第3/10話 ジルの柔道着を盗むための脳内作戦会議
選択体育の授業後に、柔道着を拝借するチャンスはあるか…? 時間割を確認しよう。
学校の時間割(1年1組)
…あった。選択芸術の時間だ。
選択芸術は音楽・美術・書道の中から自分で選ぶ。一体芸術と魔法に何の共通点があるというのか。……柔軟な発想力、だろうか。そういうことにしておく。で、この時間は移動教室だ。みんな音楽室か美術室か書道室のどれかに行くので、1年1組の教室は誰もいなくなる。僕は書道選択で、授業は作品を各々の机で黙々と進めるスタイルなので、抜けやすい。適当な理由をつけて書道室を抜け出そう。
そのまま1年1組の教室に入って、ジルの柔道着を出して嗅いでもいい。手っ取り早い。ばやいけど、もし教室に誰かいたらできないし、誰もいなくてもたまたま教室横の廊下を通った誰かに見られる危険がある。…どこか一人きりになれる場所は……。トイレの個室しか思い付かん。移動距離も短くて済むし、お腹痛くてトイレ籠もってましたって言い訳もできる。よし、トイレ決定。
男子トイレ個室に入ったら? 1年1組ジルの机横にぶら下がってる大きめなトートバッグを自分の手元に転送。そのトートバッグは淡いネイビーの生地で、バッグの横面センターに白色でメーカーのロゴマーク、デフォルメを極めたトナカイらしき絵とメーカー名がローマ字でプリントされている。バッグの口にファスナーなどは無く、いつも白い柔道着がぎゅうっと詰め込まれているのが見える。柔道着はとにかく嵩張る。特に上着が。こいつを学校まで持って来て、また家まで持って帰るのはひと手間かかる。でもおかげで転送魔法の標的が大きくわかりやすい。
転送が成功したら、個室で好きなだけ匂いを嗅いで、再び転送でトートバッグをジルの机横に戻す。何食わぬ顔で書道室に戻る。…完璧だ。
転送魔法部で使ってる魔発信器があれば教室ートイレ間の転送もできる。
…問題は、学校内では魔法許可証がないと魔法が使えないことだ。
放課後部活する時に許可証借りるけど、返さないと絶対バレるしな。どうしよっか、どうやって調達しよう…。困ったな。