二度目の挑戦
前回の挑戦から一日休息を置いた二日目、この日が二度目の挑戦日となった。
前回同様、地下への門の直ぐ傍の広場で待ち合わせ。
時間少し前に到着すると、今回は遅刻しなかったのか、クレアが既に待っていた。
「おはようございます」
到着するとすぐにクレアが挨拶して出迎えてくれる。
「おはよう」
「おはよ」
俺とイーダも挨拶を返す。
先日の別れ際があれだっただけに、ちょっと心配していたけれど、思いのほか変に引きずってないみたいだ。
「まだ時間前なのに早いんだな。前は遅刻したのに」
イーダが軽口を叩きながら、手にしていたパンを千切り頬張る。
集合時間まではまだ10分くらいあった。
「さすがに何度も遅刻するわけにはいきませんよ」
「そう。けど、あんたの相方は遅れてるみたいだけど」
「相方って、誰の事ですか……」
イーダの言葉に、クレアは苦笑を返す。
「ヴィンス。仲良さそうじゃん。違うの?」
「そんなんじゃないですよ。ただ、先輩冒険者として尊敬してるってだけです」
「そう。まあ、どうでも良いけど」
興味を無くしたのか、イーダはそこで会話を断ち切る。
(恋愛かぁ……)
先日ヴィンスと話した事をつい思い出してしまう。まあ、どうでも良いか……。
クレアに目を向けると、目が合う。そして、目を合わせると直ぐに目を伏せられてしまった。
ああ、やっぱり嫌われたままなのか、仕方ないけど。
「あの、ユリさん」
小さく溜め息を付くと、クレアの方から話しかけてきた。
「なに?」
「その……ごめんなさい!」
尋ね返すと、クレアは大きく頭を下げた。
「えっと……なに?」いきなり頭を下げられても困るぞ……。
「先日の夜の事です。私、つい感情的になってしまって……すみません。元気付けようとしてくれたのに、なのに私は……」
「ああ、別にいいよ。嫌われるような事を言ったつもりだったし」
「けど……それで私、少しだけ前を見れる気がしたんです。だから……」
「だから気にしなくて良いって」
「けど……」
うあぁ、面倒くせぇ~!! だから嫌なんだよ!(本音)
「だから、もういいって。俺は気にしない。そっちも気にしてない。なら、それでいいだろ。謝罪とかはなしだ。いいな」
「はい……」
強制的に話を断ち切る。
はぁ、疲れる。
小さく息を付いて振り返ると、直ぐ傍で見ていたイーダが意味ありげな笑みを浮かべていた。
「先日の夜、ねぇ~。へぇ~、ほぅ~」
「言っとくが変なことは何もなかったからな」
「へぇ~そうですか。はぁ~。まあ、一昨日の夜の事を考えれば、結果はだいたい予想できるけどねぇ~。残念だったねぇ~。あれは相手が悪かったね~」
訂正を加えたが、それでもニヤニヤと笑い続けた。
てか、なんか変な想像してないか? こいつ。
* * *
「すまない。遅くなった」
時間ギリギリになると、ようやく最後の一人であるヴィンスが到着し全員が揃う。
「全員そろっているみたいだね」
一度PTメンバーを見渡し、揃っているのを確認すると、ヴィンスは小さくうなずく。
「では、行くとするけど、その前に確認だ。先日話した通り、今回の挑戦では地下迷宮内でキャンプをしての挑戦を行おうと思ってる。ちゃんとその為の用意は出来ているかい?」
ヴィンスが確認を投げかけてくると、それぞれ頷いて返事を返す。
「よし、じゃあ、行くとしよう」
こうして、俺達PTの二度目の挑戦が始まった。
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