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地下深くからより

 ガコン、ガコン、ガコン。ゴゴゴゴゴゴ……。金属と金属がぶつかり合い軋みをあげる音が響く。


 目の前で大きな影が立ち上がった。


 薄暗い闇の中で瞳にも似た一対の光が、立ち上がった巨大な影の頭部で輝く。そして、胸部から流れる様に、薄っすらと魔力の燐光が線となって四肢へと流れていく。


 金属で出来た、魔力によって動く人型の巨人――ゴーレムだ。


「デカイな……それに、アダマンタイトか」


 目測で人の四倍以上の大きさがある。これだけのサイズのゴーレムを動かすなら、それだけ強力な魔力元を必要とする事だろう。そしてそれは、それだけ大きなパワーを持つことを示す。


 装甲素材は光沢のある黒い金属、一風変わったその光沢は、金属の中でも特殊な超硬質なアダマンタイトである事が分かる。これだけのものを作るには非常に高度な技術と、資金が必要な事だろう。


 素材、技術力、原動力、それらすべてはそのゴーレムがどれ程強力であるかを示す。


「さて、どこまでやれるかな……」


 俺はでかいゴーレムを見据え、小さく笑う。


 ここまで多くの強敵と出会ってきた。こいつは恐らく、ここ最近敵の中では一番強力な相手だろう。それを考えると、少しだけ気持ちが昂る。


「行くぞ」


 剣を引き抜き、構える。ゴーレムと同じく黒い金属で出来た大振りの曲刀。同じアダマンタイト製の曲刀――エルフ族の曲刀エルヴン・カーヴ・ブレードだ。


『ゴオオオオオオオオ!』


 ゴーレムが、まるで吠える様な駆動音を上げた。そして、それと同時に、ゴーレムの身体に走る、淡い光のラインが強く輝きを増す。


 襲ってくる。はっきりとそれが分かる。それを見て、俺はゴーレムへと一気に駆け出した。




 一閃、二閃。薄暗い闇の中で青白い火花が飛び散る。最後に振るった素早い斬撃が、ゴーレムの胴体を深く抉り、破砕する。


 それにより、今まで暴れまわっていたゴーレムがピタリと動きを止める。各部と、破砕された胸部からものすごい勢いで薄紫入りの燐光が吹き出され、目の前のゴーレムが崩れ始める。


 魔力によって支えられていた身体が、限界を超えて崩壊を始めたのだ。この、崩壊によって漏れ出る魔力の光は、いつみても綺麗だなと俺はいつも思う。


「ふう。終わったか」


 癖で、一度剣を大きく振り、それから剣を鞘に納めた。


 厄介な相手だった。けど、やっぱり所詮はゴーレムでしかなかった。


 ゴーレムは魔術を遮断する強力な能力を持つ。故に魔術の類は一切効果がない。それが厄介ではあるが、反面他に厄介な能力を持たない。ただの強固装甲を持ち、あり得ないほどのパワーで攻撃を繰り出してくる。ただそれだけの相手だ。まあ、それが非常に厄介ではあるけど……戦い方が一方的で有るだけに対策も立てやすい。故に簡単な相手でもある。


 ゴーレムが崩れ落ち、しばらくすると、辺りは静寂に包まれる。


 それはまるでそれまでの騒音が嘘の様で、そしてこれがここ本来の音のである。誰も居ない無人の空間。それがここ本来の姿だ。


 一度頭上を見上げる。俺の前方には薄っすらと紫色の光を放つ巨大な建造物が見えた。


 魔導鉱石精製炉。俺は目の前のそれをそう呼んでいる。


 今は無き失われた技術、それによって作られた巨大な施設だ。多くの者が求めて止まない技術の結晶が目の前に存在していた。


 まだ生きている……。前見た魔導鉱石精製炉とは違い、生きている。やっと見つけた。


 目の前にある発見に、俺は再び小さく笑う。これを解析した時に得られる知識を想像して、笑みが零れてしまう。


「やばい。笑ってる場合じゃねえや。とりあえず、ここまで来たって報告だな」


 一瞬、妄想の世界へトリップしかけた思考を引き戻し、現実へと向き直る。


 これだけ巨大な建造物。持ち帰る事は出来ない。この場で簡単な調査は出来るが、腰を据えて調査するなら、やはりいろいろ用意しなければならい。


 そうなると一端地上に戻った方がいいかもしれない。


「久々の地上か……地上は一体どうなってるんだろうな。それも楽しみだ」




 地下迷宮(アンダー・メイズ)。どこまでも続くと思われるほど、広く、巨大なこの迷宮(ダンジョン)には、この世界から失われた多くの技術――ロスト・テクノロジーが眠っている。


 これらロスト・テクノロジーは、世界に大きな影響力をもたらし、迷宮から発掘される遺物は人々に大きな力を与えた。


 地下迷宮(アンダー・メイズ)からもたらされる物の数々。それが最終的にどういった結果をもたらすかは分からない。けれど、現時点では多くの人々に幸福を与えたていた。


 地下迷宮(アンダー・メイズ)は危険極まりない。まるで人を寄せ付けないようにと、何重にも罠が仕掛けられ、人を襲う怪物が配置されている。


 命を懸けなければその奥に辿り着けない。そういう場所だ。


 けれど、その先には大きな名誉と、それから人々へもたらす幸福があった。


 故に、多くの人々が命を惜しまず、迷宮へと踏み入り――そして、消えて行った。


 命を惜しまず、迷宮へと挑み続ける者達。いつしか人々は彼らを冒険者と呼ぶようになった。


 ユリ・レイニカイネンは、俺はそんな冒険者と呼ばれる者の一人だ。

お付き合いいただきありがとうございます。


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[一言] こんばんは! こちらでもお名前見つけたのでご挨拶までに! こちらの作品も拝見させて頂きます、宜しくお願い致します!
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