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9/10

第9/10話 ジルが目の前に現れる。ワックスの秘密

「ひゃっ!」つっ冷た!


やばっ声出しちゃった。慌てて手で口を塞ぐ。

てか、何??? 今なぜか体が一瞬便座から浮いて、すぐまた着地したと思ったら便座が冷たかったのだ。何が起こ…


!!!!????


今気づいた。

目の前に誰か立ってる…?! 僕の目に映るのは、黒のローファー、靴下、スラッとした素脚に、紺のプリーツスカート……


僕は恐る恐るうつむけていた顔を上げてみる…。スカートの上は、予想通り制服の半袖シャツと首元のリボンで、その上にあるのは……



ジルの顔だった。




終わった…。僕の高校生活もここまでか…



「ご、ごめんなさい…」情けないけど、今の状況で発するにふさわしい言葉を僕の脳が必死に検索した結果 ヒットしたのはこの言葉だけだった。


「パラ、テレパシー使える? ここ女子トイレだから、あまり声出さない方がいいと思うの」

「え゛っ!? 女子トイレ!?」

「シッ! 大きな声出さないで」

「ご、ごめんなさい…」

「で、テレパシー使える?」

「うん」


テレパシーはお互いの魔法域を共有し、心の中でしゃべった声を送受信する心体操作魔法。心の中で考えたことが全部相手に伝わってしまうわけじゃない。送信した心の声だけが相手に届く。魔法域が電話線の、電話みたいなもの。…ってこの前 心体操作魔法実習基礎 で習った。


やり方は…お互いに魔法域を展開し、自分と相手をすっぽり覆うサイズまで広げる。次に魔眼まがん発動。


「シンクロ」2人とも小声で言う。シンクロの印 + 発語でお互いの魔法域の縁を完全に重ね合わせる。魔法域のシンクロが完了したかどうかを魔眼まがんで目視確認する。



挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



「フォン」シンクロが完了したら、次にフォンの印 + 発語。すると魔法域が縮んで変形していって、術者の間を電話線で繋ぐような形になる。同時に、自分の心の声を送信できる 送信ボタン 生成(送信用ボタンが付いててちゃんと送信できれば、あとはどんな形でもok)。これでテレパシーが可能になる。



挿絵(By みてみん)



(…私の柔道着をオカズにしようとしてた?)

(ご、ごごごごごめんなさい…!!)僕は大慌てでトランクスとズボンを引っ張り上げた。

(ぷっ…顔まっ赤だよ笑)

(いや、そりゃ、だってその…)さらに赤くなっているのではないか。恥ずかしすぎて顔が沸騰しそう

(くくくっ、あははははっ!!)

(…そんな笑わなくても…。てかなんで僕ここにいんの? ジルは僕の計画知ってたの!? どやって知った?!)

(あー待って待って。そんな一気に聞かれても答えられないよ)

(あ、ゴメン…ちょっとわけがわからなすぎて)

(まぁ、無理もないね。…えっとね、私はパラの計画知ってたよ)

(!?!?!?)

(くっふっふ…パラ、君って表情豊かでおもしろいね…)笑いを堪えるジル。かわいい

(ほっといてくれ。…でも一体どこで…? 僕はワックスにしか話してないし…)

(ピンポーン! ワックスのおかげで知ったのでした)

(えぇ!? ワックスってジルと仲良かったの?! あいつ…!)嘘ついてやがったのか!! ワックスに怒りが込み上げてくる

(いや、別に仲良くはないかな)

(え、あっそうなの…)

(一緒に住んでるだけだよ)

(あっそうなんだ、一緒に住んで…え゛ぇ゛っ!? 一緒に住んでんの!? 姉弟きょうだいなの??)

(いや姉弟きょうだいじゃないよ)

(じゃあなんなのさ!! 全然わかんないんだけど)

(まぁまぁ落ち着いてよ)

(落ち着けるか。あっわかった、親戚でワケあってジルんちに居候中なんだな)

(ブーッ! ハズレ。…彼はね、人形なの)

(…人形??)

(フフッ、だから顔で私を笑わせるのやめてってば)ちくしょう笑うジルがかわいい

(ノーリアクションで聞けるような話じゃないぜコレ)

(ごめんごめん。パラ、マ・ドールって知ってる?)

(マ・ドール? 知らない)

(カンタンに言うと、魔力を込めれば心を持って自律行動する人形。あとで検索してみて)

(へー……ワックスがマ・ドール?)

(そう)

(えー? でも人にしか見えないよ? 高校生にしては老けてるけどさ)

(ぐっ…見た目作るの失敗したんだよ…。次はもっと上手くやる)

(見た目も自分で決めれるのか。難しんだな)

(や、私は造形とか絵描くのとかが得意じゃなくて…)

(え? じゃあ何で美術選択に…)

(少しでもマシになりたかったから)

(…努力家だ)

(ありがと。話戻すよ。私はマ・ドールをレンタルする人材会社を作ってみたいの。それで学校に特別に許可をもらってマ・ドールを扱う練習さしてもらってるのよ)

(へー! いいね! そうだったんだ)

(いいだろいいだろ? でね、ワックスはパラの計画のこと一切言わなかったよ。私が彼のメモリーを読み取った時に知ったの)ジルの「いいだろ?」好きだわ〜

(なるほど。それで阻止するために…)

(違う)



急に語気が強くなり、顔からも優しさが消えるジル



(えっ…?)

(私はパラの本心を確かめたかったから、授業抜け出して ここであんたを転送魔法で呼び寄せたの)

(僕の本心…? 待てよ、転送魔法って…何で僕の居場所が…?)

(自分の靴、見てみて)

(? ……あぁっ! いつの間に!? )僕の右の靴、足首の内側あたりに魔発信器の凹コインがくっついてる!(しかも瞬着で…)

(ごめんね、絶対取れないようにしたかったから)……許す

(でも、こんなこといつやったの?)

(多分1限か3限の時)

(多分?)

(君の後ろの席のミロに、魔発信機と瞬着渡して、3限終わるまでにお願いって頼んだだけだから、いつやってくれたかまではわからないよ)



! ミロか。後ろの席だったら魔眼まがん魔手ましゅ使えばできるな。全然気づかなかった。ん、待てよ



(魔法許可証は?)あれがないと学校の魔法無効化結界の中では魔法が使えない

(私のをコピーしたのを渡した)

(ジルもコピー魔法できるのか…)

(いやいや、コピーしてくれたのはワックスだよ。あのコ具現化系のセンスあるからね)

(!)

(私はさっき言った通り、造形とか苦手だからさ)

(…ワックスが「コネで魔法許可証持ってる」って言ってたのは、ジルのマ・ドールだから…?)

(当たり。マ・ドールは常に術者の魔力を供給してあげないと止まっちゃうんだよね。だから学校から特別に許可証2つ借りてて、学校のどこにいても私の魔力があのコに届くようにしてあるの)

(ワックスにも魔発信器持たせてんの?)

(んー、逆かな)

(逆? じゃあワックスは自分でジルから魔力を吸い取ってるの?)

(おー、当たり。パラは賢いな。マ・ドールは魔力吸収魔法が最初から使えるの。セカンド・コアって名前の魔発信器みたいなのを私が持っていて、マ・ドールはそれで術者の居所がわかり、常に魔力を吸収できるんだよ)

(へえぇ…。てことは…もしかしてスポーツとか体動かす系の時、魔力不足になったりする?)

(! する。君は探偵か)

(いやぁ)


柔選の時にワックスがよく止まってジルの方を向きボーッとしてたのは、気になってるからじゃなくてエネルギー不足でジルから魔力を吸収してたからだったのか。「俺はジルのことそういう風には思ってないよ」は本当だったんだね。さっきあいつに怒ってしまったのを反省。


(あれ、でもワックス普通に昼 食堂で食べてるけど)

(あれは演技だよ。人間ぽく振る舞うための)

(そうなんだ)



沈黙が流れる。謎だった部分が明らかになり、僕は落ち着きを取り戻していた。



(さぁ、種明かしはもう十分でしょ。転送魔法使うのに苦戦しちゃって、時間押してるんだから)多分ターゲットネットの生成に苦戦したんだな

(あの…僕の本心を確かめたい、っていうのは…?)

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