第1/10話 高嶺の花子さん、ジルコニア
「ねぇ、パラって物質操作系の部活やってる? この前放課後に物質操作棟でパラ見かけたからさ」
「あ…うん。やってるよ」
「えーすごいじゃん! まだ1年の7月なのに」
「え、そ、そうかな…」
「何か魔法でやりたいこと決まってる感じ?」
「あ、うん…。転送魔法で転送業立ち上げたい」
「へぇー! 転送屋さんか。いいね! いやー意識高いね」
「あ、ありがとう。…もしかしてジル、も物質操作系の部活やってるの?」
「そうだよ! 私は物体遠隔操作魔法部」
「へぇ…。ジルも意識高いじゃん」
「いやーそうかな? それほどでも(笑) パラとはブッソー魔法の話で盛り上がれそうだね」
「そうだね(照れ)」
「ジル、魔法数学 教えてくれるって約束忘れてない? 今日小テストだし頼むよ〜」
「あっごめんごめん! 今行くー。パラ、また話そねー」
「あ、うん…」
どういう育ち方をしたら、あんな誰とでも気さくに話せる性格になるんだろう。おまけに勉強もできる。運動もできる。しかもかわいい。AV女優で言うと奏○かのんに似ていると思う。目は二重でまるっと大きくて、ニコッと笑うと小さく笑窪ができる。顔の形は丸に近く、ほっぺたが少し膨らみあるように見える。髪は黒っぽいけどちょっと茶色に染めてあって、胸の辺りまで伸ばしてる。直毛、なのかな、普段は髪はストンと下ろしてあることが多い気がする。体型は太っても痩せてもなく、健康的な肉つきだと思う。
今は夏なので、女子は制服の半袖白シャツ + 首元に付けるリボン(紺色と淡い水色がメインのストライプ柄) + 紺のプリーツスカートという装いが主流だ。実はうちの高校は女子もスラックス、つまり男子と同じパンツスタイルを選ぶことができる。ただ、スラックス女子は少数派だ。暑いのかな。てゆか僕も穿いていいならスカート穿きたいわ、涼しそうだし。あとあれだ、スカートの方が圧倒的にかわいい。圧倒的に。
ジルもスカートスタイルで、丈は膝上10㎝くらいだろうか。ちょっと普通より短いかなって感じ。ソックスは濃紺の無地ので足首より少し上まであるやつで、黒のローファーを履いている。
…休み時間に女子の観察を細かくしている僕はヘンタイと呼ぶに値する。しかも例えにAV女優を持ってくるあたり、付け焼き刃のヘンタイじゃない。…いや、逆に16歳で異性に興味があるというのは健全なのかもしれない。そういうことにしておく。
僕はクラスの中で目立つ方じゃなく、休み時間に読書するのが落ち着く根暗めな人間だ。かと言って他のクラスメートと全然口をきかないわけじゃない。話し掛けられたら話す。それくらいの社交能力は持ってる。自分からは殆ど関わりに行かない。なんか同世代の人間って苦手だ。そもそも学校には授業を受けに来てるわけで、必要のない関わりは持たなくていい。そう自分に言い聞かせている。学校の成績も、誰かに頼らないといけないほど困ってないし、何より本を読んでいる瞬間が楽しいので、僕は学校では一人でいることが多い。
そんな僕に、わざわざ話し掛けてくるとは…なんてできた人なんだろう。他に話す人なんていくらでもいそうなのに。実際いつ見てもジルは誰かと話している。楽しそうに。成績優秀でかわいくて人当たりのいい明るい性格…。本当にいるんだなこういう人って。好きか嫌いかと聞かれれば、好きだ。でも付き合いたいとか、自分のものにしたいとかまでは思わない。遠くから眺めてたり、たまに話し掛けてくれたりする、それだけで十分過ぎる。ジルと同じクラスになったのは幸運だった。
しかも彼女は、いい匂いがするんだよなぁ。それが柔軟剤からくるのか、彼女の住む家の中の匂いからくるのか、はたまた使ってるシャンプー等からくるのかはわからない。多分全部がいい感じに合わさってできてるんだろう。僕はアロマセラピーの勉強をしてるわけじゃないので、匂いの名前とか全然知らないから、ジルのあの匂いを言語化できない。街でキレイなお姉さんとすれ違った時に、ふわっと香るような、アレ。…このくらいしか表現できない。まぁとにかくいい匂いなんだ。さっき僕に話し掛けに来てくれた時も香ってて、癒やされた。