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画面の向こうで僕らは笑う【旧版】  作者: 中村ゆい
第二章 四人のチャンネル
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2-4 私の居場所

 芙雪くんという予定にない助っ人がいたとはいえ、五十個近くあるドーナツを平らげるのは、正直きつかった。そして私の予想通り、ヒロの胃袋が大活躍してくれた。


「なんつーか、ヒロの新しい一面を見たわー」


 帰る私たちを玄関まで見送りに来ていたハルが、若干引き気味に、だけど感心した風にヒロの肩を叩いた。


「甘い物は別腹」


 当たり前のようにそう答えるヒロに苦笑してしまう。

 私なんかは三個食べたあたりで限界が来て、ハルや芙雪くんはもう少し頑張ってたけど私と似たり寄ったり。私たち三人が苦しみながら食べて休んでを繰り返しているあいだ、ヒロは淡々と食べ続け、これよりもこっちのほうが俺は好きだとかなんとか、カメラの前で解説していた。


「俺的に一番美味かったのは、やっぱストロベリーアンドチョコホイップバナナクリーム。今度個人的にもっかい買いに行く」

「もうそれ撮影中に何回も聞いたんですけどー」


 ていうか商品名長すぎ。


「えーっと、じゃあさっちゃん、編集お願いします」


 私はハルに向かって敬礼してみせた。


「ラジャ! 今週中には完成させるね」


一応スイーツ紹介動画のつもりだったけど、ヒロの大食い動画になっちゃいそうだなあ。


「俺、駅まで芙雪送ってく」


そう言って外に出ようとするヒロに、芙雪くんがぶんぶんと両手を振った。


「い、いいです! 一人で大丈夫ですから!」

「カツアゲしてた連中に会うかもだぞ。あいつら夜が活動時間みたいなもんだし」

「あ……」

「な。てわけで行こー。じゃあ、ハル、お邪魔でしたあ」


 ヒロが芙雪くんを連れてさっさと帰っていく。あいつ、下に弟や妹がいないから、年下の世話を焼いてる姿は少し新鮮だ。それから、芙雪くんもなんだかんだで緊張が解けたみたいで私たちと一緒にはしゃぎながらドーナツ食べてくれてよかった。今日、楽しかったな。


「さっちゃん、なんだか楽しそう」


 思ってたことをそのまんまハルに指摘されて、私は満足な気分でうなずいた。


「うん、すっごく楽しかった。ドーナツ馬鹿食いっていう夢も叶ったし。……半分以上ヒロが食べてたけどね。でも、みんなでやりたいことできるって楽しいもんなんだね」


 話しながら、自然と顔がほころぶ。ついこのあいだまで高校生活つまんないなあなんて思っていたのが嘘みたいに充実してる。

 ハルはほんの少し微笑んで、しみじみといった風につぶやいた。


「これが、俺がやりたかったことなんだよなあ」

「え?」

「……なんかさ、やってみたいことを楽しみながら実行して、それを記録に残したくて動画投稿を始めたんだ。だけど一人じゃ寂しいときもあって、そういうのを友だちとやったらもっと楽しいんじゃないかって、思ってたから。本当にその通りだった。さっちゃんが楽しんでたら、俺も楽しい」


 照れくさそうにそう言うハルを、私はじっと見つめた。夜が始まったばかりの薄暗い空の下で、玄関の奥からあふれる電気の光を背景に、ハルの髪や目が温かく輝いていた。


「……な、何だよ?」

「ううん。ハルの言う通りだねって思っただけ」


 一人で踊っていたとき、踊ることは好きなのに、私はずっと孤独だった。誰かと一緒に踊っていても、こんなわくわくは感じなかった。どうしてハルやヒロと一緒だと楽しいのかはわからない。だけど、ハルと出逢えて良かったと思う。

 自分が画面に映らなくても、もうハルちゃんねるは私の大事なチャンネルで居場所だ。

 大げさかもしれないけれど、そんな気がした。

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