密かな会話
巻き戻したら過去を変えるための手はうちます。
「閣下、少しお待ちを」
メイドのサラが、聖女の杖を持って跪いた。
「なんだ」
「精霊様が嘆いてます」
サラはメイドではあるが、一族の1人である為、彼女も強い魔力を持つ。
「杖に宿る精霊様が、お嬢様の死を嘆いてます」
「杖の精霊殿は全てを知っているのだな」
「はい。とても深く嘆いてます」
精霊の声が聞こえる彼女は、泣きながら精霊の声を伝えた。
『何故、私欲に使われなければならないの?私は民の痛みや苦しみを和らげる為に力を貸しているのに』
精霊の深い嘆きと言い表せない怒りを感じ、オルセウスは問い掛けた。
「杖の精霊殿、我らに力を貸してくれ。無実の娘を助ける為、時を巻き戻したいのだ」
『……貸しましょう。貴方の娘が無実である事は、私が1番知っている』
「有難い。10年時を巻き戻し、あいつらの欲望を全て潰してやる」
『ならば、もし私があの女の手に渡ったら油断させる為、力を最初のひと月だけあの女に貸し、それ以降は沈黙を守りましょう』
あの女が聖女として迎えられるのは、ミルフィリアが処刑される一年前。
それまでは、心正しい聖女様が居る。
「あの方も、ミルフィリアが処刑される一年前にご病気で……。お救いしよう。同じ未来を引き寄せない為にも」
『なんて素晴らしい。では、トーラスの秘術を……。貴方の力を高め、こんな世界、来ぬように全てを塗り替えましょう』
精霊の力を借り、オルセウス達は領地に戻りミルフィリア達を救う為、10年分の記憶と共に時を巻き戻した。
その間、王都で騒ぎがあったようだが、オルセウス達にとっては関係の無い騒ぎだった。
お父様、頑張ります。