表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/163

冒険者とパーティ

「これがギルドの登録証明になります。再発行は難しいので無くさないでください」


 元居た受付の前に戻ると、ライラさんがそう言って小さな金属プレートを差し出してくれた。そこに『ユリ・レイニカイネン』と刻まれていた。


 俺は差し出されたそのプレートを受け取る。


「ありがとう。これで、地下迷宮に入れるわけだな」


「いえ。地下迷宮へ入るための許可は別途申請が必要に成ります」


「あ、そうなの? じゃあ、それをお願い」


「すみませんが、今の状態では地下迷宮への探索許可は出せません。申し訳ありませんが、準備を整え、再度お越しください」


「は? なんで?」


「地下迷宮はとても危険な場所です。ですので、ギルドでは単独での探索は許可しておりません。PT(パーティ)での行動を推奨していますので、まずはPT(パーティ)を組んでください」


PT(パーティ)を組んでいないと許可は出せないと……?」


「はい。PT(パーティ)を組んでから、またお越しください」


 ニッコリと笑顔を浮かべ返されたその言葉に、俺は固まる。


 てっきりもう問題はなくなっていたと思ったら、再び大きな問題が浮上した。


「このまま許可出せない?」


「ダメです。ちゃんとPTを組んでからお越しください」


「俺強いよ。それでもダメ?」


「ダメです。あなたが凄腕の魔術師であることは確認しています。ですが、地下迷宮はあなたが想像している以上に危険な場所です。単独での探索は許可できません」


「そ、そうか……」


「では、またのお越しを」


 ニッコリと笑顔で追い返されてしまった。





 PT(パーティ)。それは3~6人程度の冒険者の集まりを指す言葉だ。


 地下迷宮での探索には多くの技能が必要となる。戦闘技能、魔術、機械工学、知識、などなど。多くの技能を必要とされる。だが、それらすべてを個人で賄うことは非常に難しい。


 よって、それら技能を分担し、より確実に、より安全に立ち回るため、冒険者達はこのようなグループを作るのだ。




「PTかぁ……」


 ため息が零れる。


 PT。それの必要性は十分理解できる。理解できるのだが……。


 如何せん俺は集団での行動が苦手なため、それに抵抗感を覚える。


「どうすっかなぁ……」


 だが、抵抗があるからと言って避けていては始められない。ここはあきらめるしかない。


 こういう時、知り合いとかいたら楽なんだろうけど……100年の時を超えた俺にそんな相手などいるわけもなく……。悲しいなぁ……。


「とりあえず探すだけ探してみるか」


 ざっと冒険者ギルドの中を見回し、それらしい人を探す。




 冒険者ギルドは、その施設そのものが冒険者同士の交流を促し、PT結成を促す場所となっているらしく、多くの冒険者が集まっていた。


 それらの冒険者を見て、手ごろな相手を探し、それから声を掛けた。


「ちょっといいか?」


「ああん? 誰だ? テメェ」


 声をかけると、威圧するような返事が返ってきた。これはいきなり外れを引いたかもな……。


「今、PTを組んでくれる者を探しているんだが……どうだろう? 俺とPTを組まないか?」


「PTだぁ? オメェ、レベルいくつだ?」


「レベル?」


「レベルだよ、レベル。到達階層。まさか、テメェ、自分の実力も示せねぇような雑魚じゃねえよなぁ?」


「ああ、そういうことね」


 レベル――到達階層。なるほどね。


 地下迷宮は下層に行けば行くほど出現する魔物や、障害が強力なものとなる。故に、階層を下るにはそれだけ実力が必要に成ってくるというわけだ。そこから、到達階層に応じて実力を測るようにしているのだろう。


「ほら、いくつだ?」


「えっと確か……」


 記憶を探る。正直到達階層とか一々覚えてなかった。


「確か、128階層……だったかな?」


 何とか記憶をひねり出し、答えを返すと、聞いていた冒険者はぽか~んと呆けた表情を返してきた。


「ぷっ、くくく……ははは……ああはははは――」


 そして、しばらくすると大きく声を上げ笑い始めた。


「なんだよ。何かおかしかった?」


「おかしいって、当たり前だろ。嘘ならもうちょっとうまく()きやがれ」


「嘘じゃねえよ」


「お前、馬鹿だろ。現在の最大到達階層は33層。あの大賢者レイニカイネンだって60層に到達したって根も葉もない噂が伝説になるレベルだ。128層なんてどう考えてもあり得ないだろ。そんな嘘、 誰だって信じねえよ。

 レベルの高いPTに入りたかったんだろうが、ちゃんと現実ってものを知ってから来な」


 ドンとどつかれ、拒否されてしまった。




「はぁ……。弱ったなぁ……」


 PTを組む。その話を聞いた時から頭の片隅にあった問題が浮上してしまった。


 PTというのは、基本的に同レベルくらいの実力の者で固まる。そうでないと、足を引っ張りあう事に成り、望んだレベルの行動が出来なくなるからだ。


 そのため、レベルの高いPTに入ろうとすると自然と実力や実績の確認がなされる。


 さっきのレベルの確認がその実績の確認だろう。


 そこまではいい。その行動自体に何か問題があるとは思わない。当然の行動だろう。だが、現状俺に実績、能力を示すための手段がほとんどない。そうなると俺が高レベルPTに入る事は不可能といえる。


 早々に下層へと降りたい身としては、これは由々しき事態だ。


「これは……真面目に困った問題かもしれない……」


 本日の戦績10戦0勝。誰もPTを組んでくれなかった……合掌。

お付き合いいただきありがとうございます。


ページ下部からブックマーク、評価なんかを頂けると、大変な励みになります。よろしければお願いします(要ログインです)。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ