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NoCK  作者: ハートビートモンキー
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魔力ある世界! ハクオ村の3人組

ーー誰しも体の奥に眠っているものがある。この世界では、それが魔力だっただけ。

ーー誰しも生まれた瞬間から持つ使命がある。それがこの世界の王になることもまた然り。


炎や水を操ることが出来る人間、いわゆる魔法使いがほとんどを占める世界。

これはその世界での物語。


ーここは王都から遠く離れたところにある小さな村、ハクオ村。

 この村は50名程の村人しかおらず、また、近くの町とも5㎞以上離れた森の中に存在している。

 そのため村人たちは自給自足しながらお互い支えあい生活している。


「ハルト!今日特訓するって言ったじゃない!なんでこんなところで寝てるのよ!」


 腕を組み頬を膨らませながら怒るこの少女は、ツバサという。顔はかなり整っていて、村人たちに将来絶世の美女になると噂されており、本人も自覚している。深い海のような瞳をしていることも絶世の美女と言われる所以だろう。


「もう約束の13時をとっくに過ぎてるわよ!どうせまたお昼ご飯食べて眠くなってそのまま寝ちゃうなんてどこぞのウシみたいなことしてるんでしょ。あなたがウシになるのは勝手だけど」

「分かった分かった。悪かったよ。でもアイツもまだ来てないんだろ?」


 少年は目をこすり、新緑の色をした瞳をちらつかせる。 

 ついさっきまで馬小屋の屋根で心地よく寝ていた彼はハルトという名の少年である。ウシのような体型ではなくスラっとしている。が、身長はツバサと変わらない。彼のコンプレックスである。


「・・・っ!」

「やっぱりか。」

「どこを探しても見当たらないの。来る途中にすれ違った人にも聞いたけど見てないって。」

「まぁアイツの居場所なんて俺には予想しかできねえな。」

 と自信満々に言うハルトの顔を疑わしいという目で見つめるツバサ。彼らは10才で、この村では子守りや作物の収穫という任務を受けている。しかし、ツバサは村人から同い年のハルトよりも年上に間違えられることが多々ある。それは、整った容姿はもちろん、ココロの余裕が違うのだ。


「またそれね。その自信が当たったことなんかないんだから。」

「なっ!今に見てろ!俺はこの村中を見通す力がある・・・フフ・・・。」

 この少年が子供じみすぎているのかもしれない。


「ズバリ!この俺様の予想だと・・・」

(予想って言っちゃってるじゃない。何が見通す力よ何が。)

「あの池の中だ!!」


 ハルトが指さした先には、村から少し森に入ったところにある池。

「好き好んであんな池の中に人が入るわけないじゃない。まぁ彼なら出来なくもないだろうけど。」

「だろ!俺はアイツがあの中にいると思うね!」


 そう断言し、屋根の上から飛び降りたハルトは、そのまま走り出した。

「ちょっと!待ちなさいよ!森に入るなら大人に言わないと!」

 聞き耳も立てずに走り続けるハルトに対し、ため息をつきながら彼女もまたその後を追う。



「はぁ・・はぁ・・・」

「もう・・一回・・村に戻るわよ・・・」

 木々を通り抜け、池の前にだどり着いた2人。ツバサの言うことは未だに彼の耳には届かない。


ハルトは自信に満ち溢れた顔で池を覗く。


ーー森には魔獣がいるかもしれないから大人の了承または付き添いがないと入ってはいけない。

大人の言いつけを守らなかった自分たちは、後からこっぴどく叱られるのだろうと思いながら、

文字通り「走り出したら止まらない」ハルトの性格をよく知るツバサは、池をのぞき込む彼の姿を見て

連れ戻すことを諦めた。


(全部ハルトのせいなんだから。事情を説明すれば罰は受けないで済みそうね。)


 そう結論付けると、ツバサも池の中を覗き込んだ。

 水面に2つの顔が映る。森の中にポツンとあるこの池は静かに眠っているようだ。

周りの木々の緑を反射し、宝石のようにキラキラしている様子から

「エメラルド」」と村人に呼ばれ、親しまれている。底が容易に見えるほど透明な水も

エメラルドと呼ばれる1つの理由である。


「いないじゃない。」

「うっ・・・」

 彼らの目的の人物は池の中にはいなかったようだ。

「でもほら!この池横穴があるだろ?そこで横になって寝てるかも!俺みたいに!」

「バカじゃないの!いい加減見通す力なんてないって認めたらどう?

毎回毎回苦しい言い訳言って、当たったためしなんかないじゃない。」

「うぅ・・」


ーーポチャ


「っっ!!なに!?」

 急に水面が揺れ始めた。

「もしかして、魔獣が近くにいるのか!?」

「しっ!静かにして。何か・・出てくる。」


 水面がブクブクと音を立てる。その泡は次第に大きくなる。


「もう終わりだ。この池魔獣が住んでたんだ。俺たちを餌だと思って」

「だから静かにしてってば。まだ危険な魔獣か分からない。」

 ツバサは怖がりギュッと目を閉じるハルトを強く抱きしめる。その時


ーーザバーン!


「うわぁ!!」

 ハルトの叫び声につられツバサも思わず目を閉じる。


「お前らそういう関係だったのか?」

 少年が言う。

「この声・・・リュウキ!!」

「よー。何してんだこんなところでお熱く抱き合って。」


 ずぶ濡れで気怠そうに話すこの少年こそ、2人が探していたリュウキという少年である。

身長は10歳にしては高い方だ。黒髪、灰色の瞳から暗い印象を持たれるが、10歳にして謎の色気を漂わせ、その美しさに老若男女問わず多くの村人が虜になっている。


「アンタこそ何やってんのよ!?・・・アンタもいい加減離れて!」

 ひっぺはがされたハルトはリュウキを嬉しそうに見る。

「やっぱりか!!やっぱりここにいたんだな!俺はそうだと思ってたんだ!」

「何が?」

「リュウキ!アンタ約束忘れてるでしょ。今日13時から魔法の特訓をするって言ったじゃない。

でも集合時間になっても誰も門の前にいないからハルトを探して、それで次はアンタを探さなきゃってなって。」

「そんで俺がリュウキは池の中にいるって言ったら本当にいたんだ!あっ。俺は分かってたけどな!」

「なるほど。悪い、忘れてた。」

「それで、なんで池の中に?」

「なんかこの池の中で寝たら気持ちよさそうだなと、思って。」

「どうやって。」

「自分が水になれば簡単だろ。」

「もおおおおおおお!これだから魔法がなんとなくで使えちゃう人間は!

簡単じゃないわよ、そんなことは。まぁリュウキだから何言ってもしょうがないか。」


 リュウキの魔力は幼い頃から桁違いだった。そして何より、ほとんどの魔法使いが炎、氷、風、水など1種類の魔法を習熟するのにやっとであるところ、この少年は魔力が発揮されて1年で多種類の魔法を操っていた。そう、なんとなくで、だ。


「まぁいいよそれは。で、特訓するのか?というか、2人の邪魔になるなら俺は消えた方が」

「待って!私たちは別にそんな関係じゃないわよ!誤解しないで!ハルトも何とか言いなさいよ!」

「ああそうだぞリュウキ。俺はこんな気の強い女は女の子としてみとめn」


ーーゴキッ


「いってええええええ!何すんだよ!」

「ごめんなさい、手が滑ったの。」

「滑ったって勢いじゃねえし、なんだよゴキって!えげつない音したぞ今!」

「で、リュウキ。誤解が解けたところで。するわよ、特訓。」

「そ。じゃあ村に戻るか。俺はここでもいいけど、荒らしたら怒られるだろ、多分。」

「でしょうね。じゃあリュウキはとりあえず上半身服着て。」

「あぁ、そうだな。忘れてた。」

「リュウキがそんな姿で村歩いたら大変よ。みんな爆発しちゃう。私は平気だけどね!」

「それは大変だ。」

「お前、大変だなんて思ってねーだろ。」

「うーん。思ってるんじゃね?」

「何で疑問形なんだよ。」


 こんな会話をしながら3人は村へと帰っていくのだった。



 ーーーこれは、生まれつき力を持った少年の物語であるーーー


リュウキ、ツバサ、ハルトの3人は、途中ハルトに足止めを食らいながらも村へ戻る。ツバサの予想通り大人に怒られるのか・・・?


次回「意を決したハルト!狩猟長の登場!」

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