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8/10

第8/10話 決戦の水曜日、4限。ジルの手提げ袋を転送せよ

キーンコーンカーンコーン…

「じゃ来週から前期試験始まるから、今日振り返ったとこはよく復習しとくように」


3限が終わった。

いよいよ計画実行の4限だ。芸術選択の教室は全て本館隣の副館にある。本館と副館の間には2Fに連絡通路がついているので、みんなそこを通って各々の芸術選択教室へいく。ちなみに本館2Fに1年生、3Fに2年生、4Fに3年生の教室があって、副館1Fに柔道場があるよ。…誰に言ってるのか僕は。書道室は2Fなので、ちょっと移動が楽だね。ちなみにちなみに3F美術室、4F音楽室。


「ねぇージル、さっきの3限のノート、ちょっと見してくんない?」

「え、いいけど…ミロあんたノートとらなかったの?」

「うん!! だってジルのを写した方がわかりやすいんだもん」

「そんな自信満々にうんって言うなよ…」ミロにノートを渡すジル

「サンキュ! これはノートを貸してもらうお礼ね」何かお菓子のようなものを渡すミロ

「こ、これは! フランケンシュタインのホムンクルスブラウニーっ!! …そのノートはあんたにやるよ」

「ジル、喜びすぎ(笑) さすがにそれは悪いから写したら返すよ」

「そ、そっか。いやー逆に悪いなーなんか。でもありがとう」


ミロがジルから離れると、新たにジルに近づく者一人…


「ジル〜、今日放課後空いてない? ちょっと魔場概論の勉強付き合って欲しいんだけど〜」

「えー? …うーん、じゃあ3時までならいいよ」

「やった! ありがとジル〜。勉強付き合ってもらうお礼と言ってはなんですが…」うやうやしく何かを両手で差し出す

「こ、こここここれは…!! トンチキ亭のラムレーズンサンドッッ!!! 今日は部活行くのやめてあんたの勉強徹底的に付き合うよっ」

「ジル興奮しすぎ〜。そこまでジルの時間奪っちゃ悪いよ。3時までで十分だから」

「そ、そう? で、でもマメロン、ほんとにこれもらっていいの…?」

「いいよ〜。お父さんが出張土産で買ってきたやつだから」

「ありがとう! マメロンのお父さんにもお礼伝えといて!!」

「はいよ〜」


…試験前のジルは引っ張りダコだな。甘い物にめちゃ弱いんだな…。知らなかった。…超かわいいな。


ちなみにジルは書道選択じゃない。美術選択じゃなかったっけ? まぁともかく、教室でボーッとしていたらもう5分以上経ってた。早く書道室へ移動せねば。



4限が始まった。

今日は自分の好きな熟語を何か一つ決めて練習して、授業が終わるまでに自信作を一枚提出するという課題だった。「変態」をカッコよく書にしてみたいと考えたが、今後の学校生活のことを思うと踏み止まった。「邪王炎殺」にしようかな。


「パラ、黒龍波は書かないのか?」珍しく隣の席の男子が僕に話し掛けてきた

「うん…それだとちょっと長くて、バランス考えんの難しそうだったから」

「てかパラってマンガも読むんだな。俺てっきり小説とかしか読まないのかと思ってた」

「興味あるマンガだけだけど、読むよ」

「ユーハク、面白いよな。だいぶ前に読んだから話あんまし覚えてないけど」

「うん、面白い。ケンカってそんなに悪いものじゃないんだなって、考え方変わったよ」

「ハハッ! パラはケンカしなさそうなナリしてるもんな。…よし決めた、俺が黒龍波書くわ」

「えっ、オルファ…中二病患ってないか心配されちゃうかもよ…」

「何の心配してんだよ(笑) 言っとくけど俺はお前よりコミュ力あるから そういう風にはならないと思うぞ」

「…そっか。じゃあ僕もカッコイイ邪王炎殺書けるように、今からがんばるわ」

「おう、俺もカッコイイ黒龍波書くから、見てろよ」


オルファってけっこう話しやすいな。今まで全然気付かなかった。こんなに話したの初めてだし。嬉しい発見だ。そして気付けばもう授業が始まって10分ほど経っていた。あと40分…。もう動き出さねば。


僕は席を立ち、教壇にいる先生の所へ行って、「お腹が痛いのでトイレに行ってきます」と伝え、書道室を出た。



…出てしまった。ほんとはお腹なんて痛くないのに。早くも罪悪感が湧いてくる。何をしているんだ自分は。今後の学校生活のことを考えて、踏み止まっても良かったんじゃないか? そんなモヤモヤした思いが心の中を巡りながらも、僕の足は最寄りの男子トイレへと着実に歩を進める。男子トイレの入り口の戸を開ける。4つの個室の扉は全て空いており、トイレには誰もいない。なんとなく一番奥の個室に入り扉を閉め、洋式便座に腰掛ける。……うーむ、来てしまった…


今みんなは授業を受けてるというのに、僕は嘘をついてトイレにいる。いじめっ子に呼び出されて、とかでもなく自分の意思で。今までこんなことしたことない。真面目な生徒だったな。気分が落ち着かないが、待ってても落ち着くものでもないだろう。やろう。



ズボンのポケットから魔発信器の凸コインを2つ取り出す。

…しまった、どっちが手提げ袋に入れたやつだっけ。…落ち着け、見ればわかる。2つの凸コインの内、1つの円の真ん中にある突起を1回カチッっと音がするまで押す。これでジルの手提げ袋の中のやつか、机の引き出しの裏にあるやつか、どちらかの凹コインで僕の魔法域が展開された。


ここで自分の両目眼球を覆うように、球状の魔法域を2つ展開する。魔眼まがん(自分が展開した魔法域の中が、離れた場所からでもカメラでモニタリングしてるように見えるようになる。また、他人の魔法域も見えるようになる魔法)発動。…………。これは机の引き出しの裏にくっつけた方だな。凸コインのスイッチをもっかい押してOFFにし、ズボンのポケットにしまう。しまわなかった方の凸コインのスイッチをONにする。魔眼まがんで見ると、うん、こっちが手提げ袋の魔法域だ。魔発信器があると、今みたいにかなり離れた場所での魔法域展開もスムーズに行える(本館2Fの1年1組から副館2Fの男子トイレ間は、数十メートルは離れている)。とても便利な魔道具だ。…離れた場所への魔法域展開は疲れるけどね。


よし、自分の両手にも魔法域展開。網目の印を作ってターゲットネット生成。魔手ましゅ発動して手提げ袋をネットで包む、口を縛る。トイレ個室の自分のモモの上あたりに、手提げ袋を持ってこれるくらいの魔法域を展開。魔手ましゅでネットの包みを掴んで、ジルの机らへんの魔法域から個室トイレの魔法域へ。パッと目の前にジルの手提げ袋が現れた。やった! 転送成功だ! すぐに自分の手で手提げ袋を抱え、魔法域を全て解いた。発信器のスイッチもOFFに。


ふぅーー…疲れた。魔眼まがん魔手ましゅを使って転送魔法をすると、魔法域を6コも展開しなきゃならない。将来転送魔法の仕事やるなら、もっと魔法使う体力つけとかないとな。


さて…

まずはトイレの個室扉に鍵がかかっているか確認する。…かかっている。天井を見てみる。誰かに見られているんじゃないかと妙に不安になる。しかし誰もいない。トイレの中は静かだ。恐る恐る袋の中身を取り出す。うわっ! 既に匂いがする…! うわぁぁ…。一応道着の胸あたりにある刺繍を確認する。「ジル」と刺繍されている。間違いない。


…扉の鍵をもう一度確認する。天井をもう一度見る。大丈夫だ。誰もいない。…ものすごくドキドキする。……ごめんっ! ジル!! 僕は道着を鼻に押し付けた。…ああっする! ジルのいい匂いがする…! すんすんすん……


バッ!!


また天井を見る。…誰もいない。耳を澄ませて男子トイレの静寂を確かめる。もうさっきから心の臓がいつもの倍くらい早鐘を打ってて、気が気じゃない。…か、鍵は…大丈夫、かかってる。


…よ、よし、次は道着の内側だ。すんすんすん……おぉ! 道着の表面よりも匂いがする!…気がする。…でもあの堪らない魅力的な匂いはしないなぁ…。やっぱりあの匂いはジル本体がいないとダメなんだ。…でもそれでもいい、十分幸せだ。道着内側の、胸のあたりや脇のあたりに鼻を押し付けてみる。…なんかとてもいけないことをしてる気分だ。…でもいい匂い…。スゥー…ハー。スゥーー…ハー…


…ハッ!!


いかん、僕の男のシンボルが反応してきてしまっている。どうしよう。…どうする。…ここはやはりやっとくのが吉かな。僕はベルトの前を外し、ズボンとトランクスを下ろした。では…。………!?

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