七月 未知(3)
母艦から綾小路家に帰り、次の日の放課後、ボクは自宅に転移してきた宇宙人さんたちと合流して、迎えに出してくれた如月家の高級車に乗り込み、麗華さんたちの待つ会場へ車で向かった。
連合の交渉役は、軍服の渋いおじさまのダース艦長と、メガネ美女OLのディアナさんの二名のみ、相手も少数のため、あまり大勢で押しかけるのはマナーに欠けるとのこと。
そして大人センコさんは今回はお留守番である。子供センコさんなら付いて来てもよかったけど、ディアナさんたちとは何処で知り合ったのか等、関係説明に矛盾が出そうなので、諦めてもらった。
今回は正体をそれとなく匂わせつつ、ホームステイの条件を詰めるだけなので、圧倒的な制圧力は必要ないはずだ。なのでこのメンバーで十分である。
「当主様と麗華お嬢様がお待ちです。こちらにどうぞ」
とある高級和食の料亭の前で車を停めると、従業員さんが、車から降りたボクたちを案内してくれる。奥さんの名前を呼ばなかったということは、今回は如月家でお留守番のようだ。
しかし案内されて付いていくのはいいけど、お店はかなり広い。ここは政治家や有力者の人たちが集まって、こっそり会談する場所かもしれない。
当然料理も美味だろうけど、その分目玉が飛び出る程のお値段がしそうだ。こんな機会でないと、一生縁がないかもしれない。
「幸子お嬢様と、ダース様、ディアナ様が到着しました」
廊下の最奥の部屋で止まると、従業員さんが声をかけて、ゆっくりと障子戸を開ける。
「よく来てくれたね。さあ、皆さんはこちらに」
当主さんがボクたちを歓迎し、決められた席に座るように促す。
「すぐにお茶を持ってまいりますので、まずはごゆるりとおくつろぎください」
先程まで案内してくれた従業員さんは、、静かに部屋を出て、障子戸を閉める。
「さてと、今回君たちに交渉の場に集まってもらった件だけど、実は決めることは殆どないんだよね」
え? 色々と条件を詰めって聞いたんだけど、違うのかな?
「細かい条件は後日、担当者と話し合って決めてくれればいいよ。君たちの正体も見当はついてるけど。こちらからは何も望まないし、騒ぎ立てもしないことは保証するよ。さて、これでいいかな?」
そう言い終わると、当主さんがパンパンと手を叩いて、廊下に控えているであろう従業員さんに、料理を運んでくるようにと催促する。
たったの一言二言で呆気なく交渉が終わったので、この場所にボクがいる意味は最初からなかったのでは、と思ってしまう。やがてこちらの疑問が伝わったのか、すかさず麗華さんが答えてくれた。
「そちらのお客さんには悪いんだけど、今回の主目的は幸子ちゃんと会食なの。ええと、如月家の当主の立場だと、庶民のお店に行くのはとても難しくてね。だけど幸子ちゃんは、あまり高いお店だと絶対に来たがらないでしょう?」
一日二百円の食費でやりくりしてきたボクは、一食千円を越える高いお店に入るのは足がすくんでしまうのだ。それこそ、このような特別な機会でない限り、自分から入るのはもちろん、人に誘われても絶対に首を縦に振らない。
「宇宙じ…ええと、外国の人はこちらが用意したホームステイ先、この場合は如月家が面倒を見ることになるけど、お父様は今日の幸子ちゃんとの会食を、本当に楽しみにしていたのよ」
「それは麗華が、今日は幸子ちゃんと何処のお店で何を食べたの。美味しそうに頬を膨らませて、大きなリスのようで可愛かった等と、毎回違った愛くるしさを聞かせて来るからだろう。それで羨むなというのが無理な話だ。本当は妻も来たがっていたのだけど、急な仕事が入ってしまってね」
隣の連合の二人が何とも言えない表情で、ボクと如月家族の間を視線が彷徨う。既に全部バレてたうえで、慌てて取り繕われのだ。
「あっ…綾小路さんは、地球でも人気があるようだな」
さらにはボクの惚気自慢を聞かされれば、どんな顔をすればいいのかわからなくなるだろう。如月家の現在の優先順位はきっと、幸子>越えられない壁>宇宙人。こんな図式が展開されているのだろう。
しかもダース艦長から、地球でもという言葉が聞こえた。ということは艦内でも流行しているのだろうか。昨日の艦内放送で名前を連呼されたことを思い出して、ブルルッと身震いしてしまう。
「んっんっ…コホン! ともかくだ、我々如月は、貴方たちの事情に理解を示し、全面的に受け入れる準備があります」
「ごっ…ご協力感謝します。この恩はいつの日か必ず、返させていただきます」
それぞれのトップ同士が固く握手をする。今この瞬間に地球人と宇宙人の友情が結ばれたのだ。会談は喜ばしい結果を残して、無事終了となった。
しかし二人共思わず素が出てしまったためか、少し冷や汗をかいていたのをボクは見逃さなかった。
「それにしても、食事を呼んだのに少し遅いな」
当主さんが疑問を口に出す。確かに手を叩いてから、それなりの時間が過ぎたのに、料理はともかく、お茶すら運んで来る気配もない。何かがあったのは確実だろう。
「如月当主、少しお待ちを。私の部下に調べさせよう」
ダ ース船長その場に座ったまま、耳に手を当てて誰かと通話をはじめる。やがて何度か頷き、当主さんの方を向き、真面目な顔で口を開いた。
「申し訳ありません。我々と関係のある組織が、この料亭内に多数侵入しているようです」
「ああ、そうなの? 気にしないでいいよ。襲撃は一応予想してたから、連絡すれば数分以内に精鋭が到着するように配置済みだからね」
関係のある組織というと、謎の黒服さんだろうか。そしていざという時には、焦らず冷静に対処する当主さんは、やはり如月のトップなのだと理解した。
でも地球人同士で戦えば、少なくない犠牲が出てしまうだろう。となると、前回のような手段を取って、少しでも被害を減らしたいところである。
「じゃあ、応援が到着するまでの間はボクが…」
「応援を待つ必要はありません」
ボクがおずおずと手を上げて、自分の意見を言おうとしたとき、ダース船長の声が料亭の部屋に響いた。
「我々の関係者は、我々が対処します。これからお世話になる隣人には迷惑をかけられません」
「ダース艦長は自信があるようだね。…いいでしょう。今後は水際は如月が対処し、万一乗り込まれた場合は、貴方たちにお任せします」
「ええ、ではその条件でよろしくお願いします」
「こちらこそ、連合のお手並みを拝見させていただきますよ」
再び笑顔で握手を行う二人、しかし何処となく闇をまとっている気がする。両人ウキウキとしていて実に楽しそうではあるのだけど。
「聞こえたな! これより我が艦は第一種戦闘配備に入る! 歩兵部隊は白兵戦用のコンバットフレームを着用! 一分後に指定座標に転送開始だ! 他の隊員もアーマーフレームを着用後、全員持ち場に付き、警戒を厳としろ!」
もはや宇宙人であることを隠そうともしないダース艦長に、当主さんの精鋭部隊の突入を取り止めるように専用の端末から支持を出し、麗華さんは二人の様子を全く動じずに眺めている。
ディアナさんも艦長の近くに留まり、命令を待つ。
「ディアナ調査員、君は綾小路さんたちを守れ…と言いたいところだが、それでは不満だろう?」
「はい! 私は前回のアーマーフレームとは違う。最新式のコンバットフレームの着用を許可されています! 即ち、こちらから積極的に動いて料亭の民間人を助け、大切な隣人である如月の関係者に、恩を売ることこそが最善と、ダース艦長に意見具申させていただきます!」
義憤に駆られたディアナの言葉に、ダース艦長は満足そうに頷く。
「よく言った! それではディアナ調査員は私の補佐に付け! これより突撃し、敵性勢力を排除する! 遅れるなよ!」
「了解しました! ディアナ調査員! ダース艦長の補佐に付きます!」
作戦が決まり二人で部屋から出ていこうとしたとき、突然黒く丸い物体が赤く点滅しながら障子戸を突き抜け、ボクたちの目の前に転がってきた。
そして、一瞬輝いた後、轟音とともに大爆発が起こり、室内に熱と衝撃が荒れ狂った。
「ふん、組織の最新の爆破装置だ。直撃を受ければ宇宙人共もひとたまりもないだろう。少々勿体ないが死体だけでも回収出来れば……何ィ!?」
壁や装飾品があらかた吹き飛んだため、見晴らしのよくなった室内には、青白く半透明なドーム状の壁が、五体満足なボクたちの周囲をすっぽりと覆っており、その内部のみ爆風が届かなかったことを物語っていた。
部屋の外には、大勢の黒服が銃火器を持って驚愕した表情で立ちすくんでいる。
「この私が不意を突かれるとはな。やはり知識だけでは駄目か。現場で実戦を積まなければな」
そう言ってダース艦長は片手を下ろすと、半透明な壁も同時に消失する。
いつの間にか二人とも、肌に直接フィットするコンバットフレームとかいう服に切り替わっていた。見た目は艦長のほうが中世の鎧のようにゴテゴテした装飾が付いており、ディアナさんのほうはこの前見たスーツと変わらずに、大人の若い女性特有の肉感的なボディラインを、これでもかと強調していた。
「やれやれ、今回はかなり多いな」
「料亭内には約百。残りは外周を囲んでいます。三、…いえ、四つの組織が一時的に協定を結んだようです」
ため息を吐くダース艦長にディアナさんが小声で伝える。防いだとはいえ相手が二人だとわかり、少し冷静さを取り戻したのか、黒服の一人が一歩前に出てくる。
「どうやらギリギリで防壁を張ったようだな。今までのデータなら、防げてもあと一、二回で限界だろう? 俺たちの目的は、そちらのお偉方との取引が失敗すれば任務達成だ。今なら見逃してやってもいいぜ?」
「なるほど、データか。確かに正確だな。我々の技術をよく調べている」
どうやら黒服たちは、如月と宇宙人が秘密裏に取引を行うという情報を何処からか掴み、それを阻止しにやって来たらしい。
「はははっ、だろう? 逃げるなら今のうちだぜ? まあ、残りの三人には悪いが消えてもらうけどな」
「そして我々も逃げる途中で罠にかけて捕獲するということか」
「まっ! まさか、外の仲間のことを探知したのか! 馬鹿な! レーダーと通信ジャミングは完璧のはずだ!」
動揺する黒服に、呆れたようにダース艦長が告げる。
「今まで君たちが躍起になって調べたアーマーフレームは、軍人でもない一般人への無料支給品だ。そして我々が使用しているレーダーや通信も、地球文明への影響を懸念して、地球人が使用しているレベルにまで落としていたに過ぎん」
ヤレヤレと肩をすくめるダース艦長は、何処までも不敵に笑う。
「たとえ連合の辺境でも殆ど残っていない骨董品的でも、地球の技術と比べれば遥かに高度だったと、実証されたようだがな」
「そっ…それじゃぁ、今まで俺たちが調べていたのは…?」
そしてダース艦長は何かを思いついたのかニヤリと残虐な笑みに変わり、隣のディアナさんに変わりに次の言葉を喋るように指示を出す。
「えっと…はい、連合でもっとも弱い一般人に対して、貴方たちの組織がこれまで投入した金と人材と時間は戻ってきませんが、無駄な努力を疲れ様でした」
このような絶望的な真実は、見目麗しい女性に言われるほうが堪えるのだろう。一部で喜んでしまう人もいるかもしれないけど。
しばらく黒服たちは呆然とした顔で沈黙していたけど、やがてクックックッと小さく笑いながら、再びボクたちに向き直る。
「ああ、おかげさまで目が覚めたよ。最近はようやく、連合に追いついたと考えていたのだが、どうやら大きな勘違いだったようだ。教えてもらった礼を言わせてもらおう。…だがしかし!」
大きく息を吸い込んで、はっきりと話す。黒服たちの希望は、まだ失われていないのだ。
「今までの調査は無駄ではなかった! こうして他の組織と手を結び、捕らえる絶好の機会が巡ってきたんだからな! いくら装備が上だとしても、これだけの人数に勝てるわけがない! 相手がたった二人では、絶対にだ!」
無数の黒服たちが一斉に銃を構える。標的は、もちろんボクたちだ。周囲の壁が殆ど吹き飛んでしまっているため、見晴らしがいい。何処からでも狙い撃ち出来るだろう。
「ディアナ調査員、悪いが民間人の護衛を頼む」
「いえ、了解しました! ディアナ調査員! 民間人の護衛に付きます!」
いやらしく黒服が笑い、右手を高くあげる。
「部下とのお別れは済ませたか? 乱戦になったら手加減出来ないからな。ひょっとしたら、殺してしまうかもしれないぞ?」
「そっちこそいいのか? 今ならまだ逃げられるぞ? もっとも、逃がす気はないがな」
ダース艦長の挑発に、青筋を浮かべた黒服の代表は、撃て! という言葉と共に、高くあげた手を勢いよく振り下ろす。
けれど、彼らが引き金にかけた指を引くよりも一瞬早く、リーダー格の黒服が空を飛んでいた。人間ってあんなにも高く飛べる生き物なんだね。
「いかんな。踏み込みと掌底のタイミングが全く噛み合ってない。物凄くすっとろい動きになってしまったぞ。やはり私も現場に降りないと駄目だな」
一人で山なりに空を飛んでいた彼は、やがて庭木の茂みにドサリと落下する。
他の黒服たちは引き金に指をかけたまま硬直していた。腹部に大きく手の跡が付いており、今なおヒクヒクと痙攣し、白目をむいているリーダー格の男から、恐怖のあまり視線を外せないでいるのだ。
「さて、歩兵隊の諸君、敵性勢力から正式に攻撃を受けた以上、これはれっきとした正当防衛だ。命を奪わん限り、攻撃を許可する!」
ダース艦長の宣言が終わるやいなや、今まで何処に潜んでいたのか。突然風景の一部が歪みはじめて、艦長と同じようなコンバットフレームを着用し、やたらと体格がガッチリしている歩兵隊らしい人たちが、今だに恐怖から覚めることが出来ない黒服たちに、一斉に襲いかかった。
「ぎゃあああぁ! こんな大人数が! 今まで一体何処に! 来るなあああぁ!!!」
「うぎゃあああ! 窓に! 窓にいいいいい!!!」
ある黒服は銃で必死に応戦するものの、その全てが当たる前に見えない壁に弾かれ、そのままゴリラのような屈強な男性兵士に掴まれて、十メートル以上もの距離を一息で投げ飛ばされた。
他の黒服たちも巻き込んで、ドミノ倒しのようにゴロゴロと転がっていく。途中でずりいぞ! アイツは俺の獲物だったんだぞ! 馬鹿め! 早いもの勝ちだ! ふっ…右手の封印を解くときが来たか! などの怒声が、男性歩兵隊のいたるところから聞こえてきた。
また、ある黒服は銃が効かないのならば肉弾戦をと、軍用のナイフ一つで美しい女性兵士に挑んだものの、繰り出す攻撃はことごとく避けられ、やがてスタミナを切れて動きが鈍った瞬間に、強烈なタックル受けてそのまま押し倒され、二つの柔らかメロンで顔を隙間なく圧迫されて呼吸に困難陥り、手足をバタつかせて必死に抵抗するものの、肉感的なボディスーツの表面を男性の色々な部分が気持ちよく擦るばかりで、最後には目にハートマークを浮かべて、幸せそうに精根尽き果てていた。
他の黒服も銃火器を使用して必死に応戦しているものの、歩兵隊はそれをまるで玩具のように弾き、捻じ曲げ、優しく取り上げ、男歩兵は手や足で殴り、蹴り、投げ飛ばし、女歩兵は尻や胸で優しく包み込み、骨抜きにして意識を刈り取っていく。
調査員のディアナさんでさえ、とんでもない力を持ってるから、地球人が連合の人に捕まりでもしたら、もう逃げられないんだよね。
そして、むちむちポークの女性兵士に捕まるなら天国だろうけど、暑苦しいゴリラさんの男性兵士に捕まったりすれば、それはもはや生き地獄であろう。
「うーん、もしかして完全に遊ばれてる?」
「そうね。連合の身体能力だけでも並外れてるうえに、技術レベルの差もお察しだから、仕方ないわ」
「はぁ…せっかく幸子ちゃんとの会食なのに、この有様じゃね。この料亭わりと気に入ってたんだけど」
ボクたち地球人の三人は、青く半透明な障壁をディアナさんに張られながら、部屋の中央で座布団に座って、地球人vs宇宙人の戦闘とは呼べない一方的な蹂躙を見物していた。
しかし艦内移動時や、今の現場を観察してわかったことだけど、連合の皆さんは地球人と比べて全体的に身長が高く、体格もガッチリしていた。
男性は元より女性も皆、出るところが出て、引っ込むところが引っ込んでいるのだ。いわゆるボン・キュッ・ボンである。栄養や体調管理がしっかりしているおかげか種族的な特徴なのかは不明だけど。
少なくともそこに、ボクの年齢にもなっても発育不全のためか、上から下まで全てが子供サイズの女の子はいないようだった。
「はぁ…でもさっきは、何処から現れたんだろう?」
「最初からそこに居たように見えたから、アレは転送じゃなくてステルスじゃないかしら?」
「如月でも研究してるよね。ステルス。まだまだコスト高すぎて実用段階には程遠いけど、幸子ちゃんが欲しいならあげるよ?」
ダース艦長があらかじめ最初の通信で呼んで、ステルス状態で近くに待機していたのかな?
あと、別にステルス装置はいりませんよ。一般人のボクが持っていても使い道ありませんしね。
そんなことを話していると、いつの間にか料亭の庭が静かになっていた。そしてダース艦長の前に連合の歩兵部隊が規則正しく整列し、その中から体格のいい先頭の男性兵士が一歩前に進み、ビシッと敬礼した。
「報告! 料亭内、外の全ての敵性勢力の排除を完了しました! 周辺区域に他の敵性勢力の存在、確認出来ません! 戦闘による我々の被害、なし! 以上! 報告終わります!」
「ご苦労だった! 母艦に帰投し、休息を取ってよろしい! ただ今をもって、第一種戦闘配備を解除する! 総員撤収開始! 駆け足!」
慌ただしく散っていく歩兵の皆さんとは別に、ダース艦長がボクたちに向かって、ゆっくり歩いて来る。
「ディアナ調査員、君も護衛の任を解く。楽にしてよろしい」
「了解しました!」
そう言い終わると、ディアナさんは肩の力を抜く。そして当主さんが、戦闘が終わって座布団に腰かけたダース艦長に声をかける。
「しかし、すごい力だったね。それ以外に言葉が出ないよ」
「実際には歩兵の一部隊を動員しなくても、あの程度の人数ならば、私一人だけでも数分もあれば排除出来ましたよ。どうです? 欲しくなりましたか? 貴方たちならば、技術を譲っても構いませんよ」
「まさか! そんなの貰っても、扱いきれる自信がないよ! いくら譲られても、絶対にいらないね!」
そのままダース艦長と当主さんが向かい合ったまま、大声で明るく笑いだした。仲いいねこの二人。
「貴方たちのような地球人に会えただけでも、この星に来た価値はありました」
「いやいや、これからですよ。連合の皆さんには、この程度で満足してもらっては困ります」
いつの間に二人は肩まで組んでいた。もはや長年の友人のように見える。
「料亭の修理は我々のほうで手配しておきます。一時間もあれば元通りに修復出来るでしょう」
「すみませんね。では、こちらはホームステイ先を詰めておきます。数日中には詳しい報告書がまとまるかと」
「いえいえ、今回の件はこちらが招いた以上、損害を補填するのは、友人として当然の行いです」
トントン拍子に話が進んでいる。これが雨降って地固まるだろうか。
いつの間にか庭の黒服さんたちや、歩兵隊の人たちも姿が見えなくなっていた。母艦に帰ったのだろう。
何にせよ、上手くまとまったようで一安心だ。自分の出した案だけに、失敗したらどうしようと、実は内心ビクビクしていたのだ。
その後は何事もなく会談は終了し、高級料亭での食事は食べれなかったものの、双方ともに、満足の行く結果が残せたのだった。




