役立たずの言い訳
そりゃ小山ほどの怪物が来たら怖いけど……。
「なに、あれは何なの。ゲームじゃあんな化け物出てこなかったわ」
ベヒーモスの恐ろしい姿に腰を抜かしたエリスは、誰よりも早く安全な場所に逃げ、ガタガタ震えていた。
「エリス・ガストン。そんな所で何をしているの。聖属性の魔法が使える者は怪我人の手当てに行くのが役目の筈よ」
ユーリアや他の聖属性の魔法が使える者達が、呆れた顔でエリスを見ていた。
「こっちにだって怪我人、居るんだから良いでしょ」
逃げた事を指摘され、腹を立てたが、ふん、と馬鹿にされた。
「なんで貴女みたいな怠け者が聖属性の魔法を使えるのか疑問ですわ」
候補生の1人が口を開けば、ユーリアが冷ややかな目でエリスを見据え、ふぅ、とため息を吐いた。
「此処で話をしていても、意味はありません。私達は怪我人の手当てに行きましょう。聖女アリアンナ様もじきに到着されるようですから」
ユーリアは、役立たずは切り捨てて、職務を全うする事を優先した。
「聖女……聖女の杖さえあれば、怪我人なんか全員、私1人で治せるわ」
エリスの妄言にユーリアは鼻で笑った。
「おめでたい人ね。聖女の杖は、謂わば権威の象徴のような物。おとぎ話に出てくるような、力なんてないわ」
「あんたみたいな半端な力じゃ使えないだけよ。アタシなら、怪我なんて、ちゃっちゃと治せるのよ」
エリスの妄言はユーリア達からしたら、ただの妄想に過ぎない。
否定しようとした時
「面白い事を言うのね。ならば使ってみたら?」
と、アリアンナの声がした。
書いててコイツは駄目だ、と思ってしまった。




