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真意は何処に?

   ――Another Vision――


「あ……!」


 ゆっくりとユリが歩き出すと、すぐにその場から走り去ってしまい、気が付くと彼の姿が見えなくなってしまった。


 この場に、他の冒険者と共にクレアとヴェルナ、エリンディスが残される。


「えっと……どういうことでしょうか?」


 外の様子が少し気になり、ここまで来てしまった。けど、結局ここで何が起ったのかは分からず仕舞いだ。


 いきなり戦斧を向けられたかと思うと、ユリとフィルマンが決闘を始め、そして今に至る。正直何が何だか良く分からない。ただ、何となくだが、フィルマンとユリの言葉の端橋や、それからここでの感じたものから嫌なものを感じだ。


 ユリもフィルマンも誰かを追っていた。フィルマンはその相手に敵意を向けてより、ユリはそれを庇っているようだった。そして、ユリの口から出た『イーダ』の名前。それらから導きだされる答えは――


「さ、戻りましょうか」


 ふと、物思いに沈むと、それを引き戻すかのように、エリンディスがそう告げて来た。


「え、でも……」


 ユリは行ってしまった。それを放置して戻るのはどうかと思われる。


「あとの事は、ユリ様にお任せしましょう。こちらは、こちらで、待つとしましょう」


 けど、それにはエリンディスが念を押すようにして、引き返させた。そして、それにヴェルナも続く。


「そうじゃな……」


「けど……」


「いいから、いいから」


 そしてそのまま、何も分からない内に拠点へと引き返されてしまった。




 もやもやした。何が起ったのか分からない。という居心地の悪さがあるが、それ以上に、先ほどの騒動にユリとそれからイーダの二人が関わっている。それが、すごく不安だった。特に、イーダに関しては何か良からぬ雰囲気があった。それ故、余計に気になってしまった。


「何が……あんたんでしょうか?」


 一度拠点へと戻ると、耐えきれなくなり、疑問が零れた。


 それには、ヴィルナが僅かに反応を返すが、結局すぐに口を閉ざした。何となくだが、何かに思い至っている。そんな空気だった。


「何か、知っているんですか?」


 強く追及を返す。それには、ヴェルナも諦めを返し、ようやく口を開いた。


「正確な所は分からなが、状況から見るに何となくは想像できる。それは、お主は同じではないのか?」


「それは……」


 問い返された言葉。それにクレアは、言葉を詰まらせた。


 交わされていたユリとフィルマンの言葉。それから、何かを追い、糾弾するかのような冒険者達の動き。確かに何となくだが、状況が想像できていた。ただ、それはすんなりと受け入れられないものだった。


「イーダが……殺しの犯人。だったんですか?」


 あり得ないであろう回答。どこか見落としがあるのではないか? そう思いながら、クレアはその仮定を返した。ヴェルナならきっと、自分の見落としを指摘してくれ、否定してくれるだろう。そんな淡い期待があった。けど、帰ってきた答えは、望んだものではなかった。


「おそらく……そうじゃろうな」


「何で……そんな事を……」


 イーダの事は良く知っている……つもりだった。なんだかんだで、クレアが一番最初にPTへと誘った相手だ。付き合いは一番長く、それ故よく知っている……つもりだった。


 口が悪く、面倒事が嫌い。他人より自分が大事と言いながら、仲間思いな所がある。イーダにはそんな印象を持っていた。けど……今はそれが正しかったのか分からなくなってしまった。


 理由があるはずだ。そう思いたい。けど――


「さぁな。それは妾も分からん」


「ですよね……」


 知っている情報は、ほとんど同じ。分かるはずがない。あの場に居たユリだってわかっていない様子だった。なおさら分かるわけがない。


 だから余計に気になり、不安と心配でいっぱいだった。


「ただの見間違い……とか、そういうのは無いですかね?」


「それは無いじゃろう。師匠もやった事は否定していなかった。フィルマンの奴も、殺す気でいた。確固たる証拠などが無ければ、ああはならんじゃろう」


「じゃあ、誰かに操られていた。とかって……ないですかね?」


 ただ間違われてしまった。そんなありきたいな間違えではなかった。そうでなくこの状況を説明するのに、分かりやすい回答はこれくらいしか思い当たらなかった。


 精神支配によって、謎まぬ形でそれを行わされた。それなら、まだ説明出る。けど――


「それもないじゃろう」


 そんな想像は、すぐに否定されてしまった。


「なぜ、そう言えるんですか?」


「イーダは、最初の事件が起きるまで、妾達と共に居たはずじゃ。誰かがイーダに精神支配の魔術を掛けたというのなら、そんなタイミングがいつあったというのじゃ?」


「それは、そうですけど……」


「それにじゃ。あの場には、フィルマン仲間の魔術師に、師匠もいた。その二人がその可能性を見落としていたとは考えられない。もし、イーダが精神支配の魔術にかかっていたというのなら、あの二人が気付かないはずがない。じゃから、その可能性は限りなく低い」


「じゃ、じゃあ……」


「状況を考えるに、イーダが己の意志で殺しを行ったという事じゃろうな……」


 一番聞きたくなかった答え。それを突きつけられた。

お付き合いいただきありがとうございます。


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