第5/10話 頼もしい協力者ワックス
「あのさ、ワックスにちょっと相談があるんだけど」
「珍しいな。何だ?」
「前に僕のこと応援するって言ってくれたのを信じての相談なんだけど」
「! おぉ、するとも。デートにでも誘うのか?」
「いや、全然違う…」
僕はワックスに、ジルの柔道着をこっそり盗んで匂いを嗅ぐ計画のことと、その計画のために魔法許可証が要るがどうやって調達するか決まってないことを話した。もしワックスがジルのことを本当に好きとか思ってないなら、反対はしないだろう。アドバイスも何かもらえるかもしれない。………いや、反対するか、一応立派な窃盗罪になるもんな…。…話すんじゃなかったかな、なんで話したんだろ僕…。普通こんなこと相談されたら止めるよな人としてああ何してんだろ自分早くこの場から消えたいワックスから今の話の記憶も消してしまいたいそんな魔法あるのかなくそっやっぱ時間かかってでも一人で調べて動くべきだっ…
「おいパラ、お前顔色悪いぞ。大丈夫か?」
「…へ?」
「保健室行くか?」
「いや、いぃいぃ。それよりも今の話は忘れてくれ。冗談だから。じゃっ」食器を載せたトレーを持って立つ
「おいおい、待て待て、俺が聞いた感じだとお前は本気…」
「いや本気だったとしてもさ、人に相談する類の話じゃなかったなって今思い直した。ごめん悪かった変な話して」トレー返却口に向かって歩き出す
「…貸してやるよ」
「…え? 今なんて言った?」足を止めワックスの方を振り向く。
「まぁちょっと戻ってきて座れ。ちゃんと相談乗るから」
「え、いやでも立派な窃盗だし、そんなことにワックスを巻き込みたくな…」い
「何言ってんの。終わったら返すんだろ? 盗んでねぇじゃん」
「や、そうかもしれないけど、途中でバレたら…」
「途中でバレてほしいの?」
ブンブンッ。僕は首を横に振る。僕はいつの間にか自分でさっき座ってた席に戻ってた。
「お前ならバレずにできるよきっと。部活で転送魔法の練習頑張ってるっぽいし」
「…あ、ありがとう」
「たかが柔道着だろ? バレても退学とかにはならないだろ」
「そ、そうだな」
「真面目そうなお前からそんな話聞かされるなんて、面白そうだから協力してやるよ」ニヤッと笑うワックス
「い、いいのかほんとに…ワックスだってジルのこと好…」きなんじゃ
「だから俺はそういうんじゃないって言ってるだろ? だからさ、貸してやるよ、魔法許可証」
「………えっ?」
なぜ?なんで?どうやって? 聞きたいことがありすぎて何から聞けばいいのかわからなくて、口がフリーズした。それでも僕は何とか言葉を絞り出した。
「…ワックスって何者?」
「お前と同じこの魔法高校の生徒だよ」
「でも魔法許可証は厳重に管理されてるし、必要な時しか貸し出されないだろ?」
「それが…俺は常に携帯することを許可されてるんだな、学校から公式に」!?
「な、なんでっ!?」
「…まぁ、コネってやつかな」
「なんだよコネって。全然わからないよ」
「わからなくていい。俺はお前に魔法許可証を貸す。お前はそれでジルの柔道着を拝借できる。それで十分だろ」
「話を勝手にまとめるなよ。貸してるのバレてめんどくさいことになったりしないの?」
「しない。俺が貸したのをお前が落としたりして誰かに見つかりでもしない限り、それはない」
「僕はそんなヘマしないよ」
「俺もそうだと思ってる。じゃあ話は決まりだな」
「…うん。ありがとう。まさか許可証問題がこんな早く解決するとは思わなかった」
「おう。…でもパラ、ジルのことほんとに好きなら面と向かって言わないと伝わんないぞ。当たり前だけど」
「知ってる。今回はそういうんじゃないから」
「…そうか。じゃあまたやる日決まったら教えてな」
「来週水曜にはやる」
「おk。じゃえーと、渡すのは…」
「2限の柔選授業後、更衣室で頼む」
「わかった。成功を祈ってるよ」
「ありがとう」
僕はワックスと食堂を出、各々自分のクラスの教室へ戻った。
いける。計画が理論上可能になった。
…ジルには悪いが、僕はやるぞ。