。
「……君達が本当にやりたい事を見つけたのだから、その為の努力に全力を注げ」
アルレスの言葉に、2人はしっかりと頷いた。
「でも、なんでアイツは俺達に傀儡の魔術を掛けてんですかね?」
ノドスの疑問に、アルレスは少し考えてから
「……君達の顔が、好みだったからじゃないのか?」
と、答えると2人とも物凄く嫌そうな顔をした。
アドンとノドスの過去の分岐点が書けたら良いな。




