時を巻き戻す
重い始まり方になりますが、これから頑張って更新していきます。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
血を吐く様な声に、周りの者達は唇を噛む。
多少我儘だったが、人を虐げたり蔑んだりしたことがない彼女、ミルフィリアが、聖女を殺そうとするなんてあり得ない。
だが、ミルフィリアの婚約者であった、第二王子は彼女を魔女と罵り、法廷に立たせる事もなく絞首刑にした。
刑場から引き取った亡骸を前に、彼女の父、オルセウスは滂沱の涙を流し、家族や家臣達は項垂れている。
「旦那様。一族の秘術で彼女を、ミルフィリアを取り戻しましょう。まだ間に合います」
失意のどん底に居る夫に、妻、ローレルは禁呪である一族の秘術を使おう、と言った。
時の神クロノスの血を引くトーラス侯爵家は強い魔力を持つ。
王家にも知られていない秘術の中に、時を戻す秘術がある。
「そして、あの憎い奴らに鉄槌を……」
愛らしかった娘の痩せてボロボロになった髪や頬を撫で、ローレルは憎い奴らが住む王城を睨んだ。
時を巻き戻す秘術は、トーラス侯爵家の直系だけが使える秘術。
現段階で使えるのはオルセウスだけ。
しかも一度切りの術。
代償も大きいが、オルセウスは迷う事なく頷いた。
「閣下、聖女の杖を持って参ります」
家臣の1人が素早く跪いた。
「聖女の杖?何の役に立つ?」
「あれは術者の力を増幅させる物、と聞いた事があります」
嫌な仮説が皆の頭をよぎった。
「あの女、もしかすると……」
「今はあの女の事よりミルフィリアを優先しましょう」
ローレルの苦しげな声に、オルセウスは頷いた。
家臣は、教会の秘宝である聖女の杖をあっという間に持ってきて、オルセウスに渡した。
「私は、ミルフィリア様に命を救われました。この御恩を返す為ならこの命、惜しくありません」
突然、血を吐き、倒れる家臣はそのまま息を引き取った。
「ミルフィリアの為に……。オスカー、お前も、ミルフィリアと共に助けるぞ」
オルセウス達はミルフィリアの亡骸と家臣を魔法陣の中に寝かせた。
話の重さにちょっと潰れかけてましたが、やっと始められました。