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闇纏う刺客

   ――Another Vision――


 夜の闇を、一つの影が切って走る。人工的な夜空の明かりの下、木々の枝から枝へと飛び移り、駆け抜けていく。


 その影の正体は、フィルマンが放った斥候だった。逃げ込んできたグレッグの話からでは、情報が不足していた。よってより正確な情報を得るために斥候を放っていたのだ。


 そして、斥候は今確認作業を終え、拠点へと戻ってきている時だった。


 辺りを闊歩する迷宮獣に気付かれない様、辺りを警戒し、慎重に枝から枝へと飛び移りながら拠点であるフォエストガーデンを目指す。


 枝葉を潜り抜け、その先にようやく目的の場所――フォレストガーデンが見えてくる。


 後は、気を抜かず木柵を超えれば生還だ。


 最後の跳躍を終え、フォレストガーデンの中へと着地するとようやく息を付けた。


 ここまで来れば安全だ。あとは報告を終えるだけ。そう思っていた。だが――



 チリーン。



 安堵の息を付いた瞬間、背後から殺意を感じた。それに、斥候はとっさに回避を試みる。だが、それでも相手の斬撃の方が早かった。


 振り下ろされた鋭い斬撃が、的確に斥候の首筋を抉り、引き裂いていく。


 無残にも引き裂かれた傷口から大量の流血が流れ出す。それをとっさに手で押さえ、振り返ると、敵と対峙した。


 薄暗い闇の中に、敵の姿が見える。灰色のローブに身を包み、素顔を隠した誰か。それが、両手にダガーを構え、立っていた。


 見た事の無い姿。当然知らない相手だ。


「誰だ……!」


 問いかける。けれど、ローブの相手は答えを返すことなく、踏み込んできた。


 まずい。とっさに動くと、傷口から血が噴き出し、意識が飛びそうになる。さっきの攻撃は致命傷だった。流れ出す血が止まらない。このままでは――死ぬ。


 最悪な状況が頭を掠めた。せっかく情報を手に入れたのに、ここでなくしてしまう訳にはいかない。どうにか、この場から逃げ出し、仲間の元へと戻ればまだ助かるかもしれない。


 とっさの判断を済ませると、斥候即座に動いた。だが、それでも相手の方が早かった。


 こちらが視線を動かしフェイクで誘うと、すぐさま逃げ出した。けど、相手はまるでこちらの動きが分かっていたかのように、回り込んでいた。


 まずい。ここまで来るともう逃げられない。


「クッソ……!」


 詰み。




『紫電よ、駆け抜けろ! 雷鳴よ、敵を穿て! 雷弧エレクトリック・アーク!』



 目の前の敵が、攻撃態勢を時だった。唐突に雷鳴が弾け、それが目の前の敵に襲い掛かった。


 目の前の敵は、とっさにそれに気づけたのか、ギリギリのところでそれを回避する。それにより、攻撃が中断された。おかげで、止めを刺されずに済んだ。助かった。


 一体誰が助けてくれたのだろうか? その問いの答えなど既に分かっていた。信頼できる仲間――彼女が駆け付けて来てくれたのだ。


「殺人の動きが気になるって言っていたから、張ってみたけれど、本当に当たるなんてね」


 聴きなれた声を響かせ、その主が姿を現す。


 意匠の凝らされた魔術師風のローブに身を包んだ女性。我らがPTの筆頭魔術師の姿だった。


「やっぱり、フィルマンさんの命令ですか? エヴェリーナさん」


「あの人の勘は、こういう時は良く当たるのよね。大丈夫?」


「すみません。立っているのがやっとです。すぐに治療を……お願いします」


「そう、なら早々に片付けないとね」


 斥候からの報告を聞くと、エヴェリーナはすぐに敵と対峙する。


 フィルマンのPTにおいて、リーダーのフィルマンに続き第二実力者であるエヴェリーナ。彼女がその気になったのなら、これ以上の安心は無い。


「さあ、行くよ」


 エヴェリーナが即座に行動を取る。それに、敵も即座に動いた。


 ダガー投擲。詠唱とう間を取る魔術師では、どうしても攻撃速度で後れを取ってしまう。エヴェリーナの魔術より先に、相手の攻撃が迫ってきた。けれど、それくらいは想定済みだ。エヴェリーナは魔術の集中を続けながら、その攻撃を回避する。そして、次弾の攻撃に備えた。だが敵は――次弾の攻撃が飛んでくることはなく、回避行動による隙を見て、敵は逃げ出していた。


「チッ! 逃がさないよ。 悪いけど、あんたは先に戻りな。私はあいつを追う」


「す、すみません」


 せっかく見付けた犯人を逃すわけにはいかない。エヴェリーナは即座に、敵を追って駆け出すと、そのまま闇の中へと消えていった。

お付き合いいただきありがとうございます。


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