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画面の向こうで僕らは笑う【旧版】  作者: 中村ゆい
第三章 大垣晴の過去
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3-2 夏休み初日の衝撃

 翌日、夏休み初日の朝。高校近くの駅前広場でベンチに座り約束をした芙雪くんを待ちながら、ハルは大きくため息をついた。


「俺、普段はじゃんけんすっごく弱いのに、なんで昨日だけあんなことに……。しかも最後の最後で負けるし」


 拗ねたように唇を尖らす晴の隣で、私は小さく苦笑を漏らした。


「うちのクラスなんか、じゃんけん大会すらなく私が代表になっちゃったし。でもさ、ハルちゃんねるのメンバーでじゃんけん大会してみる動画も面白いかもね。今度はハルの弱さも発揮できるかもよ」

「やだよ、弱さ発揮とか。まあでも、その動画はいいかもね。罰ゲーム設定したりして。ほんとにやらない?」

「そうだねー、やるー?」


 カラッとした暑さの中、だらだらとそんな話をしていると、広場の向こうから走ってくる待っていた芙雪くんの姿が見えた。ちょっと忘れていたけど、今日は芙雪くんの相談を聞くために来たんだった。


「ハルさーん、さっちゃんー、お待たせしました!」


 元気よく駆け寄ってきた芙雪くんの姿を見て、初めて会ったときのことを思い出す。あれから二ヶ月以上経ったけれど、当初に比べると表情が明るくなったなあ、と思う。

最近は動画撮影中にも話を振られなくても自分からよく話すし、ときどき「こういう動画が撮りたい」とアイデアを出してくれるようにもなった。

 なんか、上手く言えないけど良かったな。ハルちゃんねるに誘って良かったなあ。


「今日、ヒロさんは?」

「ヒロは、塾の夏期講習」

「塾!? ヒロが?」


 芙雪くんの質問に答えたはずが、ハルが目を剥いて驚く。まあ、勉強せずにゲームしてお菓子ばっか食べてるようなイメージだもんね、あいつ。


「ヒロのお母さん、勉強に関しては厳しいから夏休みになったら塾に行かされてんの。だからヒロ、めっちゃ勉強できるよ。実際、ここらへんで一番の進学高って言われてる東高にいるわけだし」

「東高、入学してからタガが外れちゃう不良も多いですけどね……」


 同じく東高生の芙雪くんが困ったようにつぶやく。芙雪くんからしたら、そのたタガが外れちゃった不良に絡まれてたわけだから、困るレベルのことではないだろうけど、それも最近は収まってるみたいだし、一安心だ。


「そうなのか。人は見かけによらないね。細いのによく食うし」

「ほんと、ハルの言う通りだよ。まあそんなわけで、今日は私とハルだけだけど、芙雪くん大丈夫?」


 芙雪くんが「はい」とうなずく。


「メッセージで言ってた通り、とりあえず僕の家に来てもらえたらと。ちょっとここから遠いんですけど、母が車で送り迎えしてくれるんで、いいですか?」


 そう。なんか芙雪くんが家に招待してくれるというので、今日は初めてお邪魔することになる。普段は集まるのはハルの家が一番多くて、たまに私の家やヒロの家って感じだから、芙雪くんの家、どんな感じか楽しみだ。




 楽しみ~、なんて思いながらのこのこと着いていった先にあったのは、芙雪くん似て優しそうで可愛い彼のお母さんと、ちょっと高級そうな車。そして連れて行かれたのは、地元でそこそこ有名な高級住宅街の一角にある大きな家だった。中に入ると広い玄関に広い廊下、柔らかそうなそうな絨毯やら壁に飾られた風景画やらが一気に目に飛び込んできた。家の中のすべてのものが、高価そうだけど品良く並んでいて、ごてごてせずセンス良くその場に収まっていた。


「芙雪ん家って……」

「……お金持ちだったんだね」


 到着して通された応接間みたいな部屋で、出された紅茶片手にハルと顔を見合わせて呆けていると、芙雪くんが平然と笑って返事をする。


「みんな、家に来たらすごいねすごいねって言ってくれるんですけど、僕はこの家、広すぎるかなって思ってます。母と父と三人暮らしだと寂しいっていうか。たまにお手伝いさんがいてくれるときもありますけど、それでも四人だし」


 お手伝いさんを雇ってる家って実在するんだー……。そしてお金持ちってことは否定しないんだ。でも、こういう育ちの良さが芙雪くんの素直さや可愛さに繋がってるのかなあ。弟気質なところがあってついつい構いたくなるところあるもんねえ……。


「おーい、さっちゃん?」


 一人で芙雪くんの分析に耽っていると、ハルが私の顔をのぞき込んできた。


「わっ、な、なに?」

「あ、聞いてなかった? 芙雪が自分の部屋に連れてってくれるって。そこで話しようってさ」

「わ、わかった」


 ちょっと連れてこられた場所が予想外で驚いたけど、本題にまだ入ってない。結局相談って何だったんだろ。

 私は部屋を出ようとしている芙雪くんとハルに置いていかれないように慌ててふかふかのソファから立ち上がった。

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